- インタビュー
2026年03月03日
AIに頼らず「真実」を可視化する――独自アルゴリズムが報道と社会のインフラを変える

- 株式会社ロジック・アンド・デザイン
坂井 康文 - プロジェクト・マネジメント本部 ビジネスデザイン部長
映像や画像の解析技術が飛躍的に向上する中で、今、あえて「AI(人工知能)を使わない」という選択が注目を集めている。
本日はKDDIが運営する宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」において、日本テレビとの事業連携が採択されたロジック・アンド・デザイン社の取り組みについてご紹介。
同社は、東京都の「TIB CATAPULT」とも連携する本プログラムを通じて、衛星画像の報道利用を加速させる画像処理ソフトウェアの開発を進めている。
映像の「真正性」が問われる報道現場において、スタートアップの独自技術がいかに社会実装へと向かうのか。プロジェクト・マネジメント本部 ビジネスデザイン部長の坂井氏へお話を伺った。
AIに依存しない「真正性」が生む、報道への信頼
多くの画像処理技術がAIによる「推論・生成」に頼るなか、坂井氏らが掲げるのは「元データに忠実な可視化」という独自の思想だ。AIが不足した情報を勝手に描き足してしまうリスクを排除し、事実をありのままに捉える姿勢を徹底している。
「私たちのコアは、見えない・見えにくい映像を『視える化』することです。特許技術のアルゴリズムは、AIを用いた画像処理技術とは一線を画し、予測で補わず元データの忠実性を維持したまま鮮明化する点に最大の特徴があります。」と坂井氏は語る。

出典:日本テレビ「news every.」(2025年5月26日放送分)にて使用
この技術の核心は、ピクセルごとの輝度やコントラストを数学的に解析・再構成する点にある。一般的なAIが「過去の学習データから、それらしいピクセルを生成する」のに対し、同社のアルゴリズムは「既存のデータ内に隠れている信号の再現性を高める」というアプローチを採る。単なる鮮明化ではなく、事実に基づいたより視える化という観点での一貫性を追求しているのだ。
生成的な手法を避けることは、結果として報道における「改変リスク」の回避に直結する。これにより、裁判資料や科学的調査といった、後からの検証が求められるシーンでの「証拠能力」を維持できるのが最大の強みだ。正確性を最優先する領域との、極めて高い親和性を実現している。
現在はPC上での処理が主だが、今後は撮影現場に近いデバイスに実装できるようLISr-ISP SoCを開発しており、カメラセンサー直後に画像鮮明化処理を組み込むことで、圧縮や劣化の影響を受けることなく、より鮮明で高品質な画像処理実現を目指している。
現場で浮き彫りになった「スピード」と「保存」の壁
理論上の技術が優れていても、一分一秒を争う報道のワークフローへの適合は不可欠だ。日本テレビとの実証実験で可視化されたのは、リアルタイム性と保存性の両立という具体的な課題である。
坂井氏は現場での手応えをこう振り返る。「画面上のリアルタイム再生では即座に鮮明化が可能です。一方、放送利用に向けた『保存工程』には、画質や長さによって時間を要するケースもありますが、静止画についてはもはやストレスのない鮮明化レベルとなりました。」
報道現場のスピード感に合わせた運用設計。リアルタイムでの閲覧と、放送用データの保存。この二層のニーズに対し、いかに編集フローへ組み込むか。環境側の要件に寄り添いながら技術側を調整する必要性を感じており、プロダクトとプロセスの同時デザインに取り組んでいる。

出典:日本テレビ「news every.」(2025年10月9日放送分)にて使用
医療からインフラ点検まで、社会の「証跡」を鮮明にする拡張性
同社が見据えるのは、報道の枠を超えた社会全体のアップデートだ。将来的なグローバル展開を視野に入れつつも、現在は日本テレビとの実績を基盤に、国内のあらゆる産業への展開を最優先事項に掲げている。
「製造業における品質検査や、インフラの下水道管点検や建設業界、さらには警察の捜査支援、防衛産業など、映像・画像の鮮明化に課題を抱える業界は非常に多岐にわたります。PCやスマホ、タブレットが使われる現場であれば、どこでも私たちの技術がお役に立てるはずです。」
坂井氏は、映像の課題を抱えるあらゆるパートナーに対し、「業界を問わず、まずは気軽に相談してほしい」と呼びかける。AI全盛の時代にあって、「事実」を浮き彫りにする同社の技術は、社会の透明性を高める新たなインフラとなっていくに違いない。
今回の取材を通じて強く感じたのは、ロジック・アンド・デザイン社の技術が持つ「誠実さ」である。情報の「生成」が容易になった現代において、あえて予測を排し、元データの持つ真実をあぶり出すアプローチは、報道のみならず、公平性が求められる現代社会のインフラとして極めて重要な意義を持つはずだ。
「MUGENLABO UNIVERSE」を通じた日本テレビとの事業連携は、単なる画質向上の試みではない。スピードと正確性の間で揺れる現場の課題に真摯に向き合い、運用フローまでを共にデザインする過程そのものが、オープンイノベーションの理想形だと言える。
衛星から医療、そしてインフラ点検へ。この「視える化」技術が社会のあらゆる死角を照らし、意思決定の精度を高めていく未来に、大きな期待を寄せたい。
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