- 海外トレンドレポート
2026年02月05日
「Humanoids Summit 2025」現地レポート: 主要セッションから読み解く、人間とロボットが共存する未来

2025年12月、世界中のロボット研究者、投資家、そして未来を夢見る起業家たちが、コンピュータ歴史博物館に集結した。彼らの目的はただ一つ、「Humanoids Summit 2025」で、人間型ロボット(ヒューマノイド)がもたらす未来をその目で確かめることだ。
かつてSFの世界の産物だったヒューマノイドは今、AIの進化という強力な追い風を受け、「研究」から「商用化」へと、そのステージを大きく移そうとしている。
本記事では、このサミットの主要セッションを時系列で追いながら、最前線の動向と未来を切り拓くキープレイヤーたちの戦略をレポートを読み解き、後半では、その中から注目のセッションや展示を技術観点から深堀しレポートする。

- 中川 惇太KDDIアメリカ
- 本誌の記者。KDDI Open Innovation Fund のサンフランシスコ拠点で、日本市場への進出に関心を持つ海外スタートアップとの協業や投資機会の探索に取り組む。また、国内外の投資先のサポートや MUGENLABO Magazine の制作にも携わる。趣味はサッカーや野球などのスポーツ観戦で、最近は米国のノンアルクラフトビールの飲み比べが楽しみ。
Humanoids Summit概要
「Humanoids Summit 2025」は、2025年12月に、シリコンバレーの中心地であるカリフォルニア州マウンテンビューのコンピュータ歴史博物館で開催された。世界中からロボット研究者、エンジニア、スタートアップ、投資家、事業開発担当者などが一堂に会し、ヒューマノイドの「研究」から「商用化」への移行と、社会実装に向けた課題や展望について、2日間にわたり熱い議論が交わされた。

「ヒューマノイドは、もはや研究室の産物ではない」という力強いメッセージで幕を開け、オープニングキーノートでは、近年のAI基盤モデルの進化がいかにヒューマノイド開発のゲームチェンジを促したかが語られ、サミット全体のテーマが「商用化」であることが明確に示された。会場は、技術的な可能性を探る段階から、実世界でいかに価値を生むかというビジネスフェーズへの移行を確信する熱気に包まれた。

展示されていたヒューマノイド
セッション概要(一部抜粋)
- Google DeepMind
ヒューマノイドの「頭脳」となるAIが主役となった本セッション。
Google DeepMindのPadara氏は、25年9月に発表されたGemini Robotics1.5のモデルに関する取組を紹介した。最新版では、高次の認知能力を持つプランナー「Embodied Reasoning(ER)」を新たに搭載。これにより、ロボットは自ら計画し、「未経験のタスク」や「複雑なマルチステップ問題」の解決が可能になると語った。
※技術面での深堀は、【今後の「フィジカルAI」への影響を技術観点で深堀】を参照 - Skiled AI
多環境・多ハードウェアに対応できる汎用モデルと安全な適応性を実現し、インターネット動画やシミュレーションを活用した革新的な学習手法のモデルを開発。
ハードウェアの変化や故障にも柔軟に対応し、安全かつ高性能なロボット社会の実現を目指すと発表した。 - Physical Intelligence
「物理世界における知能の解明」をミッションに、汎用ロボットの開発に取り組む現状を紹介。視覚と言語を融合したVLAモデルにより、家庭での洗濯など未学習の環境でもタスクをこなす「Pile 5」モデルを披露。より高度な自律性と安全性を持つロボットの実現を目指すと述べ、産業・家庭への展開に意欲を示した。 - Lightwheel
シミュレーションと合成データを活用し、ロボットの訓練と評価を安全かつ効率的に進めるための取り組みを紹介。多人数のデータ収集チームによる膨大な人間行動データと、高精度な仮想環境の構築を通じた、次世代フィジカルAIの実現を目指すと提唱した。
※技術面での深堀は、【今後の「フィジカルAI」への影響を技術観点で深堀】を参照
Startup fire Pitch ― 未来を創る4つのアプローチ
イベントのハイライトとなった「Startup fire Pitch」では、世界中から選ばれたスタートアップが、ヒューマノイドの社会実装に向けた多様なアプローチを発表。
中でも、保守性向上、自動化、スキル共有、超高速充電、リモート操作、触覚センサーなど、周辺領域のプロダクトについてプレゼンした。

ピッチの様子
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・モジュール型ヒューマノイドロボットを日本で製造・提供。
・ロボットが完全に現場保守可能な設計であり、ダウンタイムを数ヶ月から数分に短縮。
・日本の信頼性の高い製造ネットワークを活かし、サプライチェーンのセキュリティと信頼性を確保する。 - MicroFactory
・小型電子機器の卓上マニュアル作業を自動化するためのマイクロファクトリー(ロボットワークスペース)を構築。
・VLAモデル(視覚言語動作モデル)を活用し、高い成功率を目指す。
・小型最終組み立てに特化することで、コストとスペースを最適化し、顧客のIP権管理と品質管理を支援。 - CosmicBrain AI
・ロボットのスキルセットマーケットプレイスを提供。
・「ロボット版YouTube」として完全に自動化し、200以上のロボットブランドに対応。
・人間のビデオやセンサーデータからロボットアクションを生成し、多様なハードウェアで展開可能なスキルとして市場で共有可能にする。 - Morelle
・ロボットのバッテリー問題を解決する超高速充電ユニットを開発。
・バッテリーを15分未満で充電可能であり、バッテリー交換に伴う追加運用コスト(約18,000ドル)を削減。
・シリコンベースのバッテリー、独自の熱管理設計、機械学習アルゴリズムを採用。UL2271認証を取得。 - Adamo
・リアルタイムのリモート・テレオペレーション・サービスを提供し、ロボットの市場展開を加速させるための高品質なデータ収集を代行。
・メキシコシティに700人規模のテレオペレーターを配置し、低遅延で高品質なテレオペレーションデータを提供。
・顧客の市場投入までの期間を「数ヶ月から数週間」に短縮可能。 - Haptica Robotics
・布地素材ベースの空気圧触覚センサーを開発し、ロボットの触覚データに関するボトルネックの解消を目指す。
・プラットフォームに依存せず、切ったり成形したり様々な形状に対応。
今後の「フィジカルAI」への影響を技術観点で深堀
ここからは、今回参加した「Humanoids Summit 2025」の中でも、今後の業界への影響力が高そうな展示やセッションを2点ピックアップし、注目すべきポイントをKDDI下桐氏が技術観点から深堀する。

- 下桐 希KDDI 先端技術統括本部
- 2019年KDDI入社。新規サービスやOTT協業などAI/通信領域の事業開発・提携を担当。最近は、リテール領域でのフィジカルAI・ロボティクス関連の先端技術研究に従事。前職では、電子マネーなどの会員サービス構築・データ分析、グローバル企業提携による訪日客向けAIサービス構築、共同出資によるEC事業開発やベンチャーの創業など、20年以上に渡り幅広く事業開発・技術研究を行う。
- Google DeepMind
今回のプレゼンテーションでは、VLA(ロボットアクションを出力する低レイヤーAI)とVLM(視覚情報からアクションの計画を思考する高レイヤーAI)の二つをどのようにエージェンティックに組み合わせているかを非常に細かく説明しており、VLMは、1Hzで視覚情報からタスクを思考・分解し、それを引き継いだVLAが5Hzで、高速にロボットアームを動かしていることを明らかにした。この5Hzのアクション動作により、ロボットがタスクを失敗した際でも、1秒間に5回の頻度で状況を検知しリカバリーが可能となること示している。VLAの社会実証においては、この「リカバリー」の性能が評価されるため、技術観点からは、非常に注目すべき内容だった。
- Lightwheel
ロボット基盤モデルの構築や汎化性能(未知のタスクに対して汎用的に対応できる能力)の向上は、ロボティクスの産業への導入において、非常に重要な研究分野だ。これに伴い、これらを実現するためにロボット学習データをどのように収集するかは、研究者にとって大きな壁となっている。Lightwheel社の高精細なデジタルツインによるデータ収集プラットフォームは、一つのソリューションとして有望視されており、先ほど説明したタスク失敗時の「リカバリー」データを収集する観点からも、「人」がシミュレーション空間で再現された様々なシチュエーションにおける失敗の「リカバリー」を行い、データとして収集することで、物理空間でのタスクの成功率を改善できる点において、非常に有用と思われる。
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セッションの様子

セッションの様子
次回のサミットは、2026年5月に東京で開催されることになりました。ヒューマノイドが社会に溶け込む未来。その物語の続きは、ついに日本で紡がれる。