1. TOP
  2. インタビュー
  3. 「smash.」とは何者か:KDDIとの共創が加速した意外な裏側 - KDDI 繁田光平氏 Vol.2
  • インタビュー

2020年10月27日

「smash.」とは何者か:KDDIとの共創が加速した意外な裏側 - KDDI 繁田光平氏 Vol.2

SHOWROOM株式会社
前田 裕二
代表取締役社長
KDDI株式会社
繁田 光平
パーソナル事業本部 サービス統括本部 5G・xRサービス戦略部長

前回のSHOWROOM創業者で代表取締役の前田裕二さん引き続いて、バーティカルシアターアプリ「smash.」のキーマンインタビューをお届けします。


今月22日から本格的な配信を開始した「smash.」は、オリジナルコンテンツの「Hey! Say! JUMP」が提供する縦型フォーマットのミュージックビデオだけでなく、作品を直接つまんでシェアできる「PICK」機能を使ったインタラクティブな体験にも挑戦するなど、5G時代を代表するプラットフォームを目指しています。


映画やテレビなど、横型スクリーンというフォーマットを「当たり前」と考えてしまう今だからこそ、新たな縦型コンテンツに挑戦する両社の共創チャレンジは、意外な理由で加速していくことになりました。2回目となる本稿に登場するのはKDDI側でプロジェクト推進を担った繁田光平さんです。(本文中の太字は質問はMUGENLABO Magazine編集部、回答は繁田氏・敬称略)


みんなの5G

「smash.」はオープンなインターネットサービスでありながら、KDDIとは資本を含めた協業という形でスタートしています。KDDIとしての狙いはどこにあったのでしょうか

繁田:5Gってまだまだ極めて一部の人のものであり、そして何年も先のものだと思われがちなんですよ。でもそれをみなさんのものになるように「みんなの5G」というキーワードを使って、これは目の前で起きているとか、もう友達がみんなそうなっている、といった状況づくりを進めるにあたって(smash.のようなサービスが)一番分かりやすいと思ったんですね。

テッキーまではいかないですが、よりスマホネイティブな人たちが自然に使い始めるイメージです。例えば電車とかでコンテンツを探してスマホを横にしている姿などを見かけますけど、そこをザクザクと縦で見ているような感じというのは、スマホネイティブには非常に当たり前の行動になっています。それに品質が高い画像の方がいいと思うのは当然で、でも一方で本当のプロ作品ってなかったんです。これが一般化すれば、若い子たちを中心に高速でハイパフォーマンスなデバイスを使う姿が見られるようになるんじゃないかなと思ってます。

協業のきっかけ、話の始まりはどこにあったんですか

繁田:私はこれまでauスマートパスの責任者を務めたりと、サービスをゼロから作るようなコンテンツ畑を長く歩んできました。また、現在、5Gサービスの責任者もしているのでお話をさせていただいた、というのが始まりです。前田(裕二氏、SHOWROOM代表取締役)さんがSHOWROOMの次にこういうことをしてみたいというお話を受けてですね、これは5G時代をある意味象徴するようなサービスになり得るんじゃないかと。

あとこの話のきっかけとなった中馬(和彦氏・KDDI 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長)もそうなんですが、auっていうブランドで働いていると、自然とマイナスをプラスマイナスゼロにするような、なんでも何かの付加価値を付けて面白くしようよ、みたいな発想をするようになるんです。常に「オモロイ方をやろう」とする感じで、そういったものが自然と出てくるようになってるんですね。どっちって言われた瞬間に面白い方を選ぶっていうちょっと癖みたいなものです。

これが多分、中馬からも出てたんでしょうし、僕からも出ていたでしょうし、もっと言ってしまうとLISMOの生みの親である社長の髙橋(誠氏)も一発でそのシンパシーを感じていたみたいでした。で、やりましょう、と。そういった意味では前田さんのその深いエンタメ愛に対して、話しやすかったんじゃないかな、なんていう風に思いますね。

意外な協業理由

一方で、SHOWROOM自体、かなり人気のサービスで、彼らとしても協業については選択肢があったように思います

繁田:そうですね、協業だけで言えば色々な選択肢があったはずですし、確かに資本を入れてもらうとなると通信会社以外にもあったと思うんです。ただ、前田さんとのお話の中でSHOWROOMもsmash.も、前田さんがエンターテインメント事業をやるにあたってとても大切なことがあると仰っておられたんですね。

それがちゃんと低レイテンシーで安定した配信をすることにある、というところだったんです。

SHOWROOMのプラットフォームも遅延がほぼなくなっていて、先日、とあるライブを配信されていたんですが、アーティストさんが普通にコールアンドレスポンスをやってました。インターネットサービスで遅延や途中で見れなくなる、画質が悪くなるようなことがあれば、やはり熱狂って生み出しにくい。

5Gのスピードや安定に加えて「通信会社グレード」っていうものをちゃんと自分たちでもできるようになれば、他のプラットフォームと異なる、絶対的な何かになれるのではないだろうか、ということは考えられてるようです。そういう考え方から色々な選択肢の中で通信会社が選択肢に入ってきた、ということを聞いています。

通常、KDDIとの共創事例ではユーザーベースだったり、ビジネス的な視点が多い気がしますが、通信のコア技術の部分に興味を持っていたというのは意外でした

繁田:SHOWROOMのリードエンジニアさんってやっぱり低遅延にこだわってますね。実質、肉眼で見る遅延がやっぱり30秒ぐらいあるとコールアンドレスポンスはできない。見ているみんなノってる〜?ってやって「シーン」となるわけですからね。この辺りは前田さんのアーティストとしての原体験にあるようで、お客さんの前で歌い、お客さんが反応してそれに合わせて曲を選んだりしてたと仰っていました。

別の5Gのプロジェクトで名古屋グランパスさんとの例だと、スタジアムにたくさん人が集まると通信が繋がりにくくなるからこれを5Gで改善したりしているんですが、改めて前田さんと会話することで、前衛的なネットテクノロジーを手掛けてるネット企業に逆に、通信技術の重要性を示されたわけです。僕らって意外と大事なんだな、みたいな気付きですよね。

そういう意味でも一緒にやりたいと思いました。

技術チームとのコラボレーションはもう始まっているのでしょうか

繁田:検討に入っている段階です。僕の中の頭のイメージですけどまあよく「MEC(※)」って言葉が使われたりしますが、そういう風になっていけばこういったサービスが本当ににサクサク動くようになっていくと思います。本当に(前田さんたちは)インターネットレイヤーの方々なんですけど、通信レイヤーである僕らとエンド・ツー・エンドでパフォーマンスや品質を上げていくっていうのは絶対一緒にやっていこう、ということで大盛り上がりしています。

※モバイルエッジコンピューティング:クラウドからのコンテンツ提供を一部、ユーザー端末により近いエッジ側に持たせることで、コンテンツの配信処理速度を向上させる技法(次回につづく)

関連記事

インタビューの記事

すべての記事を見る記事一覧を見る

Contactお問い合わせ

掲載記事および、
KDDI Open Innovation Program
に関する お問い合わせはこちらを
ご覧ください。