- インタビュー
2024年03月11日
デジタルデバイドを解消するスマートフィーチャーフォン向けOSを提供 〜KaiOS
- KaiOS
Sebastien Codeville - CEO
KDDIは、デジタルデバイドを解消するスマートフィーチャーフォン向けOSを展開するスタートアップKaiOS Technologiesへ出資したことを公表しました。「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じたもので、出資額や評価額などの詳細は非公開。
今回はCEOのSebastien Codeville氏にお話を伺いました。
CEOのSebastien Codeville氏に伺いました
何をしている会社ですか?
Sebastien Codeville:Internet Terecommunication Union(ITU)によると、26億人が未だにインターネットに接続できず、彼らのデジタル革命への参加を妨げています。さらに、14億人が必要不可欠な金融サービスへアクセスができません。KaiOSは、開発途上国においてインターネットに接続できない人々やインフォーマル・ビジネスのデジタル・インクルージョンを加速する革新的なソフトウェア・ソリューションを提供することで、これらの課題に対処しています。これは、3つの主要な構成要素を持つ包括的なプラットフォームを通して実現されます。
①KaiOSとアプリ・エコシステム: この基礎的な部分は、Kaiオペレーティング・システム(KaiOS)と関連するアプリのエコシステムで構成されています。このシステムは、スマートフィーチャーフォンという新しいカテゴリーのデバイスに道を切り開きました。これらの手頃な価格の端末は、スマートフォンの数分の一のコストで、Google、YouTube、WhatsApp、Facebookなどの必須のアプリケーションにアクセスすることができます。その結果、世界中で1億7500万台以上のKaiOS搭載デバイスが使用されるようになりました。特に、KaiOSはJioPhoneの成功に重要な役割を果たし、インドにおける「Jio革命」に拍車をかけました。
②マネタイゼーション(収益化)ツール: KaiOSをベースに構築されたKaiは、スマートフィーチャーフォン向けに特別に設計されたツールの数々を提供しており、ユーザーが収入を得ることを可能にします。これには、エクスチェンジとデマンドサイドプラットフォーム(DSP)の両方を含む包括的な広告プラットフォームと、利用分析ソリューションが含まれます。
③デバイス・ロック・ソリューション: ベーシックなフィーチャーフォンとの価格ギャップをさらに縮めるため、Kaiは消費者のデバイスファイナンスを促進するデバイスロック・ソリューションを提供しています。通信事業者(MNO)・フィンテック企業、主要アプリケーションとのコラボレーションにより、KaiOSデバイスを2G製品の競争力のある価格帯で提供することができます。
KaiOS搭載デバイス
なぜ会社を立ち上げたのですか?
Sebastien Codeville:テクノロジーは爆発的に発展し、学び、人々とつながり、ビジネスを構築する素晴らしい機会を提供してきました。特にここ数年間で、私たちは目覚ましいイノベーションの加速を目の当たりにし、直近2年間のAIの民主化によってさらに拍車がかかりました。エキサイティングな反面、この急速な進歩は諸刃の剣でもあると思います。
この驚くべき可能性にアクセスできるのは、インターネットにアクセスできる人だけです。インターネットに接続できない何十億もの人々にとって、機会の格差は日を追うごとに広がっています。
だからこそKaiOSは、デジタルデバイド(デジタル格差)を解消するという使命に燃えているのです。私たちのユニークなアプローチは、人々をオンラインに導き、彼らが生活を変えるのをエンパワーすることを目的としています。このミッションこそが、私のこの企業への情熱に火をつけ、具体的なインパクトを与えるための日々戦い続ける原動力となっています。
これからの目標はありますか?
Sebastien Codeville:KaiOSは今年、インフォーマルセクター(非公式な経済活動)のためのデジタルツールの民主化に向けて極めて重要な一歩を踏み出しました。インフォーマルセクターは、主に女性で、300万人以上のマーチャントを含む、巨大でしばしば見過ごされがちなセグメントです。私たちの包括的なデジタル化プラットフォームは、経済的なエンパワーメントのための促進剤として機能し、露天商、人力車の運転手、農家らがデジタル決済を受け入れ、サプライチェーンをデジタル化し、財政的な機会を解放します。
これは単に新機能を追加するだけではありません。KaiOSを、個人と企業がデジタル時代に成功するための包括的なエコシステムに変えるという、私たちのビジョンに向けた戦略的なステップなのです。私たちは、KaiOSがインフォーマル・セクターのためのプラットフォームとなる未来を描いています。KaiOSは単なる架け橋ではなく、より明るいデジタルの未来への出発点なのです。KaiOSは単なる架け橋ではなく、より明るいデジタルの未来への出発点なのです。私たちは、今後数年の間に、個人とビジネスに力を与え、彼らの潜在能力を最大限に引き出す、繁栄するエコシステムを育成することを約束します。
KDDIからの出資を通して期待していることはありますか?
Sebastien Codeville:KDDIの投資は、KaiOSにとって重要なマイルストーンであり、2つの面で強力な証明となります。
第一に、私たちのミッションに対する強い支持です。KDDIのような世界的に有名な通信企業からの出資は、デジタルデバイドを解消し、世界中のコミュニティに力を与えるという我々の可能性に対する彼らの信頼を示すものです。
第二に、これは戦略的な事業連携の扉を開くものです。このパートナーシップは、次のようなエキサイティングな機会をもたらします。
a. 新たな事業機会の発掘: 私たちはKDDIと協力し、彼らの投資地域内で潜在的な市場を開拓し、私たちのリーチとインパクトを拡大することができます。
b. 戦略的パートナーシップの促進: KDDI Open Innovation Fundのポートフォリオは、他の革新的な企業とのパートナーシップの可能性を広げ、我々のエコシステムをさらに強化します。
将来的には、この協業を足がかりに、特定の国で共同でイノベーションを起こすことも視野に入れています。KDDIとともに、最先端のソリューションを市場に投入し、サステナブルな経済的リターンを生み出しながら、無数の人々の生活に有意義な影響を与えることができます。
最後に一言お願いします
Sebastien Codeville:KaiOSのテクノロジーは、大部分が水面下で運営されていますが、その影響力は否定できません。私たちは、26億人というアクセス可能な市場において、大きなビジネスチャンスを解き放つ重要なソリューションを提供しています。これらの市場は、経済的に大きな課題を抱える一方で、若くダイナミックな人口 (年齢中央値が17歳の人口もある) を誇り、将来の経済成長の原動力となる可能性を秘めています。
KDDIは、この可能性を認識している真のパイオニアであり、この旅において彼らと提携できることを嬉しく思います。私たちは、このコラボレーションが一つの光明となり、より多くの日本企業がこの取り組みに参加し、より包括的なデジタルの未来に貢献するきっかけになると信じています。
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