- 海外トレンドレポート
2025年01月22日
Humanoid Roboticsに特化したテックイベントが世界で初めて開催!Humanoids Summit 2024ーー海外トレンドレポート
KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。
今回は、2024年12月11日~12日にシリコンバレーにて開催されたHumanoid Roboticsに特化したテックイベ ント「Humanoids Summit 2024(以下Humanoids Summit)」の参加レポートをお届けいたします。
- 一色 望KDDIアメリカ
- 本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。
Humanoids Summit概要
Humanoids Summitとは、シリコンバレーにて世界で初めて開催されたHumanoid Roboticsに特化したユニークなテックイベントです。中でも、Humanoid技術のマスアダプションに焦点を当て、Humanoid RobotとAIの融合がテーマに掲げられました。
主な参加者は、シリコンバレー内外のトップベンチャーキャピタリストや業界の第一人者、研究者などが集まり、ヒューマノイド技術エコシステムにおけるビジネスチャンス、資本配分、投資機会などについて議論が展開され、イベント内では、業界で著名なスピーカーによるキーノートやテーマセッション、出展企業によるライブデモンストレーション、スタートアップピッチなどが実施されました。
会場の様子
主な展示企業は以下の通りです。
- 1x Technologies
コンシューマ向けロボット(NEO)およびエンタープライズ向けロボット(EVE)の開発を行うノルウェーの企業です。会場展示ではEVEが来場者との握手やハグ、物を渡すなどのデモを実施していました。自律動作ではなく遠隔操作により動くロボットです。1x Technologiesの展示の様子
- Unitree
四足歩行の犬型ロボットや二足歩行の人型ロボットを開発する中国の企業です。最近AI系のカンファレンスには必ず出展しており、逆立ちなどのパフォーマンス的な動きが特徴です。Unitreeの展示の様子
- Enchanted Tools
アニメのキャラクター的な顔が特徴のロボットを開発するフランスの企業です。ライブデモでは来場者との会話などを楽しんでいました。近年CESなどのイベントに積極的に参加している企業です。
Enchanted Toolsの展示の様子
Startup Fire Pitches
本イベントでは、Humanoid Robotics関連の技術やビジネス開発を行うスタートアップ5社が登壇ました。優勝企業の発表はありませんでしたが、VCから各企業に対し鋭い質問が飛びました。
- Kind Humanoid
■事業概要:人間をサポートするインテリジェントな汎用型ロボットを開発。医療現場などでの商用化を目指す。現在プロトタイプ開発中で、実際に歩いたり、「喉が渇いた」という人間の言葉を理解して自動的に飲み物を差し出すことができる。
■本社所在地:アメリカ - Red Rabbit Robotics
■事業概要:工場や配送などの労働力の代替となるAutonomous Humanoid Robotの開発。24時間対応のため、人間と比較して3倍の労働力が見込め、さらに30-50%コスト削減ができるとのこと。自己資金のみで3か月でプロトタイプを開発済み。
■本社所在地:カナダ・バンクーバー - Sensible Robotics
■事業概要:触覚のセンサーを持つロボティクスを開発。コア技術は繊維に組み込まれた導電性ナノ粒子であり、触覚を検知すると電流が流れる仕組みとなっている。爪の触覚まで厳密に開発しているため缶ジュースを開けたり、細かいものをつまむという動作が可能となる。
■本社所在地:アメリカ - Ember Robotics
■事業概要:ロボテイクスの運用診断ツールの開発。TeslaのAutopilotの開発者らが起業。複数のセンサーデータをトラッキングし、リアルタイム分析を行い、エラー検知された場合は回復方法をレコメンドする。今後はAPI開放により多くのユースケースを作る予定。
■本社所在地:アメリカ・カリフォルニア
- Simple Automation
■事業概要:ロボティクス向けのファンデーションモデルのベースとなるデータの売買ができるマーケットプレイスを提供。アメリカに約200ある小規模の製造業者を対象とし、データ提供を求める予定。プロダクトはまだ準備中であり、コミュニティ組成中の段階とのこと。
■本社所在地:アメリカ・カリフォルニア
Kind Humanoidのサービスイメージ
Sensible Roboticsのサービスイメージ
最後に
Humanoid Robotics技術は、生成AIや自動運転の次の潮流(Next Wave)として、特にVCやスタートアップ界隈では非常に注目度の高い領域になってきている体感があるものの、今回のイベントでスタートアップピットやキーノート、展示を見た総合的な所感としては、まだまだ発達途上の領域であり、これから3-10年単位での成長が期待できるような産業ではないかと感じました。
展示企業の中には、会話ができたり、二足/四足歩行をしたり、絵を描いたりというように、特定の目的に従って操作可能なロボットが多く見られたが、自律的に汎用的な動きをするようなロボットの展示はなく、この領域では有名な1xでさえも、まだ遠隔操作に依存する段階でありました。Humanoid Robotics領域のエコシステムを成立させるには、個人向けよりも企業向けで労働力の代替(Labor as a Service)として事業化することが重要であり、展示企業や登壇企業のほとんどの企業はB向けのロボティクスソリューションでした。
また、多くのキーノートやセッションで複数回話題に上がっていたのがデータ収集の問題で、汎用的な動きをロボットにさせるためには物理的なデータを集めることが業界課題となっており、当領域の多くの企業がこの問題に取り組んでいるということがわかりました。
Humanoid Robotics領域を牽引するのは、TeslaやNVIDIAなどのアメリカのBigTechですが、実はこれらのインダストリアルな物理的データは製造業を主葉産業とするアジアが多くを保有しており、いかに製造業をパートナーとして多くのデータを集めるかが鍵となります。このような背景から、Roboticsに必要なAIのファンデーションモデルでは、アジアにも勝算があると考えらます。これから数年間にわたりテック界隈で大きく注目されるこの領域に、しばらく注目していきたいと思います。
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