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2025年04月24日

AI作曲で世界を変えるSOUNDRAW、楠太吾CEOが語る海外戦略とクリエイターファーストの哲学

SOUNDRAW
楠 太吾
CEO

2020年の創業から急速に成長を遂げるAI作曲サービス「SOUNDRAW」。売上の8割が海外、特にアメリカを中心に展開し、コンテンツクリエイター向け、アーティスト向け、そしてAPI提供と幅広い事業を展開しています。


創業者であり代表取締役の楠太吾氏に、独自の技術、グローバル市場での成功の秘訣、そしてAI時代におけるクリエイティビティの未来について語っていただきました。


著作権問題を解決する独自AI技術

サービスイメージ

SOUNDRAW(サウンドロー)は、日本発のAI作曲サービスです。ユーザーが指定したムード、ジャンル、テンポ、楽器などの要素に基づいて、AIがオリジナルの楽曲を自動生成します。生成された楽曲は、曲の長さや構成、使用する楽器、テンポなどを自由にカスタマイズでき、動画制作や広告、YouTubeなどのコンテンツに適したオリジナルの著作権フリーの楽曲を作成することが可能です。

SOUNDRAWは、音楽の知識やスキルがなくても、わずか数秒で複数の楽曲を生成できるため、クリエイターやアーティストの創造的な活動をサポートするツールとして注目されています。

SOUNDRAWが他社と一線を画す最大の特徴は、その独自の技術にあります。「弊社では、学習用のトレーニングデータを全て社内で制作したものだけを使用しています。これは非常に重要な差別化ポイント」と楠氏は語ります。

楠氏によれば、海外の競合他社の多くは別の汎用モデルを採用しており、大量の学習データが必要なため、他社の楽曲データを無断で使用せざるを得ない状況に陥っているといいます。結果「大手レーベルから訴訟を受けるといった問題が発生している」という課題もあるそうです。

一方、SOUNDRAWでは社内で著作権を保持しているコンテンツのみを使用しているため、著作権侵害のリスクが極めて低いという強みがあります。この著作権面での優位性が「企業向けビジネスも展開しやすく、一般ユーザーにも安心して利用いただける環境を提供できる」という事業拡大の土台となっています。

SOUNDRAWのAI開発は2018年から始まっており、一つひとつのケースについて繰り返しテストを行い、特定の学習データが生み出す結果を検証することで、現在の形へと進化させていきました。

社内の作曲家チームが作り出す楽曲データがAI学習の基盤となり、技術的な革新性と著作権の安全性を両立させたサービスが実現しています。

Day1からグローバル

サービスイメージ

彼は会社設立当初から明確なビジョンを持っていました。

グローバル市場で通用するプロダクトを作りたいという思いがありました。そこに大きな魅力を感じていましたので、創業当初からグローバル展開を目標として掲げてきました。

楠氏

しかし、その道のりは平坦ではありません。日本発のスタートアップがグローバル展開を目指すことに懐疑的な反応を示す投資家も多く、資金調達の面でも苦労したそうです。

しかしそこを乗り越え、現在同社の売上の8割は海外からのものになっているそうです。
SOUNDRAWが急速にグローバル展開を成功させた大きな要因の一つが、海外人材の獲得です。「日本のスタートアップが海外でビジネスを展開する際、最も重要なサポートとなるのは人材のマッチング」と楠氏は指摘します。

SOUNDRAWでは、国内の開発チームにもヨーロッパ出身のエンジニアが在籍しています。組織をグローバル化させる効果について楠氏は「外国籍のエンジニアと協働することで、プロダクト開発の感覚も自然と海外市場向けになり、英語でのコミュニケーションも円滑に行える環境が整う」とそのメリットを語ります。

SOUNDRAWの人材採用は主に紹介経由で行われているそうですが、当初から会社のウェブサイトを英語で作成し、LinkedInも積極的に活用した結果、ヨーロッパからのエンジニアがチームに加わり、そこからの人的ネットワークで採用の輪が広がっていったそうです。

SNSで届くメッセージやDMは、一見怪しく見えるものでも、丁寧に対応するよう心がけています。そうしたコミュニケーションから意外なチャンスが生まれることがあります。

楠氏

ニューヨークオフィスには現在、マーケティングとビジネス開発を担当するメンバーが在籍しており、米国市場からヨーロッパやアジアへの展開をサポートする役割を担っています。

クリエイターファーストのAIビジョン

SOUNDRAWは創業から5年を経て、現在では三つのビジネス領域を確立しています。

一つ目の柱は、動画クリエイターやポッドキャスト制作者などのコンテンツクリエイター向けサービスです。

動画クリエイターが著作権フリーの背景音楽を必要とする場合や、ポッドキャスト制作者が番組用の音楽を探している場合など、クリエイティブ活動に音楽が必要なユーザーに向けたサービスを提供しています。

楠氏

二つ目の柱は、音楽アーティスト向けのサービスです。歌唱力はあっても自身で作曲するスキルを持たないアーティストに向けて、希望するトラックを簡単に生成し、そこに自分のボーカルを載せるだけで楽曲をリリースできる環境を提供しています。

そして三つ目の柱は、SOUNDRAWの技術をAPI形式で他社のアプリケーションに組み込むサービスです。

こうした事業を通じて楠氏が最も大切にしているのは、AI技術とクリエイティビティの関係性についての明確なビジョンです。

当社が掲げるビジョンは、AIとクリエイターが対立するのではなく、AIがクリエイターをサポートする関係性の構築です。全自動で音楽が生成される技術自体は素晴らしいものですが、そこに人間のクリエイティビティが入る余地、人間らしさを残すことが重要だと考えています。

楠氏

ダンサーとして全国選手権で優勝した経歴を持ち、ウェアラブル音楽デバイスの開発販売で成功を収めた楠氏。

その多彩な経験から生まれたSOUNDRAWは、AIと音楽とクリエイターの新たな関係性を世界に提示する挑戦者として、これからも革新を続けていくのではないでしょうか。

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