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2020年11月06日

新・企業共創時代:タイミングを逃したケーススタディ - KDDI 中馬和彦 Vol.3

KDDI中馬
KDDI株式会社
中馬和彦
ビジネスインキュベーション推進部長/KDDI ∞ Labo長

共創を実現させるためのプラットフォームの役割、それを突き動かすための人、考え方。ここまで中馬さんにお話を伺いながら、KDDI ∞ Laboという仕組みがどのように人や企業を繋げていったのか、その構造について考えを整理してきました。ここからは具体的なケーススタディです。そう簡単に結果が出ない新規事業への投資、経営者は必ずこの「結果」と常に向き合う必要があります。中馬さんとの会話を続けます。(文中の質問者はMUGENLABO Magazine編集部、回答はKDDIビジネスインキュベーション推進部長 中馬和彦、文中敬称略)


足元を見すぎた「じぶん銀行」

わかりやすく共創を伝えるためにもケーススタディに触れたいのですが

中馬:日本では事例はまだまだ少ないですけどね。僕らの中でいうと一番分かりやすいのはLUXA(ルクサ)等になるかと思います。ルクサってファンド(KDDI Open Innovation Fund)から投資をして、コマース関連で支援し続けて売上が二桁成長しまして、その結果M&Aに繋がったケースなんです。さらにコマース事業を大きくするために協業パートナーであった「DeNAショッピング」をM&Aして、双方を融合する形でKDDIとしてコマースの本部を作ったわけです。

これも最初の小さなきっかけでいうと、スタートアップの支援から始めたっていう所じゃないですか。スマホ特化のコマースが来るっていうのは必然だったのであまり驚きはないかもしれませんが。

逆に僕が本当は注目していて、もっと頑張ればよかったと思うのは「じぶん銀行」だと思っています。

これは三菱UFJ銀行さんとKDDIが合弁でモバイルネットバンク(現・auじぶん銀行)を作ったのが始まりです。それこそガラケーの時代です。携帯電話番号だけで振り込みができる、それこそ今「Pay戦争」なんて言われてる機能を実はもう十数年前にじぶん銀行だけが実装していたんです。世界的にも先進的でアイデアも素晴らしく、金融庁のすごく難しい規制も突破して、「電話番号で振り込む」ということを簡単なUIで実現していた。

ただそこから一気に社会を席巻、とまではいかなかった。モバイルバンキングとしては老舗で十分大きくなっているのですが、今みたいに「Payが全てのお客さんとの接点」であるというような世の中には持って行けなかったわけですよね。そこに対して最初から仕掛けられていたら、グローバルだって取れていたかもしれないし、Alipay(アリペイ/支付宝)と戦えたかもしれない。

振り返ってタイミングを逃してしまった要因は

中馬:短期の投資回収を優先した例かなと思っています。

どこにでもみんな使ってくださいよとやっていれば、リアル店舗にも普及し気が付いた段階で日本独自のSuicaのような独特の文化ができたかもしれません。だからこそ長期ビジョンが必要で、少なくとも短期の計画だったら絶対できませんよね。短期の回収を優先したがゆえに、利益は出ているけど小さくまとまってしまったわけです。そうではなくて、世の中のプラットフォームになるんだ!デファクトを取るんだ!っていう「中期の目線」をまずどこまで合わせられるかなんです。

かなりトップクラスで腹を決めないと現場は揺らぎそうですね

中馬:見えてる未来が一致するかどうか、これに尽きます。僕なりのやり方は常に、この人とだったら同じ絵が書けるというキーマンを見つけることから始めるようにしています。基本は経営者同士、トップが握れるか同じ道を描けるかっていうことに尽きると思います。非合理だと言われちゃいそうですが、基本はそうだと思いますよ。

一方で僕は大企業同士のアライアンスにも力を入れようとしてるわけです。

ここに実は案外チャンスがあるかなと思っているのが、大企業ってお互いもうびっくりするぐらいアセットを持ってるので、もしかすると新しく作っていく、あるいは次に仕掛けていくものはそれぞれが覚悟さえあれば、設備投資をすることなく大きな事業が作れたりするんですね。

例えばですよ、デベロッパーさんっていうのは場所も建物も山ほどあって、建て替える予定地とかいくつもあるわけじゃないですか。もともと発注するべきものもたくさんあって、何かその元々の計画の中、既存アセットの中に仕掛けるだけでも随分と大きなものを作れるんじゃないかと思っています。この「現物出資」という可能性は十分にあるんじゃないかなと妄想的に思っていて、あとはどこまでダイナミックにできるかどうかですよね。

こういうダイナミズムは日本的企業がなかなか苦手なところと言われてます

中馬:日本的慣習をどこまで排除できるか、というのもありますよ。

例えばなんですけど、私たちが特定の業界の人とエクスクルーシブに新しいビジネスモデルを作りましょうとなった場合、先方社内からは他の通信会社を「敵に回したくない」という反対意見が噴出したとしたら、結果として非常に部分的な事業提携で終わってしまいます。これは成熟した日本社会に於いての一つの弊害ではないかと考えています。
(次回につづく)

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