- 海外トレンドレポート
2023年01月11日
世界最大級のテックイベントCES 2023参加レポートVol.1ーー4つの注目トレンド
KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。今回は、1/5~1/8にアメリカ・ラスベガスにて開催された世界最大級のテックイベントと言われるCESの参加レポートを三部作でお届けいたします。
CES2024の参加レポートはこちら
・世界最大のテックイベントCES 2024参加レポート【前編】ーーあらゆる業界のAI活用
・世界最大のテックイベントCES 2024参加レポート【後編】ーーモビリティの動向
- 一色 望KDDIアメリカ
- 本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。
例年規模に復活したCES
CESは、アメリカ・ラスベガスにて開催される世界最大級のテック展示会です。毎年恒例のイベントで、年始早々の開催にも関わらず世界中からたくさんの人が訪れます。
昨年はちょうどオミクロン株の影響によって、大手企業の直前キャンセルが相次ぎ、 来場者数は4万人程度と極めて小規模な開催でしたが、今年は約11.5万人が参加し、3年ぶりのフルスケールでの開催となりました。
私は昨年初めてCESに参加したのですが、どの会場も展示ブースの埋まり具合は7割ほどで少し閑散としていた印象だった反面、今年は会場もラスベガスの街自体も混雑しており、ようやくパンデミック前の規模に戻ってきたような感覚がありました。
今年はイベントに初めてテーマが設定された年でもあります。そのテーマは「BE IN IT」。Covid-19をはじめとする世界中のあらゆる課題に対し、テクノロジーやイノベーションによって共に解決していくという主催者のビジョンが込められているそうです。
会場の至るところに「BE IN IT」の文字が見られました。
CTAが発表した今年注目のトレンド
例年にならって、今年もCESの主催者であるCTAより、テクノロジー市場の概観と注目のトレンドについて発表されました。
CTAは、現在の世界的な景気後退を2008~2009年のリーマンショックに端を発する不況期と重ね合わせ、2008~2009年には4G LTEやスマートフォン、タブレット、ネットブックなどのコンシューマテック領域のイノベーションが加速したように、2023年には5G、コネクテッドインテリジェンス、自律システム、量子コンピューティングといったエンタープライズ向けのイノベーションが加速すると述べました。
さらに、基調講演の中で特に注目されたキーワードとして、以下4点が挙げられます。
- メタバース(Metaverse of Things)
昨年のCESでホットなテックトレンドの一つとしてCTAから発表されたメタバースですが、2023年には次世代のオンライン体験として、「あらゆるもののメタバース化」が社会に浸透するとし、その概念をMoT(Metaverse of Things)として発表しました。CTAは、メタバースを「1990年代初頭のインターネットと同じ存在」と位置付けており、数年後のインフラになることを示唆しました。
また、メタバースの戦略として、エンターテイメントやソーシャル性が重視される主にコンシューマ向けの仮想体験と、作業シュミレーションや没入型マーケティングを重視するエンタープライズ向けのイマーシブ体験の双方が推進されると述べました。昨年のCESの基調講演ではメタバースについて触れられたものの深く語られることはなかったのですが、今年のメタバースの語りぶりやMoTという新たなワードの発表から考えると、CTAはメタバースの普及にかなり自信を持っていると言えると思います。
今やワードとしてはすっかり普及したIoTの次にMoTが日常化するのかどうか、消費者としても数年後の未来が楽しみですね。
- 移動手段(Transportation)
交通関連では以下の3つのテーマが示されました。
・EVおよび電力システムの進化
・自動運転とアプリケーションの進化
・車内体験のトランスフォーメーション数年前からCESの一大カテゴリとして展示の多くを占めるようになったモビリティ関連のブースですが、今年はこのジャンルだけで約300もの出展があり、展示ブースは売り切れとなったそうです。
また、車内体験については、Screenification(車内のあらゆる部分にスクリーンが搭載されること)やボイスコントロール、5GによるV2X通信、エンタメサービス、FaaS(Features as a Service、車内の各機能をサービス化していくこと)などの新たなキーワードが発表されました。
- ヘルスケアテクノロジー
ヘルスケア領域においては以下の3つのテーマが示されました。
・デジタル治療:慢性的な健康管理のための新しい方法
・オンライン診療:24時間体制のオンライン診療やオンライン薬局
・フィットネステック:宅トレ体験を変えるコネクテッドエクササイズやスポーツ用品また、ヘルスケアのイノベーションにおける新たなフロンティアとしては、オンデマンドネットワーク、メンタルウェルネス、VRの3点が挙げられ、最新の技術を活用することによってより便利かつ広範なデジタルヘルス体験を提供できる可能性があることについて述べられました。
- サステナビリティとESG
この領域で注目したいテーマとしては、スマートグリッド、サプライチェーン、アグリテック/フードテック、クリーンテック、代替エネルギー、リサイクルテクノロジー、など多くの技術が発表されました。
昨年の同じ基調講演の中でCTAから発表された注目トレンドは、Transportation、Space Tech、Sustainability Technology、Digital Healthの4つでしたので、比較するとSpace Techがメタバースに取って代わったものの、その他の領域については引き続き注目の領域として残っていることがわかります。
CTAの基調講演資料(以下HPより引用)https://jp.pronews.com/special/202301041750366292.html
CTAの基調講演資料(以下HPより引用)https://jp.pronews.com/special/202301041750366292.html
次回の後編レポートでは、各トレンドごとの展示内容についてお届けします。ぜひご一読いただければと思います。
(後編に続く)
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