- インタビュー
2020年12月04日
ギフティ上場のリアル:コンサルからスタートアップ Vol.1
- 株式会社ギフティ
太田 睦 - 代表取締役
これはとある新社会人がスタートアップし、上場するまでのストーリーである。
彼はソーシャルメディアの可能性を感じ、人と人とが繋がる「ギフト」で新たな世界を創ろうと考えた。2010年に創業した社員数人の小さなスタートアップは、いくつもの支援を受けながら幾多の困難をクリアし、社会の公器となるべく2019年9月、東証マザーズに上場を果たした。ギフティという名前でスタートアップした彼らは、創業時「ソーシャルギフト」という新しい概念を提唱し、その後のeギフト市場で着実に成果を出し、現在もなお成長を続けている。
このロングインタビューでは、スタートアップのリアルとして、KDDI ∞ Labo第一期生であるギフティ創業者、太田睦(むつみ)氏と共にその上場までの道のりを辿る。後に続くスタートアップ起業家、そしてその成長を共に共創しようと試みを続ける大手各社のヒントになれば幸いだ。(文中の質問は全てMUGENLABO Magazine 編集部、回答は太田氏)
ソーシャルメディアのはじまりとギフトのアイデア
ギフティの創業は2010年8月、世の中はFacebookやTwitter(共に日本でのサービス開始は2008年頃)が日本でも使われるようになり、スマートフォンの拡大と共に新たなモバイル・インターネットの世界が始まろうとしていた頃だ。ギフティのアイデアはそんな時代の間で生まれる。
最初は就職されたんですよね。起業には興味があったんですか
太田:実はスタートアップに興味はあったものの、これをやりたいっていうネタがなかったっていうのが本当のところです。
どうしてギフトにフォーカスしようと
太田:そういう思いを持ったまま就職活動をしてアクセンチュアに入ったんですが、折角の機会ですし、ウェブサービスを作るのであればその裏側を知っておきたいなということで、文系大学出身者でもSEになれるルートを見つけてそこに進みました。入社したのは2007年なんですけど、ちょうどFacebookや Twitterが流行り始めたタイミングで、大学時代に仲良くしていた友人だったりアクセンチュアの同僚たちと自然に繋がるようになったんですね。
で、Facebookって誰かの誕生日ですよっていうのが上がってくるじゃないですか。それを見ておめでとうみたいなメッセージが生まれる。ただ、誕生日おめでとうとか結婚おめでとうっていう「ハレの日」を言葉だけで済ましてしまう傾向にちょっと違和感というか、もう一歩踏み込んだコミュニケーションができるんじゃないかというところがあって。それが一番最初の着眼点でした。
スタートアップへ
こうしてギフトという着想を得た太田氏は、そのままSEとしての仕事を続けながらスタートアップの機会を待つことになる。しかし当時はまだ「スタートアップ」という言葉自体も曖昧な時期で、2000年前半に巻き起こったインターネットバブルは記憶にあったとしても、投資サイド・起業サイド共に次の波がどこにくるのか決めかねていた。2007年に登場したiPhoneの影響で、スマートフォンシフト、モバイルインターネットの波は確実視されるものの、それがやってくるのがゲームなのか、ソーシャルなのか、リアルビジネスなのか、はたまた全く違う未知の領域なのか、誰もが手探りの状況だった。
太田氏もスタートアップすると心に決めながら、暗中模索の第一歩を踏み始める。
創業の経緯を少し詳しく教えてください
太田:具体的なきっかけとしては、2009年に通っていた社会人向けカルチャースクールですね。起業塾のような場所で、講師の中にソウ・エクスペリエンスという体験型ギフトをやってる企業の代表の方がいらっしゃったんです。それでその方が提唱されていたのが凄くカジュアルな起業という考え方で、0か100かのような起業ではなく、働きながら平日の夜とかを使って少しずつプロトタイプを作って世に出していって、うまくいったらそこの比率を変えていけばいいじゃないか、と。自分にとってそれが一歩を踏み出しやすい考え方で、アクセンチュア自体は2009年ぐらいに辞めてるんですけど、そこからすぐに起業するわけではなく、一旦アルバイト生活みたいなのを半年間ぐらいやりつつ起業の準備をしていました。
当時は確かにスタートアップ環境も整っていなかったから、受託をやりながらという人も多かったです
太田:次のきっかけはOpen Network Lab(ONL)ですね。第一期生になったのですが、当時プロジェクトを担当していた前田ヒロさん(現・ALL STAR SAAS FUNDのマネージング・パートナー)にピッチをして、その後、伊藤穰一さんにもピッチをする機会をもらいました。結構ネガティブなレビューを頂いたりもしましたが、あの時はスタートアップって言葉も一般的ではなかったし、こういうギフトサービスもほぼなかったので「ソーシャルギフト」という新しい概念を作るということで最初のメンバーとして入れてもらったのかなと思っています。
ONLでは会社の立ち上げ方を教えてもらったり、創業メンバー集めもここでやりました。アクセンチュア時代の同期で柳瀬(文孝氏、現・取締役CTO)というのがいて、彼にお願いしたりとか、友人でデザインをやっているのがいたので彼にCDO的な形で入ってもらったり、そんな感じでスタートしましたね。
ーー公開当時のギフティは、友人にありがとうのコメントと共に事前決済済みのURL形式クーポンを贈り、それを利用できる店舗で見せて何かの商品と交換するという、コンセプト自体は現在のものと大きくは変わりないものだった。太田氏が直接口説いたカフェのオーナーなどの口コミで利用してもらえる店舗も広がり、約30店舗ほどで使える「ソーシャルギフト」サービスは無事ベータ版として公開の日を迎えることになる。2011年3月頃の出来事だ。
しかし、スマホアプリもソーシャルメディアも、個人でデジタル・ギフトを贈り合う習慣も、全てが目新しく、さらにそれらの組み合わせがサービスになった結果、世の中が受け入れるには相当の時間が必要になったのは言うまでもない。(次回につづく)
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