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2025年05月01日

3カ月でキッザニアAIコンシェルジュを公開したParame、秘密は「セミオーダーメイド」にあり

株式会社Parame
岡野 亮義
代表取締役

生成AI開発エンジン「Nagisa AI Engine」を提供するParameは、企業の生成AIシステム導入を迅速かつ柔軟に支援するスタートアップです。

既製品とフルスクラッチ開発の良さを兼ね備えた「セミオーダーメイド」のアプローチで、多くの大手企業とのAI実装プロジェクトを成功させています。

最新事例のキッザニア東京での多言語AIコンシェルジュ導入を通して、同社の革新的なアプローチと今後の展望をParame代表取締役の岡野亮義氏に伺いました。


セミオーダーメイドの強み──開発スピードと柔軟性を両立

Parameが提供する生成AI開発エンジン「Nagisa AI Engine」

岡野氏がまず強調するのは、同社のサービスの最大の特徴である「セミオーダーメイド」というアプローチです。生成AI開発エンジン「Nagisa AI Engine」を核に、企業のニーズに合わせた生成AI活用を実現する同社のビジネスモデルは、既製品とフルスクラッチ開発の間を埋める新たな選択肢として注目を集めています。

Nagisa AI Engineは簡単に言うと、生成AIアプリケーションを手軽に作れる開発キットなんです。このエンジンを土台にして、お客様の会社ごとに合わせたAIアプリケーションをオーダーメイド的に一緒に作っていくという形で提供しています。

岡野氏

セミオーダーメイドの最大の利点は、開発効率の大幅な向上です。

Nagisa AI Engineの既存パッケージや標準モジュールを使えるので、開発がすごく早く進むというのが大きな特徴です。実際最近手がけたキッザニア東京向けのAIコンシェルジュ開発では、ゼロから作ると半年以上かかるような大きなプロジェクトを、わずか3カ月でリリースまで完成させることができました。

岡野氏

開発期間の短縮はコスト面でも優位性をもたらします。Nagisa AI Engineを用いたアプリケーション開発では、一般的な汎用ウェブサービス(SaaS)よりも個別にカスタマイズできる柔軟性を担保しつつ、フルスクラッチ開発するよりも低コスト・短納期でのリリースを実現しています。

開発エンジンの特徴として「高度な対話シナリオ」「簡単な精度チューニング」「自社情報の連携学習」などの機能を備えており、企業の既存システム・データベースとの連携や、PDF、文書、パワーポイントなどの社内資料を学習させることで、各企業の課題や状況に最適化したAIモデルや対話シナリオ構築が可能になります。

キッザニア東京での実証事例──AIコンシェルジュが来場体験を向上

キッザニア東京で実証実験が開始された「キッザニアAIコンシェルジュ」

Parameの「セミオーダーメイド」の強みを最も端的に示す最新事例が、KCJ GROUPが運営するキッザニア東京での生成AIコンシェルジュサービスの実証実験です。岡野氏によれば、このプロジェクトはキッザニア側の明確な課題意識から始まりました。
「キッザニア東京では、お客さんが入場前に並んでいる時間や、入場後に施設内で過ごす時間の体験をもっと良くしたいという思いがあった」と岡野氏は語ります。特に、子どもたちが職業体験やアクティビティをしていない時間帯の体験価値をどうやって高めるかが課題だったそうです。
このAIコンシェルジュは、様々な場面での来場者サポートを担います。

入場前に列に並んでいる間に、スマホで気軽にAIコンシェルジュと会話できるんです。施設の使い方を質問したり、おすすめのアクティビティを教えてもらったりと、いろんな情報をその場で得られるようになっています。

岡野氏

入場後もAIコンシェルジュが、空いているアクティビティを教えてくれるなど、施設内での円滑な移動をサポートします。
さらにこのAIコンシェルジュの特徴的な機能の一つが多言語対応です。

日本語はもちろん、英語や中国語にも対応しているので、どんな年齢やどの国から来た人でも使えるようになっています。

岡野氏

特に、外国語が話せるスタッフの数が限られているという現場の課題解決にも大きく貢献しているようです。
プロジェクトの背景には、施設側の人手不足という課題もありました。

実はキッザニアさんでは、やりたいことはたくさんあるんですが、現場のスタッフさんたちは既に手いっぱいの状態なんです。そこで、もっと人手があれば提供できるサービスを、AIコンシェルジュで解決できないかと考えました。

岡野氏

取材時点ではリリースから数日という段階でしたが、すでに一定の手応えを得ているようです。

利用者の皆さんが「こんなアクティビティはある?」とか「これはどうなってるの?」といった質問をAIコンシェルジュに気軽にしてくれているのがログから見えてきています。

岡野氏

また、キッザニア東京のスタッフさんからも「思ったよりずっと精度が高くて驚いた」「こんなにちゃんと答えられるんだ」といった、期待以上の評価をいただいていると岡野氏は手応えを語ります。

企業のAI実装を加速

Nagisa AI Engine提供のParame、生成AIを活用した「キッザニアAIコンシェルジュ」の実証実験を共同開始(プレスリリースより)

Parameの事業は、キッザニア案件に留まらず、多くの大手企業との連携実績を積み重ねています。例えばタカラトミーとは昨年に、リカちゃんと一緒に自然に対話できるデジタル対話コンテンツ「Licca Meets(リカ・ミーツ)」の開発協力や、パナソニックグループとキャリア形成支援AIの「AI Career Supporter」の開発等を公表しています。

いろんな企業さんと一緒にプロジェクトを進めていく中で、そこから得られる気づきやノウハウを活かして、私たちの開発エンジン自体も日々進化させています。常にアップデートを重ねているんです。

岡野氏

こうした企業との協業を通じて定期的なアップデートを重ね、「発話の自動監視」機能の精度向上や「AIの生成結果を分析」するダッシュボードの機能強化、さらにはAPI連携先の拡大などが進められているというお話でした。
また最近では、外部の開発会社がNagisa AI Engineを活用してAIアプリケーション開発をするエコシステムとしての取り組みも広がっているそうです。
社内の既存システムやデータベース、Microsoft Teams・Salesforceなどの外部ツールとのAPI連携機能は、このエコシステム拡大を後押しする重要な要素です。岡野氏によれば、これらの連携機能によって、生成AIと既存業務システムとの統合がスムーズに行えるようになり、導入障壁を下げることに成功しているとのことです。
「私たちのエンジンで動くアプリをもっともっと世の中に広めていきたい」と熱く語る岡野氏。

かつてないスピードでAIの社会実装が進む中、技術的な壁を低くし、多くの企業が生成AIのメリットを享受できる環境を整えるParameの挑戦は、AI業界全体の発展に寄与するものになるのではないでしょうか。

KCJ GROUP 株式会社 担当者コメント

KCJ GROUPは、キッザニア東京・甲子園・福岡の3施設を運営しています。私たちの施設では、多くの子どもたちが職業・社会体験を通じて学ぶ環境を提供しており、近年ではインバウンドの増加に伴い、多言語対応や国籍・文化にかかわらず公平に体験いただける環境整備がますます求められています。特に「安全性」や「公平性」を大切にした施設運営を行っている中で、情報提供や案内の仕組みも非常に慎重な設計が必要でした。
その一方で、テーマパーク業界では利便性だけでなく、来場体験そのものに“楽しさ”や“驚き”といったエンターテインメント性が求められます。これまではこうした対応を現場スタッフの創意工夫と接客力に頼っていた面も大きく、運営側の負担も大きな課題となっていました。
今回Parameさんと出会い、岡野社長の熱意と柔らかい人柄に触れながらも、技術力とスピード感には本当に感銘を受けました。特に、Nagisa AI Engineを活用した多言語対応のバーチャルヒューマン型AIコンシェルジュは、当社のように配慮が必要な施設でも安心して導入できる柔軟性と精度を兼ね備えており、実証実験の実施に至りました。
このAIは、エンターテインメント性も高く、来場者の方々との対話を通じて施設利用の満足度を高める可能性を持っています。Parameさんとの今回の取り組みは、今後の施設運営の新たな選択肢として、大きな一歩となったと感じています。

KCJ GROUP 株式会社 経営企画部 小野寺弘幸氏

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