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2026年02月10日

MUGENLABO UNIVERSEから生まれた新たな教育の形 ― ライフイズテックとアストロスケールが描く「宇宙×デジタル」の未来

ライフイズテック株式会社
小森 勇太
取締役副社長 COO

本稿で取り上げるのは、KDDI株式会社が運営するオープンイノベーションプログラム「MUGENLABO UNIVERS」の採択案件として始動した、EdTechスタートアップの「ライフイズテック株式会社」と、宇宙の持続可能性を追求する「株式会社アストロスケール」による異色のコラボレーションだ。


中高生を対象としたこの先進的な教育プログラムは、いかにして生まれ、どのような価値を社会に提供しようとしているのか。本プログラムを企画したライフイズテック社の小森氏へ共創の背景やプログラムに込めた想い、そして今後の展望について話を伺った。


10年来の縁:ライフイズテックとMUGENLABO

ライフイズテックとKDDIのプログラムとの関わりは、約10年前に遡る。当時、創業間もなかった同社は、当時MUGENLABOが運営していたアクセラレーションプログラムの4期生として採択された。

「その頃は、新規事業を一緒にやらせていただくといった関係でした。我々が運営する中高生向けプログラミングスクールの会場として、渋谷にあったMUGENLABOのスペースをお借りしたこともあります」と、ライフイズテックの小森氏は当時を振り返る。この長年にわたる信頼関係が、今回の連携における円滑なコミュニケーションの礎となったことは想像に難くない。

一方、アストロスケールとの間にも、単なるビジネスパートナーシップを超えた強固な繋がりがあった。両社の代表は、利益の追求だけでなく、事業を通じて社会課題の解決を目指すスタートアップのコミュニティ「一般社団法人インパクトスタートアップアソシエーション(ISA)」を、アストロスケールの岡田代表と共に立ち上げた中心メンバーなのである。

互いの事業内容はもちろん、その根底にある社会課題解決への情熱やビジョンを深く理解し、リスペクトし合う関係性がすでに構築されていた。

そういった中で、個別に存在していたこれらの関係性を結びつけ、より共創を加速させたのが「MUGENLABO UNIVERSE」というプログラムの存在だ。ライフイズテックが持つ教育プログラムのフレームワークと、アストロスケールが持つ宇宙に関する専門知識。そして、両社が共有する社会課題解決への想い。これらを組み合わせるというアイデアは、まさに必然とも言える形で具体化していったのである。

ワークショップで活発に議論する中高生の様子

探究学習のフロンティア「PBLの学校」とは

今回の共創の舞台となるのが、ライフイズテックが展開する「PBL(Project-Based Learning)の学校」だ。これは、単に知識をインプットする従来型の学習とは一線を画す、探究学習プログラムである。

PBLの核心は、生徒自らが主体となって課題を発見し、解決策を模索し、最終的にプロダクトや作品といった具体的な形にアウトプットするプロセスそのものにある。

この手法は、米国西海岸の著名な高校「ハイテックハイ」などで確立され、ライフイズテックは現地視察などを通じてそのノウハウを吸収し、独自のプログラムへと昇華させてきた。

「子どもたちの本質的な学びとは何かを追求した結果、PBLという手法に行き着きました。チームでの議論、多様な他者との協働、そして自己との対話。このプロセスを通じて、知識だけでなく、非認知能力や社会性といった、これからの時代に不可欠な力が育まれるのです」と小森氏はその教育思想を語る。

「宇宙×デジタル」というテーマ設定

「PBLの学校」では、これまでもユニークなテーマが設定されてきた。第一弾は「お金とボードゲーム」。お金の歴史や価値の移り変わりを学び、それを循環するシステムであるボードゲームとして表現する。難解なテーマを、遊びというアウトプットと結びつけることで、子どもたちの興味を引き出し、深い学びに繋げた。

そして第三弾となる今回は「宇宙×デジタル」だ。
「アウトプットはプロジェクションマッピングと決まっていたのですが、テーマをどうするか悩んでいました。科学博物館などを参考にサイエンス全般を扱おうかと議論していたタイミングで、アストロスケールさんとの話が持ち上がりました。『宇宙』というテーマは、子どもたちの興味を強く惹きつけ、かつ社会課題とも密接に結びついている。これ以上ないテーマだと確信しました」と小森氏は語る。

プログラムでは、アストロスケールの担当者が講師として登壇。宇宙開発の裏側で深刻化する「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」の問題について、生徒たちに語りかけた。

特に生徒たちの心を掴んだのが、「相対加速度」の話だ。地球の周回軌道上を秒速約8kmという猛スピードで飛び交うデブリを、どうやって安全に回収するのか。その鍵となる「同じ速度で動けば、対象は止まって見える」という物理の原理を、身近な例を交えながら解説。

生徒たちからは「なるほど」という納得の声が上がり、一気に宇宙というテーマへの解像度が高まっていったという。

アストロスケールが持つ専門性の高い内容を、子どもたちの知的好奇心を刺激する。その要素が、プログラムの成功に不可欠な要素であった。

専門家からのインプットは、生徒たちの内面に確かな変化をもたらした。
「最初は遠い世界の話だった宇宙が、自分たちの未来に直結するリアルな問題として認識されるようになりました。すると、『宇宙人はいるの?』といった素朴な興味から、課題解決への意欲まで、多様な関心が芽生え始める。知ったからこそ、それを解決したい、あるいは自分なりに表現したいという、次の創作活動へと心が向かっていくのです」と小森氏は語る。

PBLの学校参加者の様子

EdTechの多角化戦略と未来への投資

今回のPBLプログラムは、ライフイズテックの事業全体から見ると、どのような位置づけになるのだろうか。同社の事業ポートフォリオは、大きく3つの柱で構成されている。

第一に、創業以来の中核事業である、子どもたちに直接教育を届けるBtoCの習い事事業。プログラミングキャンプやスクール、そして今回のPBLプログラムもここに含まれる。

第二に、現在事業の大きな柱となっている学校・自治体向けの事業。デジタル人材育成が国の重要アジェンダとなる中、教育現場に最適化されたプログラムを提供している。

そして第三が、法人向け事業だ。DXやAI活用といった課題を抱える企業に対し、非デジタル人材向けの研修などを提供し、日本の産業全体のデジタルシフトを支援している。
小森氏は、これらに加えて第四の新規事業として、大学生の「就活の不」を解決するためのサービスを開発していることも明かした。
この多角的な事業展開の根底に流れているのは、「教育を通じて、社会の課題を解決する」という一貫した理念だ。今回のPBLプログラムは、未来の顧客、未来のイノベーターを育むという、同社の事業戦略と密接に結びついた戦略なのである。

共創が生み出す、社会課題解決と人づくりのエコシステム
MUGENLABO UNIVERSEを起点としたライフイズテックとアストロスケールの連携は、単一の教育プログラムの成功に留まらない、より大きな可能性を示唆している。

これは、企業が持つ専門知識や技術、情熱といった資産を、次世代教育という形で社会に還元し、未来を担う人材の育成と、宇宙ゴミのような喫緊の社会課題解決を同時に実現する、新しいエコシステムの萌芽である。

ライフイズテックは今後、旅行、保険、金融など、さらに多様な業界の企業とのコラボレーションも視野に入れているという。

この記事を読む大企業の新規事業担当者、あるいはスタートアップ経営者の方々も、自問してみてほしい。自社が持つ独自の強みや情熱を、未来を創る子どもたちの学びに、どう転換できるだろうか。

オープンイノベーションという手法が、ビジネスの創出だけでなく、未来への最も価値ある投資、すなわち「人づくり」においても、強力な推進力となることを、本事例は雄弁に物語っている。

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