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2023年12月06日

実店舗連携の現実の店舗を再現したバーチャル店舗でショッピングができる「αU place」、担当者に聞いた立ち上げまでの1年間と今後の展望

KDDI株式会社
藤城 大樹
事業創造本部 XR推進部

KDDIは、10月24日に現実の店舗を再現したバーチャル店舗でショッピングができる「αU place」の提供を開始しました。αU placeは、実店舗の空間を商品陳列から内装の雰囲気まで忠実に再現しており、利用者は最新の展示を見ながら買い物することが出来ます。初期提供店舗としては、「無印良品 銀座」「Lui’s/EX/store」「ポケユニ ハラジュク」「2G POPUP STUDIO」「ヒョウベイ」「au Style SHIBUYA MODI(au Style バーチャル店)」の6店舗が利用可能です。


αU placeは、実店舗とネットの良さを融合させ、新しいショッピング体験を提供することを目指しています。ネットだけでは商品のイメージがわからない、または店員に相談したいという人々に向けたバーチャルショッピングサービスです。実店舗の空間をバーチャル上で忠実に再現しているため、実店舗ならではの工夫や注目ポイントを知ることができます。さらに、欲しい商品をタップすると実際にその商品を購入することも可能です。


KDDI 事業創造本部 XR推進部の藤城大樹さんに、αU placeが目指すもの、立ち上げに至った背景などについて話を伺いました。


αU placeの概要を教えてください

藤城:αU placeは実際に存在するお店をバーチャル空間に表現しているため、お店の内装でお客様に印象を伝えることが多いブランドや、空間づくりにこだわっている店頭などをそのままお客様に届けられる点が大きな特徴です。

用意された空間の中におすすめの商品などを配置でき、そこから店舗のECサイトで物を買うところまで体験できるサービスになっています。店舗がお客様に注目してもらいたい推しの商品が一目でわかるようになっており、従来のeコマースより体験価値が上がることを目指しています。

店舗にとっては消費者がお客様ですが、我々KDDIにとっては店舗もお客様です。店舗に立つ皆様に技術的な知識がなくても、スマホアプリを使って手軽に自身のお店を再現できる仕組みも合わせて提供している点が、αU placeの特徴の一つだと思います。


事業創造本部XR推進部 藤城大樹さん

αU placeの立ち上げの背景を教えてください

藤城:以前は、リアルの街中でARを使ってアイテムやコンテンツを表現する取り組みを行っていました。その過程で、自分の位置やどこに建物があるのかを空間で把握する技術が進化してきて、それをお店の中や室内に落とし込むとどうなるだろうと検討し始めました。

そしてちょうど1年前、都市連動型のメタバースの一つとして「バーチャル渋谷」を発表しました。その時に実在する店舗の中を再現して、バーチャルから来たお客様とリアル店舗の店員さんが位置情報を共有しコミュニケーションするという取り組みやコンセプトを発表してみたところ、とても良い反応をいただきました。

お店の内装や雰囲気を大事にしている店舗の方々から価値として感じてもらえたため、そこを中心にサービス提供できるよう検討し始めたという流れが、αU placeの立ち上げ背景です。


au Style SHIBUYA MODI(au Style バーチャル店)の再現

昨年10月のコンセプト発表から今回の正式リリースに至るまでの1年間、大変だったことはありましたか

藤城:昨年10月のコンセプト発表の段階では記者向けの発表会用としてイベントに特化していたので、再現しやすい商品や空間を我々で調整して作っていた部分がありました。しかし、実際のサービスとして提供する場合には、我々が想定していないお店の広さだったり、陳列に様々なパターンがあるため、商品の配置に工夫が必要でした。

さらに、再現は出来ても、スマホアプリで空間を操作しようと試みるとスムーズに動かなかったり、容量が重すぎて古い端末だとアプリがクラッシュしてしまうなど、実際に進めていくと課題がいくつか見つかりました。そこで、空間を最適化したり、スキャン技術を見直したり、どんな商品でも簡単に再現し表示できるようにコツコツと改善を積み上げて解決しました。

根本的に見直しを掛けて作り直したため、当初のイベント用に作ったアプリと正式サービス後のアプリは全くの別物です。今のαU placeでは空間データを小分けにダウンロードできるようにし、アプリの中で「視界」として見える部分だけをその都度読み込む形に改善し、お店が広くてもクオリティを下げずに店内を表現できる仕組みとして採用しています。

また、スキャンについても、撮影したデータをもとに足りていない部分を自動で補い、どんな空間でも効率的に再現できるようにアップデートを重ねました。実際に店舗で撮影させていただきながらフィードバックをもらい改善する、そんな作業を何回も繰り返してやっと完成に辿り着きました。

その他アップデートがあれば教えてください

藤城:撮影やスキャン方法を見直したおかげで、昨年に比べると表現やクオリティがアップしています。1年かけて立体感や商品が詰めて並べられている感じが伝わるよう、スキャンした時に奥の方がうまく撮影できてなくても技術で補完したり、端の部分が綺麗に表現できるように調整するなど、細かいところではありますがクオリティが改善しています。

また、昨年10月と今年3月に発表させていただいた時は画面上に表示されたアバター自体が移動するという操作方法でしたが、よりお店の雰囲気や商品を見てもらいやすくするために、アバター表示でなく目線表示に改善を行いました。加えて、お店が自ら運営できるような仕組みやアプリを合わせて提供するように出来た点が、今回のアップデートポイントです。

サービスの導入にあたり、店舗の皆さんはどういう反応でしたか

藤城:今回の発表で大きく打ち出しさせていただいた無印良品さんの場合、旗艦店である銀座店が意外と知られていなかったのですが、αU placeで銀座店の空間を再現することで、遠方の方にも店舗の様子を見てもらい旅行の際に来店してみようと思ってもらえたり、店舗の存在を知ってもらえることを価値として感じていただけました。


無印良品の店舗再現

今後の話にはなりますが、実空間でイベントを実施しているものの狭かったり、あまり人を多く呼び込めない場所でも、バーチャル上に再現された空間でリアルイベントと連携して入場者を増やしたり、敷居が高くて入りにくいと思われる場所をお客様に向けて発信したりできるのでないか、という仮説が上がっています。

また、まだ私たちも準備ができていない部分がありますが、海外のお客様に自分たちのお店を知ってもらいたいというニーズが高く、まだ日本に来ていない海外旅行者に事前にお店をバーチャルで下見していただき、実際に来日した時に来店してもらえるよう繋げられないかチャレンジしていきたいです。

リリース後の反響と今後の展望を教えてください

藤城:自分たちのお店をインバウンドのお客様に知ってもらいたいという方々からの反響が大きかったですね。現在αU placeを利用している6店舗の中で米を取り扱っているヒョウベイは、実店舗はないのですが良いブランドのお米を扱っておられ、自分たちの工場をバーチャル空間に再現して、より多くの人に知ってもらおうという取り組みをされています。


ヒョウベイの再現

アプリの仕組み都合上、現在はアプリをダウンロードできるのが日本国内のみですが、今後は海外でもダウンロードできるように進めていき、多言語対応など地道なところからスタートしたいです。それが出来れば、日本のお客様に海外のお店を知ってもらう機会にも繋がる可能性があり、さらにプラットフォームを大きくしていけるのではと想像しています!

ありがとうございました。

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