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2025年11月13日

“旅をもっと軽く、もっと自由に” KDDI × Bounceが描く、手ぶら観光の新しいかたち

Bounce
森本 小夏
日本マーケティングリード
KDDI株式会社
小林 泰斗
オープンイノベーション推進本部

訪日観光客の急増で深刻化する「ロッカー不足」――。

そんな社会課題に挑むのは、通信大手KDDIと、世界4,000以上の都市・35,000拠点超で展開されている米国発の手荷物預かりサービス「Bounce」。KDDI直営店に日本初のBounce専用ロッカーを導入し、インバウンド観光の新しい体験づくりが始まった。

現場でプロジェクトを率いるKDDI オープンイノベーション推進本部の小林 泰斗氏と、Bounce 日本マーケティングリードの森本 小夏氏に、提携の戦略的背景と、描く未来について話を聞いた。


出会いは「課題解決」への共感から

KDDIがBounceにコーポレートベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じて出資したのは2024年。この関係は1年を経て、リアル店舗での共創へと発展した。
「きっかけはVC経由の紹介でした。Bounce側も日本でCVCパートナーを探していて、私たちのリアル店舗のアセットを提案したんです」と小林氏は振り返る。

スマホだけで荷物を預けられるというBounceの仕組みは、まさにシェアリングエコノミーの文脈にある。AirbnbやUberに続く“ネクストシェアリング”の有力分野として、KDDIは早くから注目していたという。
小林氏は提携の狙いをこう語る。「日本では訪日客の増加とともに、荷物を一時的に預ける場所の不足が顕在化していました。そこに私たちの店舗という“街の拠点”を活かすことで、旅行者の体験価値を高められると考えたのです」


KDDI株式会社 オープンイノベーション推進本部 小林 泰斗氏

日本市場で求められる「安心感」と「品質」

Bounceを日本で拡大していくにあたり、森本氏は日本市場特有の期待と課題の両方を肌で感じてきた。「日本には“高品質なサービス文化”が根付いています。私たちはその期待に応えるために、グローバルチームと日本チームが設計段階から密に連携してきました」
そうした要求に応える形で生まれたのが、日本初のBounce専用ロッカーだ。
1予約につき最大100万円の補償、11言語対応の24時間サポート、アプリやウェブサイト上で完結するキャッシュレス決済。
“訪日外国人にもシームレスな体験を”という思想が細部にまで反映されている。

森本氏は「訪日外国人にとっては、“どこでも・言語の壁なく・すぐ使える”というのが重要。QRコードを見せるだけで預けられるシンプルさは、旅行者にとってストレスフリー。アプリ1つで“荷物の自由”を手に入れてほしいんです。」と、日本市場に合わせた工夫を強調する。


サービスイメージ

KDDI直営店が“旅の起点”になる日

KDDIが直営店にBounceを導入した背景には、店舗体験を「旅の起点」へ進化させたいという狙いがある。
「au Styleは駅近などアクセスの良い立地にあります。スマホの契約やpovoのSIM購入のついでに、荷物を預けて観光に出かける――そんな流れをつくりたかったんです」と小林氏。
直営店のリアルアセットの価値を最大化し、新たな収益源と顧客接点を生み出す戦略だ。

森本氏も「信頼あるブランドとの協業が、Bounceの日本定着に欠かせない」と語る。「まだ私たちは日本で新しい存在です。KDDIさんのような信頼を得ている企業と組むことで、利用者の安心感を高め、日本市場に根を張るきっかけにしたいと思っています」

共創がもたらす「地域への好循環」

単なる利便性にとどまらず、両者が見据えるのは地域経済への好循環だ。
「荷物を預けることが、地域の店舗と観光客をつなぐ“接点”になる。例えばカフェで預けたお客さまがコーヒーを買う――そんな形で地域に還元できるのが理想です」と森本氏。Bounceの手荷物預かり拠点は、インバウンドがまだ盛んではない地方にも拡大しており、地域活性化への貢献も視野に入れているという。

小林氏もこれに頷く。「KDDI直営店というリアル拠点を通じて、スタートアップと地域が共に価値を生み出す。それが“共創”の本質だと思います」
この共創モデルは、海外の優れたテクノロジーを日本の社会課題解決のために迅速に導入し、KDDIのアセットを通じて市場へ展開するという、CVC戦略における成功モデルとしても位置づけられる。

「旅を、もっと軽く。」 そしてその先へ

インタビューの終盤、森本氏がこう締めくくった。
「旅行だけじゃなく、ちょっとした外出でも“荷物を預けよう”と思い出してもらえるようにしたいんです。日常の中にもBounceを浸透させていきたい。」
その言葉に小林氏が続ける。「今回の導入を起点に、他の直営店やKDDIグループの資産にも広げていければと思います。旅行者にも地域にも、より多くの価値を届けたいですね。」

通信事業の枠を越えたKDDIの挑戦と、世界中の旅人を支えるBounceの挑戦。2社が手を取り合うことで、「手ぶらで旅する未来」が現実に近づいている。


Bounce 日本マーケティングリード 森本 小夏氏

取材後、両氏が残したのは「ロッカーがある街には人が集まる」という言葉だった。
テクノロジーで観光をアップデートするというテーマは、単なる技術革新ではなく、「人が動き、街が変わる」仕組みそのものなのだ。
手ぶらで旅する未来――その実現が、今ここから始まっている。

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