- インタビュー
2024年12月03日
大手企業3社に学ぶ、スタートアップ連携の実践術 〜小田急電鉄の段階的アプローチ〜
- 小田急電鉄
和田 正輝 - デジタル事業創造部
15日に開催したKDDI ∞ Labo 全体会では、企業内で新規事業に取り組む方々にその事例を共有いただくセッションを実施しました。登壇したのはエクシングの伊藤秀樹氏、小田急電鉄の和田正輝氏、セイノーホールディングスの髙橋一馬氏の3名。各社の特色ある取り組みと、連携を成功に導くための具体的なアプローチ方法、社内展開のノウハウまでを詳しく解説いただきました。
今回は、小田急電鉄の和田正輝氏が語る、オープンイノベーション戦略についてお届けします。
駅務から企画へ、70社との対話から始まった変革
小田急電鉄 和田正輝氏
小田急電鉄デジタル事業創造部の和田正輝氏は、2009年の中途入社以来、駅務などの現場経験を積んできました。2019年7月、経営戦略部への異動を機に、新規事業立ち上げとスタートアップとのアライアンスを担当することになります。
「社内でなかなか新規事業が立ち上がらないので、中期計画をやりながら新規事業を立ち上げるという部署だった」と和田氏は当時を振り返ります。その後、1人で70社ものスタートアップと対話を重ね、2023年9月にはJR東日本スタートアップ、東急、西武ホールディングスと共に「JTOS」というコンソーシアムを立ち上げました。
さらに同年9月には東京都のスタートアップ支援プロジェクト「TIBCATAPULT」の一環として、JTOSの4社に加えて京王電鉄、京浜急行電鉄を含む7社でTokyo Railway Innovation Partnership(TRIP)を設立し、現在は月に20から30社のスタートアップとの面談を行っています。
「地道な努力」で築く、社内外のコミュニケーション戦略
和田氏の特徴的な取り組みは、事業部との丁寧なコミュニケーションです。「それぞれの事業部の担当キーマンを開拓していって、フラットに社内を歩き回っている」と語る和田氏。
立ち話での雑談を通じて各事業部の困りごとをヒアリングし、タイミングを見計らってスタートアップを紹介する手法を取っているそうです。ポイントは「間を空けること」だと語ります。
このスタートアップを紹介したら(課題解決が)進むかもとその場で思うんですけど、そのときは言わないんです。ちょっと時間を置いて「探してきたよ」って言うんです。
和田氏
スタートアップという異質の存在を事業部と連携して新たな価値を生み出すため、こうした社内コミュニケーションの「空気を読む」ハブとしての役割が存在することを説明してくれました。
空気を読む、という点に関してもうひとつ重要なポイントにカルチャーマッチがあります。和田氏は鉄道業界特有の保守的な文化への対応も工夫があると明かしてくれました。
「鉄道本部だとお付き合いしている企業の多くは大手さん」という環境の中、スタートアップの方々にビジネスカジュアルでの来訪を依頼するなど「社内の人から『普通の人』に見えるようにして、まずは話を聞いてもらう」細やかな配慮を行っているというお話でした。子育て支援やベビーカーシェアリング、商業施設でのポップアップストア展開など、具体的な成果も着実に生まれています。
「本当にすぐできそうなことを大量にやって、会社としてスタートアップと連携する姿勢を示す」と和田氏は語ります。伝統的な企業にスタートアップというカルチャーを取り込む「地道な取り組み」が確実に実を結びつつあります。
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