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2024年12月13日

生成AIが"10秒"で インフルエンサーを提案ーーどう変わる?BitStarとKDDIが描くクリエイターエコノミーの未来

株式会社BitStar
出水 厚輝
執行役員CPO

インフルエンサーマーケティング市場は2024年に860億円、2029年には1,645億円規模への成長が予測される中、企業が直面する最大の課題は適切なインフルエンサーの選定でした。この課題に対し、インフルエンサーマーケティングのプラットフォーム「BitStar Match」を展開するBitStarは、KDDIと共同で画期的な解決策を打ち出しました。


生成AI技術を活用し、SNSの投稿内容を詳細に解析、わずか10秒で最適なインフルエンサーの提案を可能にした新システムの開発です。12月4日からサービス提供を開始した同社の執行役員CPOを務める出水厚輝氏に、新技術の詳細と目指す未来を伺いました。


生成AIが変えるインフルエンサーマッチング

世の中のAIツールの多くは、結果が出るまでに30秒から1分かかります。しかし私たちの技術では約10秒です。過去の検索結果はキャッシュで保存されるため、2回目以降はさらに高速になります。

出水氏

BitStarの出水氏は、新たに開発した生成AI技術の特徴をこう説明します。従来のインフルエンサーマーケティングプラットフォームでは、SNSで開示される基本的な属性情報(プロフィール内容や位置情報など)や、視聴者・フォロワーの属性(性別や年齢層など)のみを基準とした検索が一般的でした。しかし、新技術では投稿される写真や映像を生成AIで解析し、そのデータをプラットフォーム上に蓄積しています。その結果、柔軟な検索が可能になるのです。

例えば「缶ビール」のプロモーションをするのに適したインフルエンサーを探す際、AIが画像と文章を合わせて解析できるので、Instagram上で缶ビールを持って撮った写真を多く投稿している人を見つけるといったことが可能になります。

従来のインフルエンサーマッチングでは、企業が商品やサービスと親和性の高いインフルエンサーを見つけることが困難で、効果のブレが大きいことや、再現性が低いことが課題となっていました。

それがSNS上での発信内容をAIで分析することで、狙ったターゲティングが可能となるのです。つまり施策実施前には、企業の商品やサービスと関連性の強いキーワードを抽出し、細かい粒度でターゲットとすべき顧客の興味関心の高いインフルエンサーを選定することができ、施策実施後は選定時と同じ粒度で商品やサービスに関するSNS上での反応を比較できます。

データで読み解くインフルエンサーの「文脈」

創業から10年、インフルエンサーマーケティング市場を牽引してきたBitStarですが、出水氏は業界の現状を「例えば美容領域ではインフルエンサーマーケティングが浸透しているが、一歩外れると限定的」と分析します。

この状況を打開する可能性を秘めているのが、今回開発された生成AI技術です。KDDIが運営する「KDDI Open Innovation Fund」からの出資を受け、両社の協業によって実現したこの技術は、すでに通信業界という新領域で成果を上げ始めているといいます。

KDDIさんのプロモーションを通じて、契約系の商材という新しい切り口が見えてきました。メーカー系商材やゲーム系が中心だった私たちにとって、これは大きな発見でした。

出水氏

実際、KDDIグループの様々な商材やサービスで新技術のテスト導入を進める中で、新たなニーズや可能性が見えてきたといいます。従来は見つけるのが難しかった「複数台のタブレットを活用している人」や「携帯料金プランを工夫している主婦」といった、特定の文脈に沿ったインフルエンサーの発掘が可能になりました。

出水氏は、新技術がもたらした最大の変化が「文脈」にあると説明します。生成AIによるコンテンツ解析は、単なるキーワードマッチングを超えた、文脈に基づくマッチングを可能にしています。従来のインフルエンサーマーケティングでは捉えきれなかった、投稿の流れを読み解くことで、新たなマッチングの可能性が広がっているのです。

例えば、KDDIのau/UQ mobile/povoのプロモーションでは「つながりやすさ」の訴求によるイメージ向上施策において、この手法が効果を発揮しました。キャンプ、ゴルフ、ゲームといった様々な生活シーンに適したインフルエンサーを、AIに基づいて選定。結果、生活スタイルの異なる幅広いターゲットに対する深い理解促進につなげられたのです。

マイクロインフルエンサーが築く新しい経済圏

現在、BitStarの運営するプラットフォーム「BitStar Match」は、国内60万件以上、海外を含めると150万件以上のインフルエンサーをキャスティングできる規模にまで成長。その多くを占めるのが、いわゆるマイクロインフルエンサーたちです。

現在のリリースはクライアント向けのツールが中心ですが、次のフェーズとしてクリエイター側のコミュニティ作りを進めています。特にマイクロクリエイターの方々に対して、より多方面での価値提供を目指しています。

出水氏

具体的な支援策は、大きく3つの方向性で展開しています。
まず、企業からの案件の提供を通じたクライアントとの関係構築支援です。次に、個人事業主や副業として活動する方々への事務的なサポート。そして、金融面でのサポートです。

ある程度の規模のインフルエンサーでないと、ブランドの開発などはできません。しかし、より小規模なクリエイターの方々にも日々の案件を通じてクライアントとの関係を深めたり、個人事業主としての運営をサポートすることで持続的な活動を支援できると考えています。

出水氏

この取り組みの先に出水氏が描くのは、クリエイターエコノミー全体の拡大です。

クリエイターさんがどんどん育っていって企業からも依頼をしやすくなる。そういう好循環を生み出していきたいです。

出水氏

今回開発された生成AI技術は、マイクロインフルエンサーの可能性を広げる強力なツールとなりそうです。投稿内容の詳細な解析により、フォロワー数だけでは見えてこない、それぞれのインフルエンサーの強みや特徴を可視化できるようになりました。

規模は小さくても、特定の文脈や場面で強い影響力を持つインフルエンサーたち。彼ら・彼女らが築く新しい経済圏は、インフルエンサーマーケティング市場のさらなる成長エンジンとなるかもしれません。

KDDIの担当者コメント

KDDI株式会社 渉外・コミュニケーション統括本部 後舎 満氏

まずインフルエンサーマーケティングに取り組む背景として、お客様のメディアへの接触時間が年々増加しており、そこから得られる情報量もどんどん増えているということがあります。
そのような情報過多な環境下において、企業発信のコミュニケーションだけではお客様に中々情報が伝わりづらいことから、情報の「信頼性」や「共感・ジブンゴト化」という部分をより意識したコミュニケーション活動を行ってきており、これまでのマスプロモーションに加えて、中立的な立ち位置にいる方を通じた発信や、いわゆる界隈と呼ばれるコミュニティ等にもバランス良くコミュニケーションを行うための1つの手法としてインフルエンサーマーケティングに取り組んでいます。

そんな中、BitStar様には当社がコミュニケーションしたいお客様はどのようなメディアによく触れているのかや、どのようなことに関心を持っておられそうかを分析し、最適なインフルエンサーのアサインとクリエイティブの制作を実施頂きました。
インフルエンサーのアサインにあたっては、BitStar Matchを活用して単純なフォロワー数だけではなく、PR案件における実績と、お客様の興味や関心毎との適正を加味したアサインにより、インフルエンサーの皆さまの得意な領域を最大限活用させて頂きながら、かつその世界観を崩さないようなクリエイティブ制作に繋げることができました。結果お客様に違和感を与えることなく自然な形でのサービス訴求を行えたことで、従来よりも成果を高めることに繋げられたと思います。

今後はマスプロモーションやその他手法も含めた全体コミュニケーションの中で最もインフルエンサーマーケティングが活きるポイントはどこか?その際の最適な評価指標をどう定義し効果的にPDCAを回すか?という点に関してはまだまだ課題が存在しますので、そういった部分を1つ1つクリアにしていきながら、お客様からより信頼と共感を得られるようなコミュニケーション活動に一緒にトライしていければと考えております。

KDDI株式会社 渉外・コミュニケーション統括本部 後舎氏

KDDI株式会社 事業創造本部 門出 顕宏氏

BitStar様との取り組みは、povoへのご加入促進に向けたプロモーション施策をご一緒させていただくところからスタートしました。

複数のパートナー企業様と、マスプロモーション含め様々な施策を実施してまいりましたが、サービス・商品の多様化が進む現代において、興味・関心の喚起や理解・販売の促進につなげることが難しいという課題を抱えていました。
その中で、社会全体として、自身が親近感を持ち、参考にしている「人」から発信される情報に信頼性を感じているという点と、視聴メディア全体におけるSNSの利用時間割合が増加しているという点に着目し、povoプロモーションにおけるインフルエンサー活用を開始しました。

BitStar様には、独自に収集されている国内最大規模のインフルエンサーデータを基盤とした企画の提案、施策を実施いただき、データドリブンでの成功事例を創出いただきました。

この度、12月3日にニュースリリースを公表させていただきましたが、KDDIのサービスにおける実証を経て、BitStar様の保有するデータ基盤を生成AI活用により、さらに精度向上させた「BitStar Match」を共同開発いたしました。
求めている人に求めている形で信頼できる情報を発信し、企業と消費者、さらにはクリエイターがWin-Winの関係性を築き上げるために、インフルエンサーマーケティングの重要性はますます高まっていくと考えます。

今後、インフルエンサーマーケティングの活用が浸透・拡大していく上で、クライアント様自身で簡単に親和性の高いインフルエンサーを発見でき、効果が得られる再現性のある施策を継続的にオペレーションできる仕組みを作ることが必要であると考えます。
今回、BitStar様と一緒にその一歩目を踏み出しました。
生成AI活用を推進するKDDIの技術活用をさらに進めていくことで、誰でも簡単に効果的なインフルエンサーマーケティングを実施できる未来を一緒に実現したいと思っています。

KDDI株式会社 事業創造本部 門出氏

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