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2024年10月22日

海外売上急増中「NOT A HOTEL」グローバル戦略の秘訣とは?

NOT A HOTEL株式会社
濱渦 伸次
代表取締役 CEO

日本発のユニークな不動産所有体験を提供するNOT A HOTELが、グローバル市場への展開を加速させています。毎年10泊単位からのシェア購入、資産としての保有が可能という独自の所有形態の不動産開発で注目を集める同社は、今年新たに展開を開始した海外富裕層向けの英語版サイトの開設や、世界的に著名な建築家とのコラボレーションによって、国際的な評価が上昇しています。


創業からわずか4年で累計の契約高が270億円超に達するなか、今期200億円の販売目標のうち、数十億円を海外からの売り上げで占める見込みです。代表の濱渦 伸次氏に、同社のグローバル戦略と日本のスタートアップの可能性について話を伺いました。


想定以上の反響、海外展開「3つのステップ」

ノルウェー設立の建築デザイン事務所 「Snøhetta(スノヘッタ)」が手掛ける「NOT A HOTEL RUSUTSU」

NOT A HOTELの海外展開は3つのステップの戦略に基づいて進められています。濱渦氏は次のように説明しました。

第1ステップは『NOT A HOTEL ABROAD』というサービスで、今年4月からスタートしています。このサービスは、NOT A HOTELの所有者が自身の宿泊権を世界中の提携ホテルの宿泊権と交換できるシステムです。厳選されたラグジュアリーホテル、例えばリッツ・カールトンなどの高級ホテルチェーンと提携しており、所有者に幅広い選択肢を提供しています。

第2ステップは現在取り組んでいる段階で、NOT A HOTELの日本国内の不動産を海外に向けて販売することです。この戦略はすでに成果を上げ始めており、海外からの売り上げが急速に成長しています。

最後の第3ステップは、NOT A HOTELが海外で直接、不動産を開発・運営していくことです。この段階はまだ将来の計画ですが、グローバル展開の最終目標として位置づけています。

濱渦氏

NOT A HOTELのグローバル市場への進出は、英語版サイトの開設を皮切りに本格化しています。濱渦氏によると、この動きは予想を上回る反響を呼んでいるようです。濱渦氏は「去年まで数億円の海外売り上げだったのが、今期は数十億円の売り上げに達する見込み」だと明かします。

特に驚きだったのが、この成果が積極的なマーケティング活動なしに達成されているという事実です。濱渦氏によると、主に口コミとSNSでの情報の拡散が要因とのことで、NOT A HOTELのInstagramの公式アカウントのフォロワーは、昨年のおよそ3万人から現在14万人超へ急増しているそうです。

この急成長の背景には、世界的に有名な建築家とのコラボレーションプロジェクトがあります。


海外展開のフラッグシップ的位置付けとなった「NOT A HOTEL TOKYO」

瀬戸内や北海道のルスツリゾートでの不動産開発には、ビャルケ・インゲルス氏やSnøhetta(スノヘッタ)といった世界的な建築家や建築事務所が参加しています。さらにクリエイティブディレクターのNIGO氏がディレクションを手がける「NOT A HOTEL TOKYO」は、発表後わずか2日間で1,400件もの海外からの問い合わせがあったそうです。
濱渦氏は、こうした反響を

「想定以上だった」と振り返ります。

海外から観光に訪れる先としての魅力など、日本に対する注目が集まってモメンタムが高まっている中、私たちが新しい開発プロジェクトを発表したことが、大きな反響を呼んだ理由ではないでしょうか。

濱渦氏

濱渦氏の説明によると、海外からの需要はアジアの富裕層よりも欧米からの問い合わせが圧倒的に多いそうです。日本での別荘保有率が0.7%である一方、海外、特にアメリカやヨーロッパでは別荘保有率が約7%と高いことや、タイムシェアの文化が根付いていることが、問い合わせの多い要因になっているようです。

同社のこうしたグローバル展開は、人材戦略にも大きな影響を与えています。
現在、NOT A HOTELの建築チームは約30名で構成されており、そのうち数名が海外のメンバーです。彼らはもともと日本在住だったわけではなく、NOT A HOTELで働くために移住してきたそうです。濱渦氏によると「特別なリクルーティング活動をしているわけではなく、優秀な人材が自ら応募してくる」と語りました。

グローバル進出は、海外企業のM&Aを起点に

現段階では、日本をベースとしたビジネス展開に重点を置いているNOT A HOTELですが、濱渦氏はNOT A HOTELの強みが日本のローカル市場にあることを強調します。日本の地の利や、これまで築いてきたネットワークが、他の海外プレイヤーには簡単に真似できない競争優位性を生み出していると考えているそうです。

一方、将来的な海外展開の方向性として、M&A(合併・買収)を通じた展開を検討しています。濱渦氏は次のように説明します。

NOT A HOTELが日本で成功しているのと同じように、海外の市場で一から事業を立ち上げるのは容易ではないと認識しています。
そのため、すでに現地で事業基盤を持つ企業を買収し、そこにNOT A HOTELのビジネスモデルを導入することで、より効率的かつ効果的な海外展開が可能になると考えています。

濱渦氏

濱渦氏によれば、現時点でNOT A HOTELと同様のビジネスを展開したいと考える海外企業から頻繁にアドバイスを求められているそうです。これに対し、将来的にそれらの企業を買収する可能性を視野に入れながら、積極的に情報を共有する姿勢を濱渦氏は見せています。

NOT A HOTELの事例は、日本のスタートアップがグローバル市場で成功するための新たなロードマップを提示しています。
注目すべきは、日本の伝統的な強みを活かしたビジネスのグローバル展開の可能性です。インターネットやテクノロジー企業に偏重せず、日本の食文化やエンターテインメントなど、独自の文化的資産を活用したビジネスにも大きな可能性があることを示しています。

シリコンバレー型のモデルに追随するのではなく、日本独自の強みを活かし、世界市場のニーズに応える革新的なビジネスを生み出すこと。そして、それを支援する投資環境の変革。これらが、今後の日本発グローバル企業の成功の鍵となるでしょう。

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