- インタビュー
2025年04月07日
Oyraa コチュ氏が語る「AI+人」で広がる通訳テックの未来とグローバル戦略

- 株式会社Oyraa
コチュ・オヤ - 代表取締役社長
トルコ出身で20歳から日本に在住するコチュ・オヤ氏が率いるOyraa(オイラ)は、リアルタイムで専門通訳者とつながるアプリを開発しています。
153言語に対応し、72の専門分野をカバーする3,000人以上のプロ通訳者ネットワークを構築。 単なる言語変換ではなく、文化的背景や業界知識を含めた「人間味のあるコミュニケーション」を提供する同社の戦略と、蓄積された通訳データを活用した次世代AI開発の取り組みに迫ります。
アプリ一つで世界153言語にアクセス
「Oyraa」サービスイメージ
アプリ一つで世界153言語にアクセス スマートフォンアプリを通じて、いつでもどこでも必要な時に通訳者とつながることができるサービス、それがOyraaです。開発したのはOyraaの代表取締役社長、コチュ・オヤ氏。2017年3月に同社をスタートアップさせています。
Oyraaアプリの最大の特徴は、3,000人以上のプロフェッショナルな通訳者がリアルタイムで対応する即時性です。英語や中国語、フランス語をはじめとする153言語に対応し、ユーザーはアプリ上で希望の言語と専門分野を選ぶだけで、適切な通訳者とマッチングされます。最初は電話による遠隔通訳のみだったサービスも、現在ではZoomなどのオンラインミーティングの通訳や、予約システムを通じた現場通訳まで幅広く展開しています。
特筆すべきは、72もの専門分野に対応していることです。医療、法律、不動産、金融など、専門性の高い領域でも、業界を熟知した通訳者が対応します。各通訳者のプロフィールには経歴や専門分野、過去の顧客からのレビューが表示され、ユーザーは自分のニーズに合った通訳者を選ぶことができる仕組みになっています。コチュ氏が強調するのは、AI翻訳ツールとの決定的な違いです。
汎用的な翻訳・通訳ツールと異なり、我々のサービスはプロの通訳者による実践的なコミュニケーションを提供しています。
コチュ氏
通訳とは単なる言葉の変換ではなく、その背景にある文化や業界特有のオペレーションも含めたコミュニケーションだといいます。コチュ氏はネパール人向けの不動産賃貸での事例を挙げます。
例えばネパールの家ではコンロが壊れたとき、管理会社に連絡するのではなく、自分で勝手に新しいものを買って設置するという習慣があります。ネパール人の通訳者がいることで、人間の通訳者はこうした文化的な違いを理解しているので、プラスアルファで説明したり、特定の点を強調したりできるのです。
コチュ氏
Oyraaのサービス内容は多岐にわたります。同社は通訳を介して国内外の相手と電話でつながる独自の三者通話システムを提供するほか、オンライン会議向けの通訳者予約機能も実装しています。また、通訳者との直接の音声・ビデオ通話により、ビジネスだけでなく旅行先での病院対応やトラブル解決などもサポートも実施し、チャット機能を通じて会議内容の事前相談や短文の翻訳・確認が可能なほか、海外在住の通訳者から現地情報も得られるそうです。
トルコ人CEOが実践するグローバル展開戦略
コチュ氏はトルコ出身で、20歳までトルコで過ごし、その後日本に移住しました。「20歳から日本に来て、人生の半分ぐらいは日本」と語るコチュ氏。複数の文化を深く理解するこのバックグラウンドが、言語の壁を越えるビジネスの原点になっています。多くの日本企業が国内での成功を収めた後に海外進出を図る中、Oyraaはスタート時点からグローバル展開を視野に入れていました。
もう8年前から日本で登記して日本で事業を作ってきているんですけれども、そのときから全ての国のApp StoreとGoogle Playにアプリを公開して事業展開をしてきました。
コチュ氏
サービス開始時の戦略も独特です。通訳アプリを機能させるには、まず通訳者の確保が不可欠でした。「通訳者がいないとユーザーが来ない」。この課題に対し、Oyraaは大胆な一手を打ちます。アプリローンチタイミングに合わせて、世界で最も大きな通訳者カンファレンス「ATA Annual Conference」へブースを出展し、通訳者をリクルーティングしたそうです。このように初めから日本国内に限定せず、世界を見据えた動きをしていたことが、現在のグローバル展開の基盤となっています。
「実は、ユーザーの4割が海外在住です」と語るコチュ氏。類似サービスがないことから海外でオーガニックグロースしてきているそうです。
サービスの特性もあってか口コミが強いという同サービスですが、特に「電話通訳」という独自性と「三者通話」という機能性が、海外での口コミを生み出しているといいます。
例えば、フランス在住のイギリス人なども使って便利だと思うと、口コミとかで友達に教えたり、自分のコミュニティに教えたりします。
コチュ氏
通訳ビジネスの未来 人間とAIの「いいとこ取り」
「Oyraa」のサービス事例
Oyraaは現在、人間による通訳サービスで蓄積してきたデータを活用し、次世代の通訳AI開発に取り組んでいます。現在は蓄積された人間の通訳データを活用して、AIによるスマート通訳体験の開発も進めていると明かしてくれました。ChatGPTの登場により、汎用的な翻訳や通訳はより身近になりました。一方、現在の大規模言語モデル(LLM)が抱える大きな課題の一つは、希少言語への対応の弱さです。
パフォーマンスがまだ非常に悪いく、ネパール語やミャンマー語、インドネシア語などは使い物になりません。
コチュ氏
Oyraaは8年間の事業展開を通じて、これらの希少言語の通訳者も多数獲得してきた強みがあります。このデータを活用することで、汎用AIでは十分にカバーできない言語への対応力を高められる可能性があります。
一方、人間の通訳者によるサービスには「アウトプットの高クオリティのばらつき」という問題も存在します。同じ資格を持つ通訳者でも、その日のコンディションや相性によってパフォーマンスが変わることは避けられません。また予算の問題もあり、高品質な通訳サービスをすべてのニーズに提供することには経済的な限界があります。
こうした課題を解決するのがAIと人間のハイブリッド対応です。人間とAIのいいとこ取りの通訳を作っていくことで、これまで言語の障壁によって制限されていたコミュニケーションの可能性を広げることが、Oyraaの次なる挑戦です。
8年間に渡って通訳者と利用者をつなぎ、言葉の壁を超えるコミュニケーションを支援してきた経験から生まれる次世代AIが、私たちのグローバルなコミュニケーションをどう変えていくのか、今後の展開が注目されます。
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