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2022年12月02日

総額1,000億円のKDDIサステナビリティボンド、解決目指す社会課題のイメージ

世界的な環境課題を背景に、企業がますます無視できなくなってきているのが「ESG」への取り組みです。日本でも2020年の菅内閣においてカーボンニュートラルへの指針が宣言されたこともあり、メディアなどでも「ESGやSDGs」といったキーワードが頻繁に取り上げられるようになりました。


ただ、温室効果ガスの問題が電力やプラごみなど生活に直結する話題のため、どうしても環境のイメージが強くなります。一方、ESGの「S(ソーシャル・社会課題)」も同様に幅広く、性別や人種(ダイバーシティ&インクルージョン)、働き方、過疎、地域など、企業が社会から要請を受けて取り組むべきテーマは数多くあります。こうした社会からの要請に企業が貢献するための社債を総じて「ESG/SDGs債」等と呼び、近年、投資家からの注目が高まっています。

KDDIでは今年9月、社会課題の解決や地球環境の保全につながる事業に資金使途を限定したサステナビリティファイナンス・フレームワークを公表しました。本フレームワークを活用して調達する資金は、5Gの設備投資をはじめとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)やエネルギーや地域共創等、中期経営戦略に定められた「サテライトグロース戦略」に基づく注力領域にかかる適格プロジェクト投じられる予定です。

そして、本フレームワークに基づく初の資金調達として、10月に総額1,000億円のKDDI初のサステナビリティボンド「KDDIつなぐチカラ債」を発行しました。

今回、編集部ではこの社債企画を推進する、KDDI サステナビリティ企画部の安本高望さん、財務・税務部の松本亮さん・西山弘晃さんに話を伺い、どのようなプロジェクトがこのESG債の注力領域に合致するのか、イメージを教えてもらいました。なお、これらはあくまで想定されるプロジェクトイメージであり、具体的にESG債から投資された案件ではないことを付記しておきます。

つながる環境に貢献する衛星通信「Starlink」

最初のケースは「つながる環境」への課題解決です。KDDIは10月、Space Exploration Technologies Corp.(スペースX)との間に衛星ブロードバンドインターネット「Starlink」提供に関する契約を締結し、年内の提供開始を目指すことを発表しました。

衛星通信とESGにどのような関係があるのかすぐにピンとこないかもしれませんが「自然災害」と聞くと想像がつきやすいかもしれません。

Starlinkは従来の衛星通信と異なり、衛星自体が低軌道上に配置されているため地表との距離が近く、大幅な低遅延と高速伝送を実現しています。これにより、山間部や離島だけでなく、今年の夏からは海上での通信サービスも提供開始しています。

日本は自然災害の多い国であり、通信が行き届かない場所でのコミュニケーションには課題が残っていました。こういった課題に対する投資は新たなサービスにつながる可能性を持っています。

地域と移動の課題

続いて移動や配送の問題です。MUGENLABO Magazineでもお伝えしていますが、KDDIではドローンを使った配送サービスの実現や、地域における乗り放題サービスの可能性を模索しています。共に生産年齢人口の減少や少子高齢化を背景とする免許の自主返納や、子育て世代の送迎といった社会課題を解決するものです。

KDDIスマートドローンとエアロネクストは協業して「ドローン配送」による買い物弱者の問題を解決しようとしています。以前のインタビューにもある通り、地域にある小さな町では、高齢化の波によって引き起こされる買い物などの問題を、商店街や地域の物流会社が無理をしてでも支えている様子が伺えました。こうした場所にドローン技術を併用することで事業者の負担を軽減できる可能性が出てきます。

もうひとつ、子育て世代が課題を感じる送迎の問題もあります。KDDIとWILLERが合弁で設立した「Community Mobility」が提供する移動の定額サービス「mobi」は、月額5,000円で一定地域の移動を使い放題にしようとしています。

これにより働くパパ・ママが保育園の送迎にmobiを利用して、そのまま出社するような移動体験が実現できるようになります。このような子育てと仕事、自己実現の両立には通信テクノロジーの活用が不可欠です。

mobiでは定額利用を実現するため、KDDIが持っている人流データを使い、刻一刻と変化する道路状況に合わせたAIによるルート情報の算出をしているそうです。


定額サービスで移動の問題を解決するmobi(参考記事:半径2kmを定額乗り放題にしたワケーー移動を変える「mobi」とその課題

ファンドとの棲み分け

ここまでESG債による社会課題への投資イメージを整理してみました。スタートアップのビジネスアイデアや、通信技術、クラウドテクノロジーなどに投資することで、社会課題を解決に導き、持続可能な形にする。サステナビリティボンドの役割はそこにあります。

現在、KDDIでは同じく革新的なスタートアップサービスに投資を実行する投資スキームがいくつか存在しています。異なるのはKPIの設定方法です。サステナビリティボンドは事前に規定したレポーティング指標(環境・社会改善効果を測る指標)でその事業が正しく社会課題や社会からの要請に対して応えているかどうかを計測する必要があります。

このレポーティング指標の設計は必須で、これが決まらないと投資執行はできないそうです。このように計測ができない、しづらい社会課題は多く、こういったケースには従来スキームが活用されるというお話でした。

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