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2024年09月18日

【徹底解説】量子コンピュータ界の革命児!OptQCが記者会見で語った一部始終をお届け!

東京大学の古澤・遠藤研究室からスピンアウトしたスタートアップOptQC株式会社(以下OptQC)の記者会見が、9月17日にOptQC本社で開かれました。量子コンピュータの世界的権威であり、同社の取締役である古澤 明氏も登壇し、これからのOptQCのビジョンや量子コンピュータのこれからについて語りました。本記事では、先日行われた記者会見の内容をお伝えします。


OptQCを起業した背景について

開会挨拶後、最初の登壇者としてOptQCの代表取締役である高瀬 寛CEO(以下高瀬氏)が登壇し、同社のミッションとチャレンジについて語りました。

高瀬氏は現代の情報処理技術について、古典コンピュータ1台の情報処理能力を高めるにはクロック周波数の問題で難しく、そのようなコンピュータを並列させて情報処理能力を高めようとする現在のスーパーコンピュータで用いられている方法ではエネルギーを大量に消費するという問題で難しいと指摘しました。

そのような情報処理の問題に対して、OptQCは「情報処理の媒体を、電気から光にシフトすることで、クロック周波数を高速化すること」と、「情報処理の規則を、古典コンピュータから量子コンピュータにシフトすることで、計算ステップ数を削減すること」の2つのシフトによって、情報処理の問題を解決しようとしています。

さらに、高瀬氏は起業の背景について、光量子コンピュータの開発における基礎技術が揃ったことや量子コンピュータの市場性にも触れながら、ディープテックスタートアップに対する期待に応えたいという個人の想いを語り、「GoogleやIBMといった海外のビッグテックが競合となってくるが、光方式特有のスケーラビリティや光通信との融和性から、少数精鋭のスタートアップでも勝負になる」と自信をのぞかせました。

世界でも戦える量子コンピュータ業界の天才たちがOptQCを率いる
Image credit:OptQC

OptQCの競合優位性について

高瀬氏は起業背景に続いて、OptQCが開発を目指す光量子コンピュータと他方式の量子コンピュータを比較しながら、同社の競合優位性について語りました。

他方式の量子コンピュータについては、超電導回路、電子、原子を用いて、複数の量子ビットで量子アナログ情報や論理量子ビットを表現する一方で、光量子コンピュータについては、光量子コンピュータで用いる光パルス自体が、量子アナログ情報や論理量子ビットを表現できると指摘しました。

そのうえで、光量子コンピュータの現在地として、基礎技術が確立されたことで、実機を製造できるようになったと述べ、光汎用機としては世界中で古澤研とOptQCしか製造できないと語りました。

また、スケーラビリティの観点でも光量子コンピュータと他方式の量子コンピュータを比較し、他方式の量子コンピュータについては、今後量子ビット数が増えていった際に、並列化する必要があるためスケーラビリティが問題になるのに対し、光量子コンピュータは、量子ビットの数が増えたとしても、コンポーネントの数は変わらず、プロセッサの複雑性や制御性も変わらないため、スケーラビリティが問題にならないと指摘しました。

さらに、実機の製造については、光通信で用いられているような汎用的なものを使えばよいため、その点においても他方式よりも優れていると述べました。

光量子コンピュータは、以上のような他方式よりも優れている点から、少人数で、安く、数多く製造できるため、競争力を担保できると締めくくりました。

光量子コンピュータは手作業で製造していく
Image credit:OptQC

OptQCの事業概要について

高瀬氏はOptQCの事業概要とこれからのビジョンについても語りました。

まずは、1号機を2025年中に産総研のG-QuATにて製造することを明言し、スペックとしては100量子アナログ入力・100MHzクロック周波数を想定していると述べました。

2028年ごろの完成を目指す2号機に関しては高速性に特化したものを、2029年ごろの完成を目指す3号機は量子性に特化したものを製造していくという将来的なロードマップについても公開されました。

実機の製造に加えて、OptQCを中心としたメンバーシップの構築にも意欲的な姿勢を示し、実用的な量子コンピュータの実現に向けて、長期的な視点で協力してもらえるような企業への協力を仰ぎました。

質疑応答

記者からの質問に答える古澤氏

会見の最後には、記者からの質疑応答の時間も用意されました。以下に、主な質問について記載いたします。
Q1.1号機の性能について分かりやすく教えていただけないでしょうか?

A1.現時点では、どこまでのスペックが出せるかはやってみないと分からない部分はかなり多い。アナログ入力の部分がうまく活用できれば、それなりのスペックになるのではないかと考えている。本命としては、2号機・3号機である。(高瀬氏)

単純な比較は難しいが、大まかなイメージとしては、1000量子ビット相当で、世の中に出ている量子ビット方式の量子コンピュータの最高精度と同等のものであると考えてくれればよい。(古澤氏)

Q2.資金調達においてどれくらいの引き合いがあるのでしょうか?

A2.20社近くのVCから引き合いがある。2年後に想定しているシリーズAでも、投資家から評価されるような事業成長を続けたい。(高瀬氏)

Q3.海外からの資金調達には、NatureやScienceといった海外の有名誌に取り上げられることも重要かと思われるが、その点いかがお考えでしょうか?

A3.Natureから我々が良い扱いを受けてはいないが、それはむしろチャンスであると考えている。Natureはあくまで商業誌であり、人気なものが取り上げられるだけの話である。実際に生き残るのは本当に良いものであり、その意味で言うとScienceは真に良いものを取り上げており、Scienceから評価されていることは誇りに思っている。(古澤氏)

Q4.新しい会社(OptQC)で行われる開発とアカデミアで行われる研究のそれぞれの目標はどのようなものでしょうか?

A4.会社の目標としては、システムとしてちゃんと動くものを作るということが目標になる。(高瀬氏)

アカデミアの求めることは、税金を使って研究予算をつけるという形で投資したリターンとして、新しいテクノロジーを生み出して、そのテクノロジーを活用する日本の企業として儲けを作り、税金を納めることであると考えている。そのため、基礎研究で終わらずにしっかりアウトプットを出していくことを目指したい。(古澤氏)

最後に

日本の量子コンピュータ界を背負って立つOptQCの記者会見でしたが、雰囲気は終始和やかな雰囲気が漂っており、会見の最後には古澤氏から国立大学の教授としての苦労話やアメリカの有名大学から給料が10倍になるようなオファーが届いていたなどの、日本の大学の資金面の苦労が語られました。

これからもOptQCのような日本の大学発のスタートアップが誕生するためには、スタートアップだけではなく大学への資金面でのサポートも必要であると感じました。

そのような苦しい状況の中、起業した東京大学発スタートアップのOptQCのこれからの成長には目が離せませんね!

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