1. TOP
  2. 海外トレンドレポート
  3. The AI Conference 2024 in SF ーー海外トレンドレポート
  • 海外トレンドレポート

2024年10月15日

The AI Conference 2024 in SF ーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

今回は、9/10–9/11の期間で、サンフランシスコにて開催されたAI全般に関する幅広いトピックをカバーする年次イベントThe AI Conference 2024(以下The AI Conference)についてお届けします!


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

The AI Conferenceとは

本イベントは、サンフランシスコにて今回が2回目の開催となる、AIの最新技術や応用、研究成果を共有し、業界関係者らへ学びとネットワーキングの場を提供することを目的とした、AIの最先端企業が登壇する年次イベントです。イベントはビルダートラック(AI開発者や起業家向け)、テクニカルトラック(AI研究者や技術者向け)、ストラテジートラック(大企業の意思決定者やリーダー向け)の3つのメイントラックで構成され、扱われるトピックはAGI、基盤モデル(Foundation model)、大規模言語モデル(LLMs)、生成AI、ニューラルアーキテクチャ、AIインフラ、AIユースケース、倫理とアライメント、AIスタートアップなど広範囲をカバーしています。前日までにチケットは完売し、関連業界からは一定の注目を集めるイベントとなりました。

スタートアップピッチ

初日のメインイベントの一つとして、AI関連のアーリーステージスタートアップのショーケースが行われ、8社が熱いプレゼンテーションを繰り広げました。全体を通して、非営利団体やブルーワーカーなどを対象とし、社会的存在意義を追求するソーシャルインパクトをテーマとするような企業が多く登壇していたことが印象的でした。

  1. Justice Text(優勝企業)
    刑事事件のエビデンスとして利用される証拠映像を要約し、裁判を担当する弁護士の確認時間を短縮するソリューションを提供。既に100社以上の弁護士事務所などの関連機関で利用されており、80言語をカバー。
  2. Justice Text社のサービスイメージ

  3. AIDONIC
    NGO、NPOや国連、政府、その他人道支援団体に対し、募金活動と寄付金のディストリビューションを効率化するデジタルプラットフォームを提供。AIとブロックチェーン技術により募金活動を透明化し、送金時間を短縮する。2022年にサービスローンチし、2023年には10のカスタマーを獲得。
  4. Andi
    生成AIを活用した会話型検索エンジンを開発。広告やパーソナルデータのトラッキングはなく、無料で提供される。SNSなどでの拡散などによりオーガニックで若い学生を中心に100万ユーザーを獲得。
  5. DeepKeep
    生成AIやLLMを活用する企業向けに、AIファイアウォールプラットフォームを提供。平均月次成長率77%にまでに上り、主に銀行や自動車メーカーなどの大企業を対象に、社内の機密性の高いデータを保護しながら安全なAI導入をサポートしている。
  6. EPITEL
    脳波データをリモートで記録し、潜在的な発作リスクをAIによって検出するサービスを提供。24年4月にFDA認証され、今年から複数の医療機関を通じて提供開始予定。
  7. Foward.ai
    GTM Ops(市場進出戦略のオペレーション)を自動化するソリューションを提供。AIモデルを使ってノーコードで過去データからリードのスコアリングやチャーンの予測ができる。
  8. Foward.aiのサービスイメージ

  9. Norn.AI
    人間の知識量を超える集合知をAIにより最大限に活用し、意思決定を容易に行うことができるようにするIntelligence as a Serviceを提供。政府や企業がターゲット。
  10. GOOEY.AI
    ローコードAIワークフローを用いて労働者の生産性を高めるプラットフォームを提供。オープンソースのLLMを用いて、ユーザーからの質問に即時に応えることができるQAボットを数日で開発可能。Whatappなどの既存メッセンジャーへのインテグレートも可能。

注目を浴びたセッション:VC Perspectives on AI(AIにおけるVCの視点)

登壇者:Alex Kayyal(Lightspeed Venture Partners パートナー)、Kanu Gulati(Khosla Venturesパートナー)、Shravan Narayen(IVPパートナー)

米国ローカルの各VCから、AIにおけるチャンスとリスクについて、それぞれの視点から語られました。AI領域における起業は非常にホットでエキサイティングであると捉える一方で、各VCに共通する評価基準として、AI技術を活用し実際の課題解決や顧客獲得戦略の蓋然性を重視する傾向がありました。また最近注目するAIスタートアップの一例としてKhosla VenturesはSakanaAIについて言及しており、Khosla Venturesの中で期待される投資先であると感じられました。

セッション時の様子

  1. AI業界におけるエキサイティングな注目ポイント
    技術的な優位性のみならず、コンピュータービジョンを活用した工場の24時間モニタリングや安全性の確保など、実際のビジネスのユースケースと結びつく技術や、リーガル・ヘルスケアというような特定の業界の課題を解決するAIに注目です。業界を超えて利用可能な汎用的AIアプリケーションに注目して、AIを活用して各業界を再構築し、新たなビジネスモデルを創造するスタートアップが期待されます。また、LLMを超えるものも注目ポイントです。例として、SakanaAIのような新しいモデル開発の手法などが挙げられます(Khosla)。 AIで汎用的に利用されるインフラへの投資強化や、その他個人的には人類のクリエイティビティを拡張するようなAI、マルチモーダルAIの発展によりスクリーンをベースとしないAIの利用に注目しております。
  2. AIにおけるリスクやデューデリジェンスの際に注視するポイント
    耐久性の高いビジネスモデルとカスタマーの粘着性。カスタマーにどれだけフォーカスしているか、また市場ニーズの変化にどれだけ対応可能かという点やスケーラビリティに注目しています。例えば、テレコム企業などとのパートナーシップによってどれだけ市場獲得戦略を実現するかを重視したり、ガバナンス、セキュリティなど同時に発生しうる課題にいかに対処するかも重要な課題であると認識しています。AIの能力が既存企業や新規参入企業の能力を上回り、効果的に活用できなくなるリスクがあるので、将来のAIの進歩に適応できる企業を構築することが重要です。

最後に

ストラテジートラックでは、大企業でのAI導入への慎重さや遅さを指摘し、AIの活用方法について特にヘルスケアや自動車などと言ったバーティカルな業界の観点で語られるトピックが多かったです。ビルダートラック、テクニカルトラックでは、エージェント開発やLLM開発に加えて、RAG技術(検索と生成を組み合わせた技術であり、LLMが回答を生成する際に、外部の知識ソースから関連情報を検索して精度の高い回答を生成する技術)をテーマに含む講演が多く見られました。出展企業は約50~60社ほどあり、AMDやGoogle Cloud、Snowflakeなどのスポンサー企業のほか、スタートアップではMLOpsやLLMOps、ディベロッパー向けのAIエージェントなど開発者向けのソリューションが多く出展されていました。

日本からは、商用環境移行前にモデルのテストなどを自動的に行う、AIエンジニア向けのAIを提供するTeammatelyが唯一出展・登壇をし、AIエンジニアへの利用促進を行いました。彼らはシードステージにも関わらず、プロダクト需要が日本よりも欧米のほうが高いことを認識し、出展を決めたといいます。Go Globalの文脈で、同社の今後の展開にも注目していきたいです。

関連記事

海外トレンドレポートの記事

すべての記事を見る記事一覧を見る

Contactお問い合わせ

掲載記事および、
KDDI Open Innovation Program
に関する お問い合わせはこちらを
ご覧ください。