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2023年12月19日

2023年最終回はGoogle出張版、卵子凍結から生成AIまで登壇スタートアップ8社をご紹介/KDDI ∞ Labo12月全体会レポ【後編】

KDDI ∞ Laboでは毎月、オープンイノベーションに関わる∞Laboパートナーとスタートアップの共創をサポートする全体会を開催しています。12月に開催した会では、パートナーとして参加いただいている86社の方々と、スタートアップ8社が協業や出資などのきっかけを求めてGoogle渋谷オフィス内の会場に集まりました。本稿では登壇した8社のうち後半4社のピッチステージの内容をお送りいたします。


前編:https://mugenlabo-magazine.kddi.com/list/2023-12-1/


めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
前編に続いて、登壇いただいたスタートアップ4社をご紹介します。

流通量は右肩上がり、現代アートのマケプレTRiCERAが伸びたワケ

TRiCERA 代表取締役 井口泰氏

国境を超えたアートマーケットプレイス「トライセラアート」を展開するのがTRiCERAです。ピッチステージの壇上に登った同社代表取締役の井口泰さんによると「アーティストの参加国数は126カ国以上で、8,000人以上が登録しており、現在の作品掲載数は9万点以上」になるそうです。越境での国際取引には多言語での作品説明や価格交渉、美術品を専門にした出荷や配送、国際間決済、返品手配などの手続きが必要になります。

これらに加え、真贋証明書の発行なども加えた一気通貫でのアート取引をサポートするのが同サービスです。TRiCERAは過去に参加したKDDI ∞ Laboのイベントをきっかけに大日本印刷株式会社(DNP)グループとつながり、今年6月にはDNPアートコミュニケーションズとの間で資本を加えた業務提携も発表されています

トライセラアートでは、アーティストから直接作品を購入することも、コレクター同士で作品を売買することもできます。現在我々のサービスは非常に伸びています。現代アート市場全体では、アーティストの数は約7倍、流通量は10倍、オークションでの売上高に関しては22倍になっています。

井口氏

Image Credit: トライセラアート(同社ウェブサイトから)

その背景には富裕層による需要の拡大があるそうです。「購入の動機はインテリアに加え、投資対象で購入する方が非常に増えている」(井口さん)という話で、これらの人々は新世代コレクターと呼ばれており、30歳から50歳の男性投資家や経営者が多いとのことでした。

そしてこれらの方々の特徴はオンラインでアートを購入する点です。つまり、実物を見ないで購入する傾向があるということなのですが、コレクション投資を目的に購入されるケースの平均単価は数百万円にものぼるとか。結果、トライセラアートの流通額の拡大に繋がっているそうです。

今までは(アート作品の)1次流通と2次流通が分断されており、オフラインが主流でした。TRiCERAが提案するのは、この海外市場へのアクセス方法がなく、流動性が低いという分断を解決するためのプラットフォームです。オンラインとオフラインを含む1次流通と2次流通を結びつけ、全世界に対してのチャネルを開くことです。これが我々が今、行っていることなんです。

井口氏

今後はDNPグループとの連携を強化し、機能面については価格設定などにAIを取り入れるなどの展開も考えているとのことでした。

卵子凍結保管・クリニック向けコンサル事業を展開するグレイスグループ

グレイスグループ 代表取締役 勝見祐幸氏

昨今、企業が女性社員の卵子凍結を費用面で支援しようとする動きがあります。その背景には、女性の予防医療が、企業にとって非常に費用対効果の高い人的資本投資であるという考えがあり、アメリカでは既に大企業の19%が社員の卵子凍結費用を負担していて、これは採用競争において優れた人材を獲得できる重要な要素となっています。

しかし、日本は女性の予防医療において圧倒的な後進国であり、その結果、女性の健康が阻害されています。特に婦人科のかかりつけ医が遠い関係にあることから、結果として、さまざまな疾患が進行しやすくなっています。この課題に対処すべく、グレイスグループは婦人科のネットワークを構築し、企業が利用しやすい形で女性の予防医療を推進しています。

我々の特徴は、卵子の保管プロセスをとにかく合理化したということです。そして、日本の生殖医療を引っ張ってきた有名な先生方と一緒に、会社を経営しています。このことによって、現在、全国で40のクリニックと提携し、それも各地域のトップのクリニックと組んで、どこでも安心して卵子凍結ができます。我々が一番安全に保管をします。

勝見氏

女性の予防医療においては定期的な健診が重要で、早期発見で治療が可能な症状も多く存在します。健診を促すことは、企業が従業員に対して推奨すべき健康づくりの一環であり、女性の働き方や少子化の進行を防ぐためにも重要です。例えば、子宮頸がんは10年ほどかけて進行するので毎年検査を受けていれば防げる可能性が高いですが、毎年3,000人の女性がこの病気で命を失っています。

勝見氏は、企業が女性の予防医療に積極的に関わり、支援し、働きかけることで、卵子凍結へのハードルが高いと感じる女性にも婦人科のかかりつけ医を持ってもらい、年1回の健診に行ってもらうことによって、女性の活躍の遅れと少子化の進行を解消していきたいと語りました。

ジェネレーティブAIを活用した、高精度なチャットボットを開発するカラクリ

カラクリ 代表取締役 小田志門氏

カラクリは、AIを使って、カスタマーサポート、より具体的に言えば、コールセンターの業務を革新しようとするスタートアップです。カスタマーサポートのデータを中心に、顧客対応の自動化やコールセンターの生産性を向上させることを狙いに掲げています。

webサイトにチャットボットを設置する企業は増えているものの、十分に満足できるものはまだありません。

小田氏

例えば、自由入力ではなく選択入力で質問する必要があったり、企業側が予め問答パターンを用意していない内容の問い合わせがあると答えられなかったりなど、ユーザーや顧客が問い合わせした時に制約が多いと、結局のところ人が対応しなければならなかったり、その問い合わせの対応に時間を要するコールセンターに電話でかかってきたりします。

カラクリではこの問題を、ハイブリッドAIによって解決しました。小田氏によれば、チャットボットで寄せられる質問は、大まかに言って、よくある質問2割と、あまりない質問の8割に分類されるそうです。

カラクリでは、よくある質問2割については定型AIで、あまりない質問の8割についてはジェネレーティブAIを使って回答するようにしました。2つのAIを組み合わせて使っているのでハイブリッドAIと呼んでいるわけです。ジェネレーティブAIは、顧客のwebサイトのFAQやメールを検索し、得られた情報を元にユーザーに回答します。

このハイブリッドAIの中では、ジェネレーティブAIは既存のGPTを使っているものの、検索エンジンやデータの前処理については、社内で独自開発しているとのことでした。社内の従業員の多くをAIエンジニアが占める同社では、AIに関連する独自AIの開発にも積極的で、AWS(Amazon Web Services)の協力で独自のLLMも開発中とのことでした。

エッジコンピューティング向けAI・IoT活用プラットフォーム「AION」

ラトナ 代表取締役 大田和響子氏

AIおよびIoT向けの開発プラットフォーム「AION(アイオン)」を提供するのが2018年創業のラトナです。AIONはAIおよびIoTリソースの包括的な開発、実行、運用、管理を目的としたもので、エッジ環境やオンプレミス環境にAIリソース(学習済AIモデル、データセット、フレームワーク、実行環境など)をデプロイできる「AI Cores」やIoTリソースをデプロイできる「IoT Cores」など8つのコンポーネントを提供しています。同社創業者で代表を務める大田和響子さんは、AIONの狙いについて次のように語ります。

センサーやカメラからのデータを、エッジコンピューティングというクラウドを使わずに通信できる技術を使って分析し、例えば工場の検品システムやロボットコントロールシステムなどの研究開発を進めてきたスタートアップです。このデータがリアルタイムにマネジメント層まで連携されることで、経営判断に関する情報を提供できることを目指しています。

大田和氏

例えば製造・流通などの現場で幅広く採用されているSAPとの連携事例では、AIONとの組み合わせを通じて工場や物流、倉庫、プラントなど様々な産業シーンにおいて発生するデータ流通・運用を可能にするそうです。

ラトナではOSSを推進しており、AIONの全てのリソースをGitHub上で公開

AION自体は元々、大手の企業向けに開発してきたものだそうで、SAPやオラクル、セールスフォースなどとの連携が可能で、全てのリソースはオープンソースとしてGitHub上で公開されているのも特徴です。企業のデジタル化を推進しつつ、先端技術の研究開発を推進することから、2022年にはGoogleのスタートアップ支援プログラム「Google for Startups Accelerator Class 4」に採択されました。大田和さんは、AIONの具体的なユースケースとして、製造現場などのデジタル化推進を挙げて次のように説明します。

紙ベースで行われている業務をDX化していきましょうというコンセプトで(例えば)スマートフォンでQRコードを読み込んだり、バーコードを読み込んで在庫情報を簡単に管理できるようになっています。また、マネジメント層にはリアルタイムな情報を提供するダッシュボードも用意されており、経営判断に役立つ情報を提供しています。全ての機能はパッケージではなく、マイクロサービスとして提供されており、必要なモジュールを選んで導入できる仕組みになっています。

大田和氏

なお、AIONの優位性はこのマイクロサービスとして提供されている点にあるそうです。例えばテスト中に問題がある箇所を発見しやすかったり、提供先の企業にとって不要な機能についてもパッケージングをまるごとリプレースするのではなく、今あるシステムとうまく共存することができるメリットがある、というお話でした。

登壇の最後、大田和さんはラトナの目指すべき世界として次のように語り、プレゼンテーションを締めくくります。

工場ごとに使ってるシステムが違ったりしている状況が散見されるので、この辺をもう一度統合するために、エッジコンピューティングと現場の効率化をやってきました。最終的には基幹システムみたいなところに統合し、そこに全ての情報ができるだけリアルタイムで出ることによって、経営の意思決定であったり、無駄なところは削っていくことに繋げ、企業様の利益の最大化に貢献したいです。

大田和氏

めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
各社のご紹介記事もこれから公開していきますので、お楽しみに~!

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