- インタビュー
2024年09月20日
未利用排熱で電力を生み出す -株式会社elleThermo
- 株式会社elleThermo
生方 祥子 - 代表取締役
KDDIは、東京工業大学発のコア技術「STC」を活用し、安全・安心で資源に頼らないエネルギー問題・資源問題の解決を目指す、株式会社elleThermo(本社:東京都港区、代表取締役:生方 祥子、以下 elleThermo)へ出資したことを公表しました。
脱炭素などの環境課題に取り組むベンチャー企業への出資を行う「KDDI Green Partners Fund」を通じたもので、出資額や評価額などの詳細は非公開。
今回は代表取締役の生方 祥子氏にお話しを伺いました。
代表取締役生方氏に伺いました
何をしている会社ですか?
生方:弊社は東京工業大学発のコア技術「半導体増感型熱利用発電(Semiconductor-Sensitized Thermal Cell, 以下STC)」を活用し、未利用熱のエネルギー変換を目指すスタートアップです。
現在マイクロワットレベルの発電を達成しており、今回の資金調達を活用して、大面積化・積層化・薄層化などの要素技術を確立し、ミリワットレベルの発電を達成します。その後、電解質開発・モジュール化などにより、ワットレベルの発電を達成する予定です。弊社の直近でのメインターゲット温度は、人間がメンテナンスのために耐えられる温度である40℃付近であり、データセンター、鉱山地熱、家電、放射性廃棄物貯蔵施設など、幅広い熱源が設置環境となりえます。最終的には60cm×60cm×3cm×4枚で200W出力のサーモパネルを利用した地産地消の分散型電源事業を展開し、世界のエネルギー問題の解決へと結びつけます。
STCの原理・技術などについては、公開総説や弊社のYouTubeチャンネルをご覧ください。
サービスイメージ
なぜ会社を立ち上げたのですか?
生方:娘の未来に貢献する研究しか行わない、と決めて研究活動をしていました。特に、娘が安心して使える、安全な電力を生み出す技術をつくれないかとずっと考えていました。そんな中、2015年にSTCの着想を得、研究を開始しました。
STCの長期評価の場合、STCは恒温槽の中に1カ月以上入れっぱなしになることもあります。最初に劣化するのが、電極を貼り合わせている両面カプトンテープ(両面にシリコーン系粘着剤を塗布した、電気絶縁性・耐熱性に優れたテープ)でした。長期安定測定のためには、このカプトンテープを劣化しない材料に替えることが必要でしたが、私は東京工業大学 無機材料分野の准教授です。接着剤は基本的に有機材料ですから、接着剤の研究を行うことは非常に困難でした。
ちょうどそのころ、2021年度および2022年度に、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の社会還元加速プログラム(SCORE)事業ならびに同・大学発新産業創出プログラム(START)事業にご採択いただいていました。この2つの事業はどちらも大学発の優れた技術シーズの社会実装を目指すものでしたので、スタートアップを創業し、学術領域の垣根を越えて、電池製作に打ち込める環境を整えることを決めました。
これからの目標はありますか?
生方:STCを用いたサーモパネルを作製し、地産地消の分散型電源事業を展開し、世界のエネルギー問題の解決へと結びつけることです。
KDDIからの出資によって期待していることはありますか?
生方:KDDI様の通信機器や電子機器から出る排熱を活用した発電実証実験などにも期待しておりますが、KDDI Green Partners FundがGLIN impact capital様とともにどのように日本経済においてインパクト投資を推進し、モニタリングなさり、世界を変えていくのかを体験できることにワクワクしています。資本主義において、環境問題の解決は経済的な利益とマッチしなくては成しえないと思っておりますので、そのたたき台に弊社がなれるのであれば大変光栄です。
最後に一言お願いします
生方:STCを人々の生活の中に浸透させ、世界のエネルギー問題の解決へ結び付けるためには、入り口から出口まで産官学様々なレイヤーで弊社にかかわっていただく方が必要です。皆様が持ってくださった原理へのご興味が、STCを使って思いつく事業が、エネルギー問題解決の推進力となります。どうぞよろしくお願いいたします。
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