- インタビュー
2022年05月13日
ECの「探す」体験をアップデートするメタストア、脳科学の開発者に聞いたその方法
脳科学から導いたVRおよびブレインテック事業を手がけるハコスコは3月、メタストアのβプログラム開始を伝えている。メタストアはShopifyなどのECサービスと連携し、利用ユーザーに仮想的な店舗空間のインターフェースを提供する。
PCやモバイルなどの2次元画面で商品を検索・選択する場合、リスト表示や詳細情報などのウェブページを利用するのが一般的だが、メタストアはこの表示を3D空間表示に変えてくれる。現実世界で見慣れた店舗やギャラリーなどの空間テンプレートや、棚やカウンターなどの什器パーツを提供しており、事業者はそれらを選択し配置するだけで、平面的な販売メディアを奥行きのある販売空間に拡張することができる。また、ショップ側とのコミュニケーションには音声やチャットを使ったグループ会話機能が利用できる。
出力された3D空間はiFrameで既存のウェブサイトに貼り付けることができ、ユーザーはスマートフォンやPCから利用することができる。利用料金は月額1万円からで、βプログラムは6月1日から開始予定。MUGENLABO Magazine編集部ではハコスコ代表取締役で医学博士・脳科学者の藤井直敬氏にサービスの狙いなどをお聞きした。(太字の質問はすべて編集部。回答は藤井氏、敬称略)
メタストアの概要を教えてください
藤井:ハコスコは「現実を科学し、ゆたかにする」をミッションに掲げ、現実を科学する実験カンパニーとして創業しました。 VR はその上に乗っていて、課題としてあったのがメタバース系のリッチな空間におけるコミュニケーションのあり方と、何に使われると価値が出るのだろうということだったんです。
今回作ったメタストアは一見すると、いわゆる世間のメタバースっぽい要素はありますが、オンラインとオフラインの良さを地続きに繋ぐ、中間ポジションのコミュニケーション空間は作れるのだろうかという挑戦から生まれています。
具体的にそこに入った人たちはどういう体験を得て、どんな価値を得られますか?
藤井:今プロトタイプとして公開しているメタストアのコンビニがあるのですが、そこに入っていただくと、みなさんが知っているコンビニそのものがCG で作られてるわけです。
ところで、コンビニの中ってどこに何があるのかというのは大体どこも同じです。窓際に本があって奥の方には冷凍食品とか。壁際には飲み物とか生鮮食品があって、真ん中の棚には雑貨があってお菓子があって、ラーメンとかがあるという。
それをメタストアのコンビニの中で再現すると、無意識にどこに何があるのか分かるんです。例えば今、プロトタイプのコンビニには2,000種類ぐらいのモノが入っていますが、2,000種類入ったウェブページって一度に一覧はできないですよね。多分すごくスクロールする必要がある。
でもあの空間の中に自分たちが慣れ親しんだルールでモノが置いてあると探索性がすごくいいんです。実は人はモノが沢山あると抽象化を始めるんです。ポテトチップスの棚があれば、ポテチの棚だなと認識して、味は何が違うのかな?という細部の情報に向かうんですよ。ポテチもひとつ一つのパッケージデザインで見たことないものを見て、新商品じゃん!みたいな。
店舗側とのコミュニケーションはどのようになっていますか?
藤井:そうですね、お店の人はアバターとして出てくるようにもできますが、基本、お店に行った時の音声ボイスチャットは大きく2種類あって、お店の人とお客さん、お客さん同士の会話の2つに分けられます。それを準備してあげて、店舗内に例え1万人入ったとしても、それぞれのグループチャットができるようになっているので、全部カップルだとしたら5,000組の会話が並行して動きます。
没入感というよりは、モノの検索性にフォーカスしたメタバースという理解です
藤井:ハコスコはVRゴーグルから始まっているので、みなさんも弊社がメタバースというと当然ヘッドマウントディスプレイの対応機種を教えてくださいとかVRゴーグル必要ですよね?という前提でいらっしゃいます。しかし、基本的にウェブベースなので全くゴーグル不要で、入り口をバナーのように貼っていただくこともできますし、iFrameとして新しい空間の入り口をウェブページに設けることもできます。
メタバースの今の大きな課題はメタバースに行く作業です。(ヘッドセットを使って没入させようとすると)これが大変なので、どうやって集客するの?どうやって誘導するの?と難しいのですが、弊社のメタストアではウェブページに貼っていただければそれで大丈夫です。
ECカートと連携する箇所を詳しく教えてください
藤井:ネットストアのバックエンド側は基本的に既存のECサイトのカートを利用しています。今はShopifyと連動していて、これから国内の主要サービスをつなげていく予定です。
例えばスーパーで50%オフシールが貼ってあるだけで買ってしまうことってありませんか?お店の人が試食品をくれたりとか、名物店長さんがトークで引き込むなど、空間の何かに無意識に誘導されてしまう。そういうものを次の拡張として提供したいなと思っています。
ECのストアだけではなく、現在ギャラリーであったり学校だったり、催事販売みたいなところからもお問い合わせいただいているので、こういった用途にも広げていきたいなと思っていますが。
最後に今後のステップについても教えてください
藤井:コロナ禍で非接触が推奨される世の中になり、失われてしまったものをオンラインで再現できないのかな、というのが私たちがこのタイミングでこれをやってる理由です。基本的にベータ版はShopifyに連動した形で6月1日にリリース予定です。また、それ以降他のECサービスとも連携していきます。
あともうひとつ、大きくやりたい課題としては、ビデオのストリーミングをブラウザの3次元空間で出すということをやりたいと思っています。
これをやることによってライブコマース的なものが視聴空間の中でできるようなので、 SKU(※商品コード)がついてないものも売れる可能性が出てきます。例えばお肉 500gをライブで見せてQRコード読み込んで買ってもらうような、すごいアナログなんだけどメタバースならではな方法ですよね。
ありがとうございました。
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