- インタビュー
2025年07月29日
ChatGPTで何するの?を解決── IVS決勝出場のBocek「Taskhub」で社内のAI利用率を3倍に向上

- 株式会社 Bocek
沖村 昂志 - 代表取締役 CEO
2025年7月2日(水)~7月4日(金)の3日間に渡り、京都市勧業館「みやこめっせ」およびロームシアター京都をメイン会場として「IVS2025」が開催されました。この記事では、本イベントのメインコンテンツの1つであるピッチイベント「IVS2025 LAUNCHPAD」の参加企業様のレポートをお届けします!
今回ご紹介するスタートアップは株式会社Bocekです。「ChatGPTで何をすればいいかわからない」「質問力によって回答の質が左右される」──そんな生成 AI 活用の課題を、専用フォームへの入力だけで解決するプラットフォームが同社が開発する「Taskhub」です。スライド作成なら「何ページがいいか」「どんなテーマか」「デザインはどれにするか」といった項目を埋めるだけで、 AI が回答を返してくれます。
法人向け生成 AI 導入支援を手がけるBocek代表取締役 CEO の沖村昂志氏は、ChatGPT登場時に特化メディアを立ち上げ、そこからサービス開発へと事業を拡大してきました。
同社のプラットフォームは他社サービスからの乗り換え企業で、 AI 利用率を2-3割から6-7割まで向上させた実績があります。 UI デザインと外部連携機能を特徴として、法人向け生成 AI サービスのシェア1位を目指している同社の取り組みについて伺いました。
専用フォームで解決する AI 活用の課題
Bocek が運営するのが、生成AIアプリケーション管理プラットフォーム「Taskhub」です。一般的なChatGPTのようにフォームへの自由入力で質問するのではなく、各用途に特化したフォームを用意することで、誰でも簡単にAIの回答を得られるサービスを提供しています。
沖村氏によると、フォームを埋めるだけでAIが回答してくれる仕組みにより、ユーザーがAIの使用方法に迷うことなく、質問力に左右されずに回答を得られます。
同社が法人向けに特化している背景には、企業におけるAI活用の課題があります。沖村氏によると、社員のAI活用方法は多くの企業で重要なプロジェクトの一つとして位置づけられているということです。
Taskhub は大規模での導入を特徴とし、社員一人ひとりが簡単にアプリを作成・共有できるプラットフォームとして設計されています。利用方法は3ステップで、アプリライブラリから人気アプリを見つけ、フォームを入力してアプリを試し、気に入ったらマイアプリに登録するという流れです。デフォルトで使えるアプリは2,000種類以上用意されており、法務担当者が作成した契約書チェックアプリは月間1万8,000回利用され、 NDA の内容を入力するだけで12個のチェック項目に基づいた結果と修正案を自動生成します。
ChatGPT 特化メディアから技術で差別化
沖村氏は ChatGPT 登場時に特化メディア「 PROMPTY 」を立ち上げ、 AI 導入支援、そしてクラウドサービスへと段階的に事業を拡大してきました。同氏は「どんどん難易度を上げて領域展開している」と事業拡大の方針を語ります。
競合他社との差別化において、同社が力を入れているのがユーザーインターフェースのデザインです。沖村氏はユーザーのテンションが上がることを意識していると説明。法人向けサービスにありがちなレガシーな見た目を一新し、カーソルのデザインまで細部にこだわっています。
技術面では、 Google ドライブや SharePoint 、 Google カレンダーなど、コネクタを開放しているサービスであれば、ほぼすべてのツールとの外部連携が可能です。カレンダーと連携したレポート作成アプリや、 Google ドライブの社内規定を学習させたチャットボットなど、沖村氏は活用の幅の広さを強調しています。
「ワークフロー」と呼ばれる独自開発のエディターは、業務フローを線でつなげるだけで、ノーコードで AI アプリを作成できる仕組みです。このエディターは2,000種類以上の外部連携に対応し、 Google や Microsoft 、 OpenAI など主要な AI サービスとも連携可能です。
同社の技術力を支えているのが、 AI に特化した約20名のエンジニアチームで、自社コードの半分以上を AI が生成するという開発スタイルを実践しているそうです。
社内のAI利用率を3倍に向上
社内で使いやすいAIアプリマーケットとして提供することで、利用率を向上させるTaskhubの導入効果はAI利用率の向上に表れているそうです。
他社サービスから乗り換えるていただける方が多く、もともとの平均利用率が2-3割程度が1週間あたりのアクティブユーザー率です。 Taskhub だったら平均だと6-7割くらいまで上がるんです。
沖村氏
現在 Taskhub は2,000以上のユーザーを抱え、アクティブユーザー率は75%を超えています。これは一般的な ChatGPT の約50%と比較して1.5倍の高い数値だそうです。
この利用率向上の背景には、同社のサポート体制があります。沖村氏によると、同社のサポートは単なる技術提供にとどまらず、 AI 活用そのものの研修からスタートし、全社レベルでの展開を行っています。
同社の事業はクラウドサービスの Taskhub に加えて、コンサルティングや開発支援も展開する2つの柱で構成されており、企業の DX 推進全体を支援するパートナーとしての位置づけとなっています。
僕らがまず狙っているのは、国内法人向けの生成AIサービスのシェア1位をとっていくことです。個人でも組織としてAI導入するのが一般的になるよね、というところまで、ブランドとして持っていきたいです。
沖村氏
この戦略を支えるのが、沖村氏の顧客重視の経営方針です。代表自らが現地に赴いてヒアリングを実施し、起業家同士のコミュニティより顧客の声を重視するスタンスを貫いています。
この現地現物主義は、同社が重視するタイムトゥバリューという概念と関連しています。沖村氏は開発してから顧客に使ってもらい、感想を聞くまでが開発のスパンだと考え、「そこまでの時間をなるべく短くして、たくさん検証を回す」という方針で検証サイクルを回すことでサービスの改善につなげています。
将来的な展開として世界展開への可能性も視野に入れつつ、法人向け生成 AI サービスという領域でポジションを獲得できるか、引き続き注目したいと思います。
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