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2024年03月18日

SXSW2024参加レポートVol.1ーーテックトレンド発表

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

今回は、3/8~16にアメリカテキサス州オースティンにて開催された大型テックイベントSXSW 2024(South by Southwest / サウス・バイ・サウスウエスト、以下SXSW)について、3部作でお伝えします。

Vol.2:SXSW2024参加レポートVol.2ーースタートアップによるSXSW Pitch

Vol.3:SXSW2024参加レポートVol.3ーー体験・展示ブース


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

SXSWとは

SXSWは、アメリカテキサス州オースティンにて毎年春に開催される、テクノロジーと音楽・映画の祭典として知られる大型イベントです。 私にとっては、2022年、2023年に続き、今年3回目の参加となりました。元々は音楽関係者のイベントとし1987年に開始された当イベントですが、近年はIT企業幹部やスタートアップ、政府関係者、アーティストなど幅広い参加者が集うイベントへ成長し、今年も様々なバックグラウンドを持つ人々で会場は賑わいました。

今年のテーマは「Looking for the future」とされ、現在世界中でホットトピックとなっているAIをメインに、ヘルスケア、トランスポーテーション、ゲーム、XRなど、各分野における将来展望とリスクなどが語られました。


▲SXSW2024のスケジュール。今年はAI・クリエイターエコノミーのトラックが新たに追加されました。

SXSWと言えば、街のいたるところに派手で大規模企業の展示ブースが数日単位で出没し、イベント参加者の楽しみの一つとなっているのですが、今年は例年に比べてスポンサーや企業の大規模で派手な出展が大きく減少していたように思いました。参加していたVCや企業関係者らも、口々に、例年と比較して少し寂しい印象だと話していました。

一色
この背景には、AI需要の増加に伴い業績が好調な一部半導体企業を除き、テック企業を中心とする業績停滞が影響していると考えることもできるかもしれません。

Amy Webb氏による2024年のテックトレンド発表

SXSWの定番となっている、未来学者Amy Webb氏が、今年も2024年のテックトレンドレポートのリリースと共にSXSWの舞台に戻ってきました。彼女は新しい“テックスーパーサイクル”が到来しつつあるとし、それはAI、connected ecosystem of things(モノのコネクティッドエコシステム)、バイオテックの3つの融合によってもたらされる、と説明しました。

“テックスーパーサイクル”とは、商品や資産の価格を前例のない高さまで上昇させる好況期の長期化」を意味する経済用語で、このスーパーサイクルは数年から場合によっては数十年にわたって続き、経済に大きな変化をもたらす可能性があると述べました。

注目されるAI—肯定派に対するブーイングも

著名な学者や政治関係者、スタートアップ経営者などが登壇するセッションの中で、最も多く取り上げられたテーマはやはり「生成AI」でした。ここで気になったのは、AIによる技術発展に対して肯定的な意見が語られる一方で、慎重な意見や警戒論を述べる有識者も多かったのですが、会場では後者も歓迎されているように見受けられたことです。この原因の一つとしては、SXSWの参加者にクリエイターが多く含まれることにも関連すると想定されます。
イベントの中で注目されたセッションとその内容について、以下に簡単にまとめたいと思います。

今回の目玉となったセッションでは、ChatGPTの製品責任者であるPeter Deng氏が登壇し、会場は長蛇の列ができました。Deng氏は、Open AIのミッションは「AIの恩恵を全人類に分配することである」と述べ、その理念に基づき、ChatGPT無料版は常に提供と語られた際には会場から賛同の拍手が起こりました。

一方で、 「AI は根本的に人類をさらに人間的にしてくれるものだと思っている」との肯定的な発言に対しては、ブーイングが起こるような場面もありました。また、「AIのトレーニングに使用されたアーティストの作品は、その貢献に対して報酬を受けるべきか?」という質問には、良い質問だと答えるのみではっきりとした回答をせず、この点も会場の一部の聴衆から批判されたようです。


▲Open AIのChatGPT製品責任者Deng氏(右)によるセッション。会場は超満員のため列に並んだにも関わらず会場に入れない人も大勢いました。

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サム・アルトマンの電撃解任に始まった騒動についての質問についても注目が集まりましたが、「No problem」と回答し一蹴しました。

一方、欧州委員会のExecutive VPであるMargrethe Vestager氏は、人類の安全確保のためにAIの規制の必要性について主張し、聴衆の賛同を集めました。欧州委員会は、先日Appleに、音楽ストリーミング配信競争を阻害したとして20億ドルもの罰金を科すなど世界で最も強力な規制当局であり、いわゆるテック業界の天敵として知られる存在です。

しかし実はSXSWの常連でもあり、同氏は、今年のSXSWコミュニティサービスアワードで「殿堂入り」を果たしました。このようなテクノロジーの祭典で、こうした規制派閥が受賞するというのは少し奇妙な感じがしますが、AIの浸透と発展のスピードはすさまじく速いため、関連する規制も追随する必要があるということを改めて認識させられました。

また、AIのOpen化に関する議論や、AIと著作権についての考え方についてのセッションなど、AIについては様々なトークテーマが用意されました。その他のセッションは、半導体大手のAMDのCEOや、ライドシェアのUberのCEO、自動運転のWaymoのCo-CEOなどが登壇し、各社の将来構想などについて触れました。

一色
続いては、スタートアップピッチについてお届けします!

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