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2025年10月29日

複数衛星のデータを補正・統合- New Space Intelligence

株式会社New Space Intelligence
長井 裕美子
代表取締役社長 CEO

2025年10月23日、KDDI ∞ Laboの月次全体会において、スタートアップ4社が大企業に向けてピッチを行いました。登壇されたスタートアップにMUGENLABO Magazine編集部のめぇ〜ちゃんがインタビューをしたので皆様にお届けいたします。


3社目はNew Space Intelligenceです。衛星データの利活用事業を展開する山口大学発スタートアップです。今回は、New Space Intelligence 代表取締役社長 CEOの 長井 裕美子氏にお話を伺いました。


めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
複数衛星のデータを補正・統合する独自の「Satellite Data Pipeline®」自動化プラットフォームを通じて、この技術は、鉄道や道路などのインフラ監視、防災や災害対応、環境モニタリング、ESG・脱炭素分野など、行政だけでなく民間企業や海外機関でも活用が進んでいます。

代表取締役社長 CEOの長井氏に伺いました

何をしている会社ですか?

長井 :株式会社New Space Intelligence(以下、NSI)は、衛星が観測した地球のデータを正確に整え、社会や環境の課題解決に活用する会社です。
鉄道や道路などのインフラ監視、災害時の被害把握、森林や土地利用の変化の分析など、地上からは把握しづらい広い範囲を宇宙から見守ることで、人々の安全や暮らしを支えています。
衛星の種類や観測条件によってデータの精度や形式が異なるため、複数の衛星データをそのまま比較・解析することは困難です。

NSIは、この課題を解決するために、複数の衛星データを補正・統合し、誰もが利用しやすい形式へと自動変換するプラットフォーム「Satellite Data Pipeline®」を構築しました。

このプラットフォームの基盤には、NSI独自の校正技術があり、衛星ごとの観測データを精密に補正することで、衛星データの信頼性と一貫性を高めています。
これにより、観測の高頻度化・低コスト化・高精度化・継続的な運用が実現し、衛星データをより現場に近い形で活用できるようになりました。

現地調査をすべて置き換えるのではなく、現場を補完し、判断のスピードと精度を高める新たなツールとしての役割を果たしています。

NSIは、この仕組みを活用して、鉄道や道路、港湾などのインフラモニタリング、災害対応支援、森林・農地・環境の変化検知など、多様な分野にサービスを展開しています。

解析結果はレポートやダッシュボードで提供され、必要に応じてサブスクリプション型の継続モニタリングも可能です。また、お客様のシステムにAPI連携することもでき、既存の業務フローの中で衛星データを自動的に活用できる仕組みを整えています。

また、海外では東南アジアを中心に、災害対策や環境保全に向けた国際連携も進めています。

衛星データを、誰もが安心して使える「信頼できるデータ」として社会に届けたい。
その想いを胸に、New Space Intelligenceは、宇宙のデータを人々の暮らしや未来につなげる取り組みを続けています。


サービスイメージ

なぜこの会社を立ち上げたのですか?

長井 :New Space Intelligenceは、衛星データを「限られた専門家だけのもの」から、「誰もが活用できる社会のインフラ」へと変えていきたい、、、そんな想いから生まれました。

衛星が次々と打ち上げられ、さまざまな種類のデータが得られるようになった今こそ、それらを正しく整え、安心して使える形にすることが欠かせません。

私は、まだ誰もこの必要性に気づいていなかった頃から、「きっとこの先、複数の衛星データを一緒に使える技術(校正技術・統合技術)が社会で必ず必要になる」と信じて研究を続けてきました。

周囲から「なぜそんなことをしているの?」と不思議がられることもありましたが、それでもあきらめずに、丁寧にデータと向き合い続けました。

その積み重ねが、今のNSIの原点です。

私たちは、衛星データの「質」をそろえるための校正技術と、そのデータを自動的に整理・解析して活用できるようにする仕組み「Satellite Data Pipeline®」を組み合わせ、衛星データから社会に役立つ新たな気づき(インサイト)を生み出しています。

この仕組みによって、災害対応やインフラの維持管理、森林や土地利用の変化の把握など、幅広い分野でより正確で深い理解を得ることが可能になりました。

宇宙というと遠い世界の話のように感じるかもしれませんが、そこには、私たちの日々の暮らしを支える大切なヒントが詰まっています。

見えないものを見えるようにし、未来の社会を少しでも良くしていく。

衛星データを「誰もが安心して使える信頼できるデータ」に変え、地球のこれからを支える。それが、私たちNew Space Intelligenceの想いです。

これからの目標はありますか?

長井 :これからの目標は、衛星データの「利活用のあり方」そのものを変えていくことです。
これまで衛星データは、一部の専門家が扱う特殊な情報、限られた分野にとどまってきました。
しかし私たちは、衛星データを正確に整え、誰もが使える「社会のインフラ」として広げていきたいと考えています。

現在、経済産業省のSBIR(スタートアップ支援型研究開発)プロジェクト(15億円/5年間のプライムとして)採択を受け、多種多様な衛星データを校正・統合し、地球上の変化を定量的に把握できる新しい基盤「グローバルインデックス(以下、GLI)」の開発を進めています。

GLIは、異なる衛星間でばらつきのあるデータを正確に補正し、比較可能な「共通の尺度」で地表面の状況を高頻度に更新し、地球をモニタリングできる仕組みです。

これにより、災害対応やインフラ管理、森林・農地の変化の観測、さらには気候変動への適応など、社会や環境の課題に対してより客観的で迅速な判断が可能になります。

私たちが目指すのは、衛星データを「見るためのもの」から「考えるためのもの」へと変えること。そして、「一部の専門家だけが使う情報」から、「社会全体で未来を見通すための共通言語」へと進化させることです。NSIは、宇宙から得られるデータを、地球の未来を守るための知恵に変える―そんな新しい時代のインテリジェンスを世界に届けていきます。

最後に一言お願いします

長井 :衛星データの可能性を社会の力に変えるためには、行政、企業、研究機関、そして海外の仲間たちとの連携が欠かせません。
NSIは、地上の課題を宇宙の視点で見つめ直し、共に解決策を形にしていくパートナーを求めています。
インフラの維持管理、防災・環境モニタリング、海外展開など、共創のフィールドは無限に広がっています。

衛星データの社会実装を進めるうえで、現場での検証と継続的な協働が欠かせません。
NSIは、PoC(実証)を通じて技術を磨き上げ、共に社会に実装していくパートナーを求めています。
ぜひ一緒に、新しい価値を創り出すプロジェクトを始めましょう。

木村KDDI 木村
★推しポイント★
近年、衛星の打ち上げ数が急増し、データ取得コストも大幅に低下したことで、インフラ管理、防災対策、ESGといった幅広い分野で衛星データの活用ニーズが急速に高まっています。従来では難しかった地球規模でのモニタリングやリアルタイムな情報活用が、現実のものとなりつつあります。

このような流れの中で注目を集めているのが、New Space Intelligenceです。同社の最大の強みは、さまざまな衛星データを一元的に統合できる独自技術にあります。衛星ごとにセンサーの種類や観測方法が異なるため、本来、複数のデータを組み合わせて活用することは大きなハードルがありました。しかしNew Space Intelligenceは、独自のコア技術によってこの課題を解決し、コストを抑えながらユーザーのニーズに合わせた柔軟なデータ提供を可能にしており、データ活用という点で注目のスタートアップです。それでは次回もお楽しみに♪

株式会社New Space Intelligence
https://www.newspaceint.com/ja
衛星データの利活用事業を展開

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