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2024年11月25日

大型テックカンファレンスTechCrunch Disrupt 2024ーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。今回は、10/28~10/30にアメリカ・サンフランシスコにて開催された大型テックカンファレンスTechCrunch Disrupt 2024(以下TechCrunch Disrupt)の参加レポートをお届けいたします。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

TechCrunch Disrupt概要

サンフランシスコにて開催される著名なテックカンファレンスで、テック業界では最も注目されるイベントの一つです。主な参加者は、AIをはじめフィンテック、SaaSなどあらゆる領域で活躍する先進的なスタートアップや投資家、イノベーティブな大企業のリーダー陣であり、参加者のうち48%がスタートアップです。資金調達や事業連携を目的としたネットワーキングやビジネスのアピールをする場として活用されます。

カンファレンスは業界で有名なスピーカーによるセッション、イベントの目玉となるスタートアップピッチのStartup Battlefield 200、ネットワーキング、展示ブースで構成されており、今年は8つのIndustry Stageが設けられ、各業界に特化したプログラムが提供されることになりました。注目の8つの業界は以下の通りです。

・AI Stage
・Builders Stage
・Disrupt Stage
・Fintech Stage
・SaaS Stage
・Space Stage
・Breakout Sessions
・Roundtable Sessions

Startup Battlefield 200

本イベントの目玉イベントであるStartup Battlefield 200では、AI、ヘルスケア、フィンテック、サステナビリティなど様々な領域から選出されたトップ200社が3日間をかけてピッチで競い合い、勝ち残った5社がファイナルステージで熱いプレゼンを行いました。

審査基準として、社会的、財政的、環境的に革新的な影響をもたらしうる可能性を重視しているとのことです。全体を通して、地域性や性別、バックグラウンドなどの観点で、起業家のダイバーシティを意識した選出となっており、優勝企業には$10万ドルが贈られました!

Startup Battlefield 200の審査員

  1. Salva Health(優勝企業)
    乳がん診断が可能な携帯型のハードウェアおよび乳がんリスクを予測できるAIモデルを開発。先進国では一般的なマンモグラフィーやそれに類する診断ツールが使えないLatamを中心に提供予定であり、コロンビアでの医療認可を間もなく受ける予定。

  2. geCKo Materials(準優勝企業)
    超強力なドライ接着剤の開発。ヤモリの足の吸盤から発想を得ており、数年間維持できる強力な接着力にも関わらず簡単に跡を残さず貼ったり剥がしたりすることができる。ロボットやドローンなどへの活用が可能。

  3. Luna
    GenZの女性向けのウェルネスアプリ。自分の健康とウェルネスについてAIに気軽に質問し、回答を得ることができる。また、気分、肌の状態をトラッキングすることも可能。

  4. MabLab
    危険な添加物5種類を数分で検出する検査キットを開発。試験紙を液体に浸し、数分で検出が可能。自治体やイベント主催者を通じた事業拡大を予定。ハーバード大学などと共同研究を実施。

  5. Allie Systems
    新興市場のインダストリー4.0に焦点を当て、オペレーション分析と保守作業の生産性を向上により、地元の製造業者の価値の最大化を目指すB2B向けのAIサービスを開発するメキシコシティのスタートアップ。

  6. Stitch3D
    大規模な 3D ファイルの表示、共有、操作、管理ができるブラウザベースのプラットフォーム。元陸軍の軍人による起業で、自身が海軍の 3D モデリング システムの改善に協力していた際に思いついたアイデア。

優勝企業Salva Healthの表彰の様子

日本スタートアップの存在感と出展企業

JETROが本イベントのゴールドスポンサーかつオフィシャルパートナーとなっており、日本から海外展開志向の強い10社を連れて出展を行いました。出展した企業は以下の10社です。

展示の様子

  1. Final Aim
    AIを活用したプロダクトデザイン&IPの管理プラットフォームを展開。図面作成ソフトウェアを提供するAutodeskと連携し、YAMAHA、Panasonic、Nikonが初期顧客となっている。

  2. MEMORY LAB
    企業の新規事業・研究開発を加速するDeep Techリサーチ「Memory AI」を提供。企業の新規事業・研究開発の際に必要な技術情報収集・分析を効率化し、企業の研究開発を加速する研究情報探索エンジンを搭載した調査サービス。

  3. Newond
    レイオフ時のバックオフィス業務を支援する「Newond」を提供。企業のレイオフの規模によってToDoやスケジュール、各州や国ごとに応じた契約書の作成やレイオフされた従業員の再就職支援までを一気通貫で行う。

  4. JITERA
    エンジニアの工数を削減するソフトウェア開発プラットフォームを展開。ソフトウェア開発のプロセスを自動化するプラットフォーム「JITERA」の提供。

  5. Qlay
    グローバルにエンジニアを採用できるSaaSプラットフォームを展開。AIを活用し、面接時にリアルタイムでのコーディングテストを可能とする。既に4000人以上のエンジニアが掲載されている。

    Qlayのサービスイメージ

  6. Tetra Tokyo
    ブランド向けのAI搭載キャッチコピー自動生成ツールを展開。33個の質問に答えるだけでAIが自動で多言語のキャッチコピーを提案する。ギグワーカーによる事前レビューも提供。

  7. Mirror Mii
    AIセールスアシスタントを提供。正確な提案とUXの改善により、コンバージョンレートが10~30%向上する。同社のAPIをインストールするだけで簡単に導入可能。

  8. 3rdBrain
    AIを活用したインダストリーリサーチャー向けのAIコンサルティングサービスを提供。調査にかかる時間や費用を大幅に改善。将来的には、B向けの意思決定Co-pilotを開発予定。
      

  9. Blanc AI
    電話での採用面接向けのリアルタイム音声AIを提供。現在4社のパイロットカスタマーを獲得。
      

  10. CUZEN MATCHA
    オーガニック茶葉のみを厳選したイノベーティブな抹茶抽出システムを開発。CEOは20年以上サントリーに勤めた実績を持つ。

    CUZEN MATCHAのサービスイメージ

最後に

展示ブースやセッションはやはりAIをテーマにした内容が多く見られたほか、少なくとも本イベントの出席者である起業家・投資家らの間では全体的にAIに対して期待感を持つポジティブ派が圧倒的に多い印象を受けました。

またヘルスケア、宇宙、HR、フィンテックなどあらゆる領域においてバーティカルなAIプロダクトを開発する企業の増加が目立っており、展示ブースでも「○○.ai」などいったAIというワードを入れるスタートアップや、「AI-powered」を謳い文句とする企業が非常に多かったです。スタートアップとも多く面会できましたが、アメリカだけでなくアジアからアフリカまで非常に地域多様性があるのが本イベントの特徴で、日本からの出席者も年々増えているような印象を受けました。

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