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2026年02月20日

世界最大級のテクノロジー見本市!CES 2026ー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、海外スタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動している。このコーナーでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどを、KDDIアメリカのメンバーよりお送りする。今回は、2026年1月6日から9日までアメリカのラスベガスで開催された「CES 2026」の参加レポートをお届け!


中川 惇太KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDI Open Innovation Fund のサンフランシスコ拠点で、日本市場への進出に関心を持つ海外スタートアップとの協業や投資機会の探索に取り組む。また、国内外の投資先のサポートや MUGENLABO Magazine の制作にも携わる。趣味はサッカーや野球などのスポーツ観戦で、最近は米国のノンアルクラフトビールの飲み比べが楽しみ。

CES概要

CESは、CTA(全米民生技術協会)が主催する、世界最大級のテクノロジーカンファレンス。
2026年の開催では、世界160の国と地域から4,300社を超える企業が集結した。来場者数は前年の14.2万人を超える規模となり、グローバル企業の経営層が一堂に会する変革の場となっている。

ハイライト -「IX(知能化)」と「フィジカルAI」の実装フェーズへ

CTAから発表された今年のCESのイベントテーマは、 「Innovators Show Up(イノベーターが現場に現れる)」。このテーマには、「イノベーションは構想やスローガンではなく、当事者が現場に来て、体験し、議論し、協業することで初めて前進する」という強いメッセージが込められている。このテーマのもと、AI、デジタルヘルス、モビリティ、ロボティクスなど、多岐にわたる分野で「社会実装」を強く意識した革新的な製品が紹介された。

CTAがCES開催前に行ったKeynoteの中では、2026年のメガトレンドとして「Intelligent Transformation(IX:知能化による変革)」、「Longevity(長寿・健康寿命の延伸)」、「Engineering Tomorrow(未来を設計する工学技術)」の3つの柱が提示された。なかでも「IX」は、過去20年のデジタルトランスフォーメーション(DX)から進化した概念であり、インフラそのものが最初から「知能」を前提として再設計されるパラダイムシフトを指す。

昨年に引き続き最大注目トレンドは「AI」だが、今年は生成AIのブームをさらに一歩進めた「Physical AI(フィジカルAI)」が会場を席巻した。これは、仮想空間で学習したAIが現実世界の物理法則を理解し、自動運転車やロボットといった「ハードウェア」を介して自律行動する技術を指す。特に、AIが自ら考えて行動理由を説明する「推論型」のモデルが、様々な車両やロボットに統合されていた。

注目展示

今回のCESでは、LVCC North会場を中心にフィジカルAIの「社会実装」を象徴するような展示が各エリアで目立った。

  1. Lucid × Nuro × Uber


    展示の様子

    量産仕様のロボタクシー車両を公開。LucidのEVをベースに、Nuroのレベル4自動運転技術と、Uberがデザインした専用の車内体験を統合している。車両上部のLED「ハロー」に乗客のイニシャルを表示して識別を容易にするほか、車内のスクリーンでAIの認識状況をリアルタイムに可視化し、乗客に安心感を提供。2026年末にアリゾナ工場での生産開始を予定している。

  2. Tensor × Lyft


    展示の様子

    「AIファースト」を掲げ、最初から自動運転を前提に設計されたL4 Robo carを公開。NVIDIAの計算プラットフォームを採用しており、Lyftの配車ネットワークと連携することで、個人所有の車両でも配車サービスを通じて収益化が可能という新しいビジネスモデルを提示している。2026年末の初期出荷を目指す。

  3. TIER IV


    展示の様子

    オープンソースの自動運転OS「Autoware」を主導する同社は、説明可能性と安全性を重視した「ハイブリッド型」の自動運転モデルを展示した。ルールベースとニューラルネットワークを組み合わせることで、AIの判断を別レイヤーで検証・チェックできる構造となっており、事故時の原因究明が可能な設計であることを強調した。

  4. LG


    展示の様子

    家庭用ヒューマノイドロボット「CLOiD」を披露。洗濯物の投入や折り畳み、配膳といった家事タスクをデモ実演し、大手テック企業としてサービスロボットを家庭に普及させるビジョンを示した。

  5. SwitchBot


    展示の様子

    家庭用ヘルパーロボット「Onero H1」を展示。洗濯機の操作や窓拭き、飲み物の提供などの家事を自律的にこなす様子を公開し、2026年内に1万ドル以下での販売を目指す実用的な計画を発表した。

  6. VenHub


    展示の様子

    完全自動化されたスマートストア(無人店舗)を公開。防弾ガラスと鋼鉄で構成された堅牢な店舗ユニット内で、ロボットアームがアプリ経由の注文をピッキングし、顧客に商品を提供。ロサンゼルスでは既に5店舗が稼働しており、次世代のリテール体験として注目されている。

注目セッション

半導体大手の発表が、Physical AIの進化を強力に裏付けた。NVIDIAは、物理法則を理解する世界基盤モデル「Cosmos(コスモス)」や、自ら思考し説明する自動運転のオープンソース基盤モデル「Alpamayo(アルパマヨ)」を発表。一方、AMDもAI PC向けの「Ryzen AI 400シリーズ」や、ラック単位でAIを動かす基盤「Helios(ヘリオス)」を披露し、あらゆる環境でAIが機能するインフラを提示した。
こうした強力な計算基盤が整う中、技術の「現場実装」をテーマにした以下のセッションが注目を集めた。

Intelligence Through Motion: AI Takes Physical Form


セッションの様子

このセッションには、NVIDIAのRobotics & Edge AI担当VPであるディープ・タラ氏をはじめ、医療支援ロボット「Moxie」を展開するDiligent Robotic、人型ロボット「Digit」を開発するAgility RoboticsのCEOらが登壇。AIという「魂」が、いかにして工場や病院といった「身体(ロボット)」を通じて実社会の価値を生むかが議論された。

議論の核心は、ロボティクスには「トレーニング用」「推論(脳)用」「シミュレーション用」の3つのコンピュータが不可欠であるという点である。特に、NVIDIA Omniverseなどのデジタルツイン環境の精度向上により、シミュレーション上の挙動を現実でそのまま再現できる「Sim-to-Real」の転換点に達し、従来は数十年を要したテスト期間が劇的に短縮されたことが示された。
一方で、現場実装における「ロングテール」な課題も共有された。Agility Roboticsが物流現場で直面した「埃っぽく滑りやすい床」や、Diligent Roboticsが病院で遭遇した「予測不能な人間の動き」といった例外事象への対応こそが、PoCからスケールアップへの最大の壁となる。

ロボットを単なる「光るおもちゃ」に終わらせないためには、明確なKPIに基づく統合が不可欠であり、例えば、25以上の病院で計8万マイル以上を走行する「Moxie」が、看護師のラボへの往復などの歩行距離を削減し、その投資対効果(ROI)をデータで証明した例が挙げられた。最終的に、ロボットをビジネスプロセスへ深く組み込み、「現場で共に汗を流すチームメイト」として信頼を築くことこそが、真の社会実装の鍵であると結論づけられた。

最後に

今回のCESは、AIが社会を支える「インフラ」としてあらゆる産業に溶け込んだ様子を実感することができた。従来のDXから、インフラそのものを最初からAI前提で再設計する「知能化(IX)」へとパラダイムシフトが進んでおり、新規プロダクトを検討する上でAIはもはや欠かせない「前提条件」になっている。
なかでも、自動運転とヒューマノイドロボットの領域における進展は、技術が「構想」から「社会実装」へと移行し始めていることが示された。NVIDIAの「Alpamayo」をはじめとするオープンソースの基盤モデルやシミュレーション環境の普及は、今後の産業構造を大きく変える要因となる。ビッグテックとスタートアップの共創、そしてオープンソースが加速させる技術の民主化が、既存のエコシステムをどう拡張し、どのような新規プレイヤーの台頭を促すのか、引き続き注目していきたい。

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