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2024年09月26日

「バーチャル大阪駅」のさらに先へ JR西日本グループとKDDIで描く、メタバースの未来

西日本旅客鉄道株式会社 
長沼 悠介
ビジネスデザイン部 XR推進室(バーチャル大阪駅 当務駅長) 
西日本旅客鉄道株式会社
中村 尊郁
ビジネスデザイン部 事業推進 兼 XR推進室(バーチャル大阪駅 当務駅長)
KDDI株式会社
大橋 麻生
事業創造本部 Web3推進部

西日本旅客鉄道(JR西日本)グループが2022年から展開する「バーチャル大阪駅」プロジェクト。プロジェクトの第3弾となる2024年3月から公開の「バーチャル大阪駅 3.0」は、国内外から多くのユーザーが訪れ、開業から半年で延べ来場者数が1,900万人を突破しました。


ここに5月、KDDIの提供するメタバース・Web3サービスプラットフォーム「αU(アルファユー)」が出展。リアルの駅がもつ強みとメタバースならではの拡張性を融合させて新たな顧客体験と価値創造を生み出そうと、JR西日本グループとKDDIがタッグを組んで挑戦しています。


その背景や課題、そして今後の展望について、西日本旅客鉄道株式会社の長沼 悠介氏と中村 尊郁氏、KDDIの大橋 麻生氏に話を伺いました。


3回目の「バーチャル大阪駅」、課題解決に向けKDDIと連携

「バーチャル大阪駅 3.0」とαU metaverseは、連動イベントも実施

JR西日本グループによる「バーチャル大阪駅」プロジェクトは、今回で3回目の開催。このプロジェクトは、単なる駅の仮想空間での再現にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出を目指す野心的な取り組みです。JR西日本の長沼氏は、プロジェクトの背景について次のように説明しています。

前回の『バーチャル大阪駅』は、約1カ月半の公開期間のあいだに、延べ600万人もの方々にご来場をいただきました。この多くのユーザーが集まる空間をビジネスへと繋げていくことで、リアルの鉄道会社である我々にとって、バーチャルでの新たな収益源を作り出せる可能性があると考えています。

長沼氏

また、JR西日本の中村氏は、駅がもつ多面的な価値に注目し、次のように付け加えています。

駅は単に乗り降りする場所ではなく、ショッピングセンターがあったり、さまざまな経済活動が行われている場所です。そういった駅がもつ多様な機能や含意をバーチャル空間でも再現し、さらに拡張していくことで、新たな可能性が見いだせると考えています。

中村氏

プロジェクトでは、REALITYが提供するスマートフォン向けメタバース「REALITY」を採用しています。現実世界の大阪駅との連携を重視し、例えばメタバース上のアバターを使ったモザイクアートをリアルの駅に展示したりするなど、バーチャルとリアルを融合させた取り組みを行っています。

しかし、このプロジェクトには課題もあります。長沼氏は「どのような取り組みをすれば、より多くの人に満足いただけるのか」という点に悩みがあったといいます。

特に工夫が必要だったのがマネタイズの面です。メタバース上での広告の価値はまだ確立されておらず、長沼氏は「広告効果がまだ定かでないため、クライアントが出稿に躊躇している面があります」と話します。それに加えてユーザーからの課金モデルについても、成果はまだこれから。中村氏は「例えばリアルの駅長制服を再現したアバターファッションを販売したりしていますが、これだけではマネタイズとしてはまだまだ不十分な状況です」と、現状を説明していました。

これらの課題に対応するため、JR西日本グループとKDDIは連携を開始しました。KDDIの大橋氏は、連携に至る経緯について「もともとKDDIの営業部がJR西日本と仕事させていただいていた背景があり、2023年頃にお互いメタバース関連の事業を立ち上げていたことから、定期的な情報交換を行うようになった」と振り返ります。

リアル空間にVライバーが登場、予想以上の反響に社内でも驚きの声

大阪駅アトリウム広場

JR西日本グループとKDDIの連携により、「バーチャル大阪駅」プロジェクトは新たな段階に入りました。両社の強みを生かしつつ、リアルとバーチャルの融合を図るさらなる施策が展開されています。

そのひとつが、「バーチャル大阪駅 3.0」の「αUジャック」と呼ばれるイベントです。このイベントでは現実世界の大阪駅、アトリウム広場にある大型ビジョンを活用。バーチャル空間で活躍するVライバーを、このビジョン、つまり「リアル空間」に登場させたのです。大橋氏は、この施策を実施するにあたっての苦労について、次のように説明しています。

リアルな場所とバーチャルを掛け合わせて、お客様に対し、どのように興味を持ってもらうようなイベントを立案するか、検討に時間を要しました。また、『バーチャル大阪駅 3.0』の運営主体であるREALITYとαU metaverseは、本来は競合関係にあるので、ふたつのメタバースプラットフォームから協力を得ることも大きな課題でした。

大橋氏

しかし、この取り組みは予想以上の反響を呼びました。なんとVライバーのファンの方々が、遠方からわざわざリアルの大阪駅までやってきてくれたのです。

我々も正直、どれだけファンが来てくださるのか懐疑的だったのですが、実際にインタビューすると、映像を見るためだけに来たという方が多くいらっしゃいました。

長沼氏

さらに、リアルとバーチャルの相互送客も実現しました。大阪駅にあるカフェと連携し、そこにQRコードを設置することで、リアルの来場者を「バーチャル大阪駅 3.0」に誘導したのです。逆に、「バーチャル大阪駅 3.0」の中にイベントの広告を出すことで、バーチャルからリアルへの送客も行いました。

リアルの大阪駅で配布された「バーチャル大阪駅 3.0」のチラシ広告

この取り組みは、単にJR西日本グループとKDDIの連携にとどまらず、異なるメタバースプラットフォーム間の連携も実現しました。大橋氏は「REALITYとαU metaverse、それぞれの特徴を生かしたイベントを行うことで、異なる客層を引き込むことができた」また、「KDDIが24年3月に”オープンメタバースネットワーク”というREALITY XR cloud(※)を含むメタバースプラットフォームの複数社を巻き込んだアライアンスを組んでおり、相互に情報共有を行えた結果でもある」と成果を語ります。

(※)REALITY XR cloudは、「REALITY」を活用した法人向けメタバース構築ソリューション『REALITY XR cloud』の開発・運営を行う企業。

強みを掛け合わせ、新たな価値創造を

「バーチャル大阪駅」プロジェクトは、今後さらなる発展を目指して取り組みを進めていく模様です。長沼氏はKDDIとの連携について、次のように語っています。

我々は『バーチャル大阪駅 3.0』を運営していますが、まだまだ知見が足りないと感じています。KDDIにはメタバースの知見やプラットフォーム運営のノウハウがあります。それと我々の強みであるリアルなアセットを組み合わせて、これまでに無い新たな価値を生み出せればと考えています。

長沼氏

一方の大橋氏も「この先のモデルケースになる」と、両社で引き続き協力して取り組んでいくことを明かしてくれました。リアルとバーチャルの融合の新しい可能性を探る「バーチャル大阪駅」プロジェクト。技術の進歩とともにこのプロジェクトがどのように発展していくのか、今後の展開が期待されます。

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