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2022年01月28日

海外トレンドレポート CES2022現地レポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。1/4~7にラスベガスで開催されたCESのレポート記事をお届けしたいと思います。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

コロナ禍の厳戒態勢のもとハイブリッド開催されたCES 2022

CESとは、Consumer Electronics Showの略称で、毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される世界最大級のテックイベントです。世界中の大手ネット企業、メーカー、スタートアップが一堂に集まりイベントを盛り上げます。

例年は約3800の出展者、17万人の来場者実績を誇るイベントでしたが、今年は開催直前にオミクロン株の流行によってGAFAMはじめ出展や参加を取りやめる企業が相次ぎ、出展者数は2300社程度、来場者数は4万人程度と、コンパクトな開催となりました。開催当日まで主催者や関係者の間では現地開催をするか否かの議論がされていたようですが、結局会期を一日短縮し、バーチャルとリアルのハイブリッド開催をすることで決行となりました。

会場では参加者全員にワクチン接種証明の提示を、国外からの参加者には24時間以内のPCR検査陰性証明を義務づけており、参加者全員にコロナ簡易検査キットが配布されました。CES開催地に往来する航空便もコロナ影響に鑑み便数を極端に減らしていたため、CESの往復便の予約が急に変更された、という話も参加者の間でよく耳にしました。

一色
波乱の中での開催でしたが、移動の際の渋滞や展示場の混雑はほぼありませんでしたので、その点は快適だったように思います。

CES主催者が発表する、注目すべき4つのトレンド

毎年CESの冒頭には主催者であるCTA(Consumer Technology Association)より今年のトレンドが発表されます。
今年のトップトレンドとして紹介されたのは、以下の4つの領域でした。

  • Transportation
  • Space Tech
  • Sustainability Technology
  • Digital Health


4トレンド

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それぞれの領域について、会場の展示などの様子などと共にお伝えします。
  1. Transportation:電気自動車(EV)、マイクロモビリティソリューション、ロジスティクスなど。

    将来的なソニーのEV事業への本格参入や、BMWのボディカラーが変わる自動車は日本でも大きく話題になったのではないでしょうか。各自動車メーカーからのEVの新モデルの発表だけでなく、ゼネラルモーターズがFedExやウォルマートと提携し、ECトラックをデリバリーに導入するなど、商用での利用も本格的に進んでいく兆しが見えました。

    また残念ながら展示はなかったですがLGのOMNIPODや、HyundaiのMetamobilityのように、車を単なる移動手段からエンターテイメント空間へと再定義したり、現実世界での移動だけでなく現実と仮想空間の移動もモビリティの役割として位置付けたりと、時代の変化に伴う車の役割の変化も感じることができました。

    日本からは、SkyDriveの空飛ぶクルマの実機が展示されており、注目を集めていました。ロジスティクス観点では、コロナの影響もあり、リテール向けの商品陳列ロボット、レストラン向けの配膳ロボット、お掃除ロボットといった、人材不足を解消しうるロボットの展示もちらほらと見受けられました。アメリカでは特に人材不足によるサプライチェーン問題が現在も深刻な状況ですので、これをカバーできるロボットの発展が期待されると思います。


  2. SkyDrive

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    J-Startupブースに展示されたSkyDrive。実機が大きいのでなかなかインパクトがありました。


    参考:HyundaiのMetamobilityのコンセプトムービー

  3. Space Tech:宇宙探査、宇宙旅行などの地球の大気圏外の活動で利用されるテクノロジー全般。 

    スペーステックは今年初めてCES展示ブースに専用のエリアが用意された注目の領域だったのですが、全体の会場の割合からすると見過ごしてしまうほど非常に小さいエリアで、展示ブースも数社しかありませんでした。ただし、宇宙空間における通信や研究開発などはまだまだイノベーションの余地があり、2030年に約1兆ドルの成長が見込まれる有望な領域ですので、今後も注目していきたいと思います。

  4. Sustainability Technology:代替エネルギー、フードテック、スマートシティ、スマートホームなど。

    今年のCESは業種・領域を問わずサステナビリティを意識した内容が非常に多かったように思います。
    中でも多くの人を集めていたのはSKグループの「Green Forest Pavilion」です。このブースでは商品はひとつも展示されていませんが、脱炭素化を意味し、同社が重点戦略に位置付けている「Net Zero」をコンセプトとして作られていました。

    ブース内では、中古の携帯電話端末を活用してポイントを集め、集めたポイントでゲームをしたり、環境保全活動へ寄付したりすることのできるコンテンツが用意されていました。また4面スクリーンを使って同社のマニフェストムービーが流されていました。

    現地の参加者の間で話題になったようで、最終的には7000人もの人が訪問し、私が見る限りはほぼ毎日ブース前には順番待ちの列ができていました。このようなブースは会場では異色でしたが、現地での話題化を見ていると、サステナビリティに関する人々の関心の高さを窺うことができました。この事例を見て、直接的な商品展示でなく同社の方針を落とし込んだストーリー性を感じられる展示方法も今後人気が出てきそうだと思いました。


  5. Green Forest Pavilion

    一色
    SKグループの展示ブースの様子。エコフレンドリーなコンセプトが外観だけで伝わるデザインでした。その他この領域には、スペーステックと同様に今年から新領域として展示エリアが設けられたフードテックがありましたが、目新しいものはそこまでなかったように思います。代替プロテインやデリバリー用のスマートロッカー、飲食店用のロボティクスなどがありました。
  6. Digital Health:ウェアラブル、メンタルウェルネス、治療ソリューションなど。
    ヘルスケアは例年通り今年も最も展示数が多く、全体の展示数の1/5にあたる417社が出展しました。
    その中でも私が特に多く感じたのはスマートマットレス、スマートピローなどのスリープテック系のプロダクト。その背景には、コロナ禍におけるストレスやデジタルデバイスの増加による、睡眠の質の低下があるようです。各社特長や機能は少しずつ異なりましたが、総じて睡眠の状態をトラッキングしてベッドの空気圧や温度、湿度などをコントロールし、最適な睡眠状態を実現するようなパーソナライズ機能をアピールするスマートマットレスが多かったです。


Anccil社:スマートマットレス

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Innovation Awardを受賞したスタートアップAnccil社のスマートマットレス。体重・体圧などをモニタリングするセンサーを搭載しています。

そのほか、マッサージチェアやメンタルヘルス、AIを活用したパーソナライズトレーニングなど、巣籠もり需要が高まる中での自宅での余暇時間に着目した商品が比較的多かったことも、今の時代背景を反映しているように感じました。
また、ペットの健康管理に役立つスマート水飲み器、新生児のモニタリングを行うスマートゆりかごなど、対象がより特定されるようなされたヘルスケアプロダクトも見られました。

もう一つの外せないトレンド「メタバース」

上記の4つのトレンドには含まれませんでしたが、CES主催者のKeynoteの中でもうひとつのテックトレンドとして今回初めて紹介されたのが、日本でも話題のメタバースです。


メタバース

実は会場ではメタバースに関する目立った展示はほとんど見当たらなかったのですが、イベントの中で大手企業が続々とメタバース事業への参入を発表しました。ソニーはPlaystation5と連携するPSVR2ヘッドセットとコントローラーを発表し、パナソニックは、VRヘッドセット「MeganeX」を含む3つのメタバース空間向けデバイスを今年春に発売することを発表しました。
このように日本勢が独自技術を武器とするハードウェア開発によるメタバース参入を発表したのに対し、海外他社はパートナーシップの推進によるメタバース参入を発表しています。

例えばサムスンは、メタバースPFであるDecentralandとの提携によるメタバース参入を発表しており、クアルコムはマイクロソフトと提携し、エンタープライズ向けメタバース「Microsoft Mesh」と連携したARグラスのチップ開発を発表しました。またメタバースと密接に関連するNFT分野については、スタートアップ約10社ほどの展示エリアが開設されており、メタバース上でNFTアートの購入体験が実際に試せるデモなどがありました。

ホットワードなだけあって、AIコンシェルジュやゲーム、血圧測定デバイスなど、一見すると関係ないように思えるプロダクトにもメタバースという言葉が積極的に使われ、会場のあちこちで発見することができました。メタバース関連の展示を楽しみにしていたので、会場展示が少なかったのは少し残念でしたが、周辺領域を含めてさらなる発展が期待される市場ですので、今後も各社の動きをウォッチし、何かおもしろいトピックが出てきた際にはこちらの記事などで紹介していきたいと思います。

最後に

一色
今回はCESレポートをお届けしました。私は今回が初めてのCES参加だったのですが、事前に聞いていたもののその会場の広さには圧倒させられました。出展キャンセルの影響でLGブースは椅子をたくさん並べた休憩所のようになっていたり、Panasonicは映像投影のみの展示になっていたり、スタートアップブースはいくつか穴が空いていたりと、なかなか例年のCESでは見られない貴重な光景を見ることができたように思います。
テックトレンドの他に気づいたこととして、韓国企業の出展がとても多く、国別の出展者数では、アメリカに次いで2番目に多かったようです。政府や大学と連携したブースがあったり、会場内で流れるプロモーションムービーでBTSを起用していたりと、このイベントへの注力度を窺い知ることができました。
日本もJ-Startupや福岡スマートシティなどの展示はありましたが韓国に比べるとこじんまりとしていたので、日本の企業やスタートアップがこうした世界的なイベントでもっと脚光を浴びられるようになれば良いなと思いました。
会場を見て回るだけでもテックトレンドが把握できたり、スタートアップと出会えたり、時代背景を感じることができたりして楽しかったです。今年はできるだけ現地のイベントに沢山参加したいと思っているので、また何かイベントに参加しましたらこちらの記事で報告できればと思います。

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