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2024年09月25日

「セコイア決戦」を経て、海外展開を加速 ー ログラスCEOが明かす、著名海外投資家からの資金調達の裏側

株式会社ログラス
布川 友也
代表取締役CEO

Loglass 経営管理」をはじめとした経営管理領域のSaaSプロダクトを開発・提供するログラスは今年7月、シリーズBラウンドで国内外の投資家からの総額70億円の調達を発表。


そこで共同リード投資家として新たに名を連ねたのが、米国のSequoia Heritageでした。Sequoia Heritageは、言わずと知れた超一流海外VCのSequoia Capitalと同じSequoiaのブランドを冠する、長期運用を目的とした機関投資家です。


日本ではSmartHRに続いて、ログラスが2例目の投資先となりました。MUGENLABO Magazine編集部では、ログラス代表取締役CEOの布川友也氏にインタビューを実施し、Sequoia Heritageからの投資が実現するまでの経緯や、海外投資家との協働において苦労した点、今後の海外展開についてなど、話を伺いました。


Sequoia Heritageから投資を受けられた理由

今年7月に、シリーズBで70億円の調達を発表した

Sequoia Heritageからの投資は、今回のシリーズBラウンドで共同リード投資家を務めたALL STAR SAAS FUNDからの紹介により実現しました。ALL STAR SAAS FUNDはログラスをシードラウンドから支援するVCです。

布川氏によると、投資にあたって高く評価された点は、主に2つあったそうです。

1つは、市場の成長性です。Enterprise Performance Management(EPM)、企業パフォーマンス管理の市場は、グローバルでも年率10%近い成長をしており、日本はさらなる成長段階にあり、市場の年平均成長率が20%を超えています。

もうひとつはチームの構成でした。ファイナンス、テクノロジー、オペレーション、事業開発と、各領域に精通した経営メンバーが揃っており、各種数値が計画通りに推移していたことが評価につながりました。

布川氏

70億円という資金調達の金額は、実は3年前から描いていた計画とほぼ同額だったと布川氏は明かしました。そのため、社内では驚きよりも安堵の反応が強かったといいます。「事業がしっかりグロースしていて、年率100%成長できている」ことが、この投資額の実現につながったと布川氏は分析します。

この大型投資を受けるプロセスには、海外機関投資家との協働における困難も存在したようです。

すべて英語で対応する必要があり、資料作成やQ&A対応、契約書の作成などに多大な労力を要しました。また、為替の大幅な変動や、海外送金に関する銀行とのやり取りなど、テクニカルな面でも苦心があり、とても大変でしたね。

布川氏

海外機関投資家との対話において特筆すべきは、ファクトや数字にもとづいた説明の重要性です。顧客の属性、リードチャネル、コンバージョンレートなどの具体的な数字を示すことが求められ、理路整然と応対するのは極めて難しい作業だったと、布川氏は振り返ります。

全社で戦時モードになり臨んだ「セコイア決戦」

Sequoia Heritageなどの海外投資家からも多額の資金調達を受けた

布川氏は、Sequoia Heritageからの投資を獲得する過程で、会社が直面していた課題と、それを乗り越えるために実施した「セコイア決戦」と呼ばれる取り組みについて語ってくれました。

この投資ラウンドを進行させていた当時、ログラスは売上成長率の停滞という課題に直面していたそうです。計画では四半期ごとに売上を数十パーセント増加させる必要があるところ、同社は2四半期ほど成長率が低下する時期があったそうです。

この状況を打開するために、打ち出されたのが「セコイア決戦」でした。セコイア決戦の核心は、会社全体を「戦時」体制に移行させることでした。この取り組みでは、長期的な成長のための投資や活動を全面的に停止し、短期的な目標達成に全力を注ぐことが求められました。

具体的な施策について、布川氏は次のように話します。

まず、メンバーの日々の行動量を徹底的にモニタリングし、目標達成のための活動を集中的に実行してもらいました。営業チームの再編成にも着手し、成果を上げている営業担当者により多くの案件を任せる一方、経験の浅い担当者にはサポート業務を担当してもらうといった人員配置を実施しました。

布川氏

こうした取り組みは営業だけでなく、コーポレートや開発などの部門を含めて「決戦」だという意識を全社でもちながら敢行されたといいます。例えば開発部門では、長期的な技術負債の解消よりも、顧客が求める機能の迅速な開発に注力したそうです。

ログラスの海外展開、まずは開発拠点の設置から

布川氏は、ログラスの今後の海外展開についてのビジョン、意気込みを語ってくれました。同社の「良い景気を作ろう。」というミッションにもとづき、国内通貨だけでなく外貨を稼ぎ、海外のユーザーにもサービスを届けていくことを社会的使命として捉えているそうです。

具体的な海外展開の第一歩として、布川氏は海外開発拠点の設置を挙げます。現在、ベトナムとインドを中心に検討を進めており、これらの国を選んだ理由について、布川氏は次のように説明します。

ベトナムについては、親日国であり、国民性も日本人に近いと考えています。単に労働コストが安いことが理由ではなく、カルチャーフィットと日本のスタートアップが成功事例をもっているという点をふまえて選定していますね。

一方のインドは、世界で最もエンジニアの質が高い国だと考えています。日本のスタートアップにはまだ成功事例が少ない市場ですが、世界的なトレンドを考慮すると、挑戦する価値が十分にあると思っています。

布川氏

布川氏によると、海外展開を着実に進め、中長期的には上場前に海外での販売活動(Go-to-Market)を開始したいと考えているとのことです。

Sequoia Heritageからの投資がもたらした好影響

Sequoia Heritageという海外の著名投資家が株主に加わったことで、ログラスにさまざまな変化が生じているそうです。

まず、経営の時間軸に大きな変化がありました。布川氏によれば、Sequoia Heritageは「いわゆるクロスオーバーの機関投資家」であり、短期的な視点ではなく中長期的な視点で事業を見ており、上場のタイミングに関するプレッシャーが軽減され、ログラスは短期的な成果にとらわれすぎることなく、より長期的な戦略を立てて経営を行うことが可能になったとのことです。

さらに、Sequoia Heritageの参画により、ログラスの対外的な信頼性が大きく向上したと布川氏は語ります。

海外の一流投資家がログラスを信頼して出資しているという事実が、顧客や採用候補者からの評価を大きく押し上げていると感じます。

布川氏

Sequoia Heritageからの投資を受けるために社内で敢行した取り組み、そして投資を受けるまでのコミュニケーション、投資を受けて得られた効果など、世界の名だたる投資家からの出資を受け入れた経験について、布川氏は詳細に話してくれました。

これからグローバルを目指す日本のスタートアップたちにとっても、貴重な示唆を含んだものになるのではないでしょうか。

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