- インタビュー
2020年10月26日
印刷で培った課題発見力と共創力「トッパンCVC」
- 凸版印刷株式会社
坂田卓也 - 事業開発本部戦略投資センター所属。凸版印刷の営業部門を経て2014年から経営戦略部門、2016年からアライアンス戦略・協業を手がけ、ベンチャー企業との資本業務提携、M&Aなどを推進する。2019年から出資先のユニファ社外取締役
- 凸版印刷株式会社
吉田光志 - 事業開発本部戦略投資センター所属。2016年にエードットに入社。管理部執行役員 兼 上場準備のプロジェクトリーダーとして従事し、マザーズ上場。2019年に凸版印刷に入社し、ベンチャー企業との資本業務提携及び事業開発を推進
企業の共創活動をリレー的にご紹介するコーナー、前回ご紹介したKDDIの次にご紹介するのが凸版印刷を中心とするトッパングループでスタートアップと共創事業を展開するトッパンCVCです。
トッパングループでは中長期的な経営戦略の一部として、「健康・ライフサイエンス」、「教育・文化交流」、「都市空間・モビリティ」、「エネルギー・食料資源」という4つの成長事業領域におけるオープンイノベーションや少額出資、買収を通じた事業展開の加速を掲げられています。この中で、少額出資を手段としてスタートアップと連携し、事業開発までを手掛けるのがトッパンCVCのチームになります。(太字の質問は MUGENLABO Magazine編集部、回答はトッパンCVC担当の事業開発本部戦略投資センター所属の坂田卓也さん、吉田光志さん、草野一成さん)
活動概要について教えていただけますか
トッパン:世の中的にペーパーメディアの落ち込みが続いており、ビジネスモデルの変革が求められていました。私たち凸版印刷では、社会課題解決を起点に新事業開発を促進し、従来の「受注産業」「労働集約型産業」からの脱却を目指すべく、印刷産業の枠を超えた成長投資が必要と判断したのがきっかけです。
投資方針として具体的にどういった領域に注目されているのでしょうか
トッパン:主に事業シナジー、新事業開発等の戦略的な活用が狙いです。領域としては、トッパンの成長領域として中期計画にも掲げている、健康・ライフサイエンス、教育・文化交流、都市空間・モビリティ、エネルギー・食料資源を中心に投資していきます。ステージはシードからミドルまでで、実際に投資実行しているケースではアーリーステージが多いですね。
ーーーー少し話を補足しておくと、凸版印刷では長らく「紙」を中心とした事業を展開し、その印刷技術から例えば半導体のプリントであったり、液晶パネルやプラスチック形成などの印刷・加工技術が発達していった経緯がありました。また、印刷物を利用したマーケティングはデジタル化され、これらを総合した「印刷テクノロジー」を軸に事業の多角化を進めてきたそうです。
同社で特徴的なのが「受注」スタイルで、顧客の課題に合わせて解決する姿勢を長年続けた結果、同社の元には多くの「企業課題」が舞い込むようになり、それらを検討した結果、現在の中期計画にあるような注目領域ができた、というお話でした。ということで質問に戻ります。
トッパンCVCで協業を進めるメトロエンジン社/画像クレジット:メトロエンジン
トッパンCVCの投資として特徴がわかるケーススタディは
トッパン:現在、メトロエンジンと一緒にサービス開発をしています。今まさに彼らとサービスを開発中なので詳細はお伝えできませんが、彼らが持つ技術、強みを新市場に横展開するための市場探索から開発までをプロジェクト化して走っています。
メトロエンジンは主にホテルの空室価格を可視化して、リアルタイムに空室予約が管理できるサービスを展開されています。例えば凸版さんが持っている顧客ネットワークを活用すれば、彼らが持つ技術を他の業界で活用できる可能性も広がりますよね
トッパン:先にお話した通り、私たちは紙の事業を通じてこれまで多くの顧客の課題解決に向き合ってきました。こういった課題の数々にスタートアップの方々の技術、ソリューションをマッチングし、一緒に水平展開していけるのが強みです。
具体的に共創をしかけたい場合、どういった意思決定のプロセスになっているのでしょうか
トッパン:私たちはCVCという部署名ですが、実際は会社からの直接投資になります。目的は新事業創出のため、まずは協業案を両社でディスカッションするところから始まってます。ですので投資と言いつつも、事業部メンバーも参加した形で進めています。
なるほどまずは資本、ではなく具体的な提携を先に模索するスタイルですね
トッパン:そうですね、やはり最も注目する点は、協業案の魅力度(シナジーや市場インパクト)です。協業案が固まったら、その後スタートアップサイドにプレゼンテーションの場を作っていただき、デュー・デリジェンス(契約・バリュエーション)を実施します。その結果を踏まえて最終投資意思決定をします。また、スピード感をもった対応を可能にするため、一定金額内であれば本部内で出資検討が行える体制を整えました。
資料提供:トッパンCVC
協業したいスタートアップの方々はどこからコンタクトすればよいでしょうか
トッパン:ホームページにコンタクト窓口を用意していますので、そちらからご連絡をいただいています。スタートアップの新たな技術やサービスと、トッパングループの持つ企画力・技術力を掛け合わせることで、新しい社会的価値を創造することを目的として活動しています。コロナ禍においても積極的に活動しているため、ご関心をもっていただけたスタートアップからのお問い合わせをお待ちしております。今後、トッパンCVC独自のサイトも立ち上げ、CVCに関する情報を発信していく予定なので、そちらもぜひご覧いただければと思います。
ありがとうございました。
ということでトッパングループの投資部門「トッパンCVC」についてお届けしました。次回は新たなファンドを新設された三井不動産さんの取り組みにバトンをお渡ししてお送りします。
関連記事
-
ビックカメラがCVCを設立、スタートアップ企業との協業で目指す脱小売への挑戦
2021年12月22日
-
Give Firstを徹底して世の中の価値総量を増やすーー電通ベンチャーズの100億円ファンド
2021年07月20日
インタビューの記事
-
ディープテックスタートアップの超新星! - OptQC
2024年10月30日
-
データセンターの 消費電力を50%削減! - TopoLogic
2024年10月29日