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2024年11月07日

アジア市場を足がかりに、グローバル展開を加速するトリファの成長戦略を聞く

株式会社トリファ
嘉名 雅俊
代表取締役

日本人向けの海外eSIMサービスで急成長を遂げるトリファは10月、総額12億円の資金調達を実施しました。今回の調達を機に同社が推し進める、アジア市場をターゲットにしたグローバル展開や独自の強みを活かしたサービス展開など、今後の戦略について代表取締役の嘉名雅俊氏に伺いました。


アジア市場からグローバル展開に着手する理由

トリファが提供するeSIMサービスは、世界の200を超える国や地域でインターネットを利用するためのeSIMを購入できる、海外用データ通信アプリです。従来はレンタルWi-Fiを使ったり、現地のSIMカードを購入して利用することで渡航先での通信が可能となっていましたが、トリファを使うことで手間がなくなり、アプリひとつでスムーズに海外で通信することができます。2021年のサービス開始以降、利用者は急速に増えており、四半期ごとの利用者実績は平均160%以上の成長を遂げています。


eSIM通信サービスのトリファ

同社は今年10月、12億円の資金調達を実施しました。現在の事業の9割以上は日本人を対象としたアウトバウンド向けで占められていますが、今回の調達を機に今後はグローバル展開を加速していくと発表しました。その足がかりとして、東アジア圏のユーザーをターゲットとした展開を目指しています。嘉名氏は、次のように説明します。

具体的には、台湾や韓国、香港などの東アジア圏の旅行者向けにサービスを拡大する計画です。この地域の旅行者の半数以上が東アジア圏内を旅行先として選んでいるのですが、このような旅行パターンがトリファのサービスと非常に相性がいいと考えています。
例えば、台湾の旅行者の半数以上は日本を訪れ、残りが韓国や東南アジアを選択しているという具合です。

嘉名氏

トリファは特に台湾市場において、すでに具体的な動きを取り始めています。現地法人の設立は将来的な検討事項としつつ、現在は日本から台湾の人材をリクルートし、マーケティング活動を展開しているのです。

台湾市場の特徴として、Googleなどの検索エンジンを通じて見られる記事コンテンツの評価が日本ほど高くなく、インフルエンサーマーケティングが効果的な点が挙げられます。それをふまえトリファでは、現地在住の台湾人インフルエンサーを起用し、コミュニケーション戦略を展開しているそうです。台湾市場の親日的な特性も、トリファにとって追い風となっています。「日本企業のサービスであることが、台湾のユーザーに安心感を与える要因となっている」と、嘉名氏は話します。


競合との差別化を経て順調に成長するトリファ

トリファは競合する多くのサービスとの差別化に向け、品質向上にも注力しています。特に同社が強みとするポイントは、高品質な通信サービスと充実したカスタマーサポートにあると言います。

通信品質の確保において同社は、海外の通信事業者との直接連携を重視する戦略を取っています。多くの競合他社がMVNO(仮想移動体通信事業者)と提携する中、トリファはMNO(移動体通信事業者)と提携することを方針としています。これによって帯域制限などの問題を回避し、よりよい品質の通信サービスを提供することが可能となっているのです。

eSIMサービスは一見すると差別化が難しいと思われるのですが、初期から『できる限り海外のMNOと連携する』という方針を掲げて取り組んできたことが、トリファの優位性につながっています。実際にSNS上では、トリファのサービスの通信速度の速さを評価する声が見られますね。

嘉名氏

カスタマーサポートの面でも、トリファは24時間体制でのサポートを提供しています。海外における通信サービスは旅行者にとって重要なインフラであり、問題が発生した際の迅速な対応が求められるからです。同社はこの点を重視し、ユーザーが安心して利用できる環境を整えているのです。

市場には非常に安価なeSIMサービスも存在しています。しかし、これらの多くは複数の卸売業者を経由しており、問題が発生した際に適切な対応が難しい。トリファは通信事業者とのシステム連携まで完了させており、誰がどれくらいサービスを使用しているかをリアルタイムで把握可能な体制を整えています。そのため、より適切かつ迅速にサポートすることができます。

嘉名氏

トリファのサービスはローカライズにも注力しており、日本人向けには円建て、今後台湾の利用者向けには台湾ドル建てでサービスを提供するなど、各国のユーザーが安心して利用できるよう配慮されています。
一方、グローバル展開には様々な課題も存在します。その一つが為替リスクです。トリファのビジネスモデルは、海外の通信会社から仕入れて販売するという形態を取っているため、為替の変動が直接的に収益に影響を与える可能性があるのです。

海外販売戦略と資本業務提携

トリファは、さらなる成長を目指して新たな取り組みを進めています。その中でも注目されるのが、戦略的パートナーシップの構築と販売チャネルの多様化です。今回の資金調達では、ANAホールディングスとグローバル・ブレインが新しい株主として参画しました。特にANAホールディングスについては、同社が持つ資産や顧客基盤とのシナジーを活かし、事業の成長を加速することが期待されています。

海外への渡航には、誰しもが飛行機を利用します。機内Wi-Fiとの連携など機内でのサービス提供は、トリファの潜在顧客にアプローチできる大きな機会になるのではないでしょうか。

嘉名氏

また、トリファは販売チャネルの多様化にも注力しています。現在、力を入れているのがOTA(オンライン旅行代理店)や旅行代理店とのバンドル販売です。日本国内では、まずインフルエンサーマーケティングでブランド認知を高め、その後に旅行代理店とのバンドル販売を進めるという段階的なアプローチを取ってきました。
一方、海外展開においては、これらの戦略を同時に展開するアプローチを採用しています。インフルエンサーマーケティング、OTAとの連携、旅行代理店とのバンドル販売を並行して進めることで、迅速な市場浸透を図っているのです。

「Make A New Era 新しい時代をつくる」をビジョンに掲げる、トリファ。
日本発でグローバルに通用するサービスを生み出し続けていくことを目指し、まずは「安心・安全な海外通信」を提供するための海外eSIMサービスから事業を展開し、急速な成長を実現してきました。
今回の増資をきっかけに販売チャネルの多様化はどのように進むのか。スタートアップのグローバル展開例として引き続き注目したいと思います。

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