- インタビュー
2023年12月26日
グローバルな環境で育ち、日本で起業を決意した若き女性の挑戦-Chai
- 株式会社Chai
西澤 理花 - 代表取締役社長
接客から購買、アフターフォローまでの全てをLINEのみで完結できるオンラインショップ作成サービス「BuyChat」を手掛ける株式会社Chaiは、2023年8月にプレシリーズAの調達を実施しました。
「BuyChat」は、LINEを活用してオンラインショップを簡単に開設できるサービスです。このサービスの特徴は、接客から購買までの全てのプロセスをLINE上で完結させることができる点にあります。これにより、店舗側は手軽にオンラインでの販売を始めることができ、顧客はLINEを通じてスムーズに商品を購入することが可能になります。特に、LINEを日常的に使用するユーザーにとっては、親しみやすいプラットフォーム上でのショッピング体験を提供することができるため、顧客満足度の向上が期待できます。また、店舗側はLINEを通じて顧客と直接コミュニケーションを取ることができるため、よりパーソナライズされたサービスの提供が可能になります。このように「BuyChat」は、LINEを通じた新しい形のオンラインショッピング体験を提供するサービスとして注目されています。
また、米『Forbes』が2011年より開催し世界的に注力している企画に、30歳未満の次世代を牽引する若い才能に光を当てるアワード「30 UNDER 30」があります。日本版の『Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023』では、株式会社Chai代表取締役社長の西澤理花氏が選出されました。幼少期をアメリカ、中国、ドイツで過ごした西澤氏に海外育ちのZ世代女性がなぜ日本で起業したのかについてお話を伺いました。
BuyChatのサービス概要
アメリカ、中国、ドイツでどのような幼少期を過ごしましたか?
西澤:父親の仕事のために幼少期から頻繁に転居していました。アメリカで生まれ、中国の小学校に通い、その後アメリカの大学に進学しました。幼少期の生活は、同じ学校に2、3年以上続けて通うことがないほど、引っ越しが多かったです。友達が頻繁に変わることに対する苦痛を感じつつも、多様な国々でのインターナショナルスクールの経験を通じて、自分の「常識」が実は普遍的ではないことを幼い頃から学んできました。
大学時はカリフォルニア大学バークレー校で数学を専攻し、大学院時はコロンビア大学で統計を専攻され、具体的に何を勉強していましたか?
西澤:大学時代は、特にゲーム理論に焦点を当てた学問を深めました。大学院では、これらの知識を活用し、統計学に関連する分野をさらに探求しました。また、卒業論文は教育政策に関するもので、データに基づいて教育政策を考察する内容を書きました。
大学時の写真
卒業論文で教育について書かれた理由はありますか?
西澤:幼少期の多様な国々でのインターナショナルスクールでの経験を通じて、教育が人の考え方や人格形成に大きな影響を与えることを身近に感じてきました。そこで、教育に深い興味を持ち、特にアメリカのような多様な人種や経済的背景を持つ国で、教育が学校の卒業率や地位に大きな影響を及ぼすことを実感しています。これらの経験から、教育政策に関する卒業論文を執筆しました。
なぜアメリカで就職せずに日本に帰国し、株式会社Chaiを設立されたのですか?
西澤:小5から中2を除き、21歳まで海外で育ちました。海外での生活では、日本人が少ない環境で育ったことで、自分が日本人としてのアイデンティティを強く意識するようになりました。そこで、大学院を卒業した後、日本に戻ることを決意しました。
起業の背景には、カリフォルニアのバークレー校での学部生活が影響しています。シリコンバレー近くの大学で学んだことで、周囲には自分でビジネスを立ち上げる友人が多く、スタートアップの立ち上げを手伝う機会もありました。この経験が、自分でも起業を試みたいという思いにつながり、最終的に日本での起業を決めました。
アメリカで日本人としてのアイデンティティを感じた場面を具体的に教えてください。
西澤:オリンピックやワールドカップなどの国際的なイベントがある際、自国を代表するような形で日本について話す機会が多くありました。日本のアニメや漫画が人気であること、また日本のニュース(例えば地震など)が話題になると、友人から日本の状況について尋ねられることが多かったです。日本人が少ない環境で育ったため、しばしば「日本人代表」として質問されることが多くありました。また、インターナショナルスクールでは、各国の文化を紹介する機会があり、食事や服装を通じて自国の文化を共有することがありました。これらの経験を通じて、自分が日本人であること、そして世界がどのように日本を見ているかを実感する機会がありました。
大学時代に専攻していたデータ分析は、現在の事業にどう活かされていますか?
西澤:データの力が非常に大きいと考えており、特にスモールビジネスをサポートする分野でその可能性を見出しています。コストの面で従来のコンサルティングが難しい場合でも、AIやデータ駆動のアプローチを活用することで、より効率的かつコストを抑えたサポートが可能になります。現在は、LINEを使ったプラットフォームを提供しており、テキストデータの分析や各ショップごとの適切なタイミングでの計測と提案が可能であり、このサービスにおいては、データの力は必要不可欠であると考えています。
BuyChatの利用イメージ
事業を立ち上げていく中で困難はありましたか?また、どのように乗り越えましたか?
西澤:起業において最も困難だったのはチームワークと採用です。21歳で日本に戻った時、日本に友人がほとんどおらず、興味を持ってくれる人もいない状況でした。そのため、チームメンバーを決める過程は特に苦労しました。
日本であれば、学生時代の繋がりや後輩などと一緒に起業する人がいるかもしれませんが、自分にはそのような機会がなかったため、チーム組成は特にチャレンジングでした。しかし、現在は早い段階でベンチャーキャピタルからの出資を受け、その繋がりを通じて採用やチーム作りに積極的に取り組んでいます。
LINEを活用したサービスを手掛けている中で、将来的には海外展開を考えていますか?
西澤:現在LINEを使用してビジネスを展開していますが、これを「ファーストステップ」と考えています。直近のミッションは、世界と競争できるコンテンツ、すなわちビジネスの製品開発力を強化することです。目標は、日本国内だけでなく、国外の顧客にもアプローチできる越境プラットフォームを構築することにあります。このプラットフォームを通じて、海外の人々にも製品やサービスを販売できるようにしたいと考えています。
海外展開で考えている次の国はありますでしょうか?
西澤:LINEを利用したビジネス展開の初期段階として、台湾とタイをターゲット市場として検討しています。日本のインバウンド市場では中華圏からの顧客が多く、円安の影響で欧米からの顧客も増えているため、これらの市場に焦点を当てる計画です。まずは台湾やタイなどのLINE利用国から始め、徐々に他のメッセージングプラットフォームへの展開を考えています。
また、日本の製品を海外市場で販売することにも興味を持っています。スマートフォンが広く普及している現代において、オンラインショップの最適な形態はウェブサイト完結型ではないという仮説を持っています。この考えは、日本のショップオーナーに限らず、世界中のショップオーナーにも適用できると思います。長期的には、日本だけでなく他国のビジネスにもサービスを提供できるように展開していきたいと考えています。
今後の意気込みをお願いいたします。
西澤:日本市場が難しいとは認識しつつも、国内の99%以上が中小企業であることから、このセグメントには大きなポテンシャルがあると考えています。この分野に全力を尽くし、力強く取り組む意向を持っています。この市場の潜在的な力を活かし、積極的にビジネスを展開していくことを目指しています。
ありがとうございました。
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