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2024年07月05日

今月はIVS出張版、登壇した京都発スタートアップ4社をご紹介/KDDI ∞ Labo7月全体会レポ

KDDI ∞ Laboでは毎月、オープンイノベーションに関わる∞Laboパートナーとスタートアップの共創をサポートする全体会を開催しています。

7月の全体会は、IVSのサイドイベントとして住友不動産と共催しました。パートナーとして参加いただいている99社の方々と、京都を拠点とするスタートアップ4社が協業や出資などのきっかけを求めて、今年4月にオープンした住友不動産のインキュベーションスペース「GROWTH 京都河原町」に集まりました。

本記事では4社のピッチステージの内容をお伝えします。


めぇ〜ちゃん
今月は京都を拠点とするスタートアップ4社にご登壇いただきましたので、ご紹介します!

自然素材デバイスでシンプルかつ穏やかなスマートホームを実現するmui Lab

mui Lab株式会社 代表取締役 大木 和典氏

mui Labは「エネルギーマネジメント」をコア技術として、グローバルで50兆円を超える規模になると予測されている「スマートホーム市場」を開拓します。スマートホーム関連技術には、機能の複雑さや操作の難しさ、セキュリティの弱さなど、さまざまな課題が存在していると言われています。

mui Labは、シンプルで安全性の高いスマートホームのクラウドプラットフォームを提供しています。mui Labの主力製品は、木製の「muiボード」です。クラウドに接続された「muiボード」はAmazonの「Alexa」と連携することで、天気の確認やタイマーの使用、アラームのセットなどを、ハンズフリーかつ木製ならではの“穏やかさ”を感じながら行えます。

mui Labの特徴は、Calm(落ち着いた) Technologyと呼ばれる新しいドメインを開拓している点です。たとえば京都の景観条例で派手な看板が規制されているように、家族の"景観"を守るような、心地よい暮らしを感じられるスマートホームを提供しています。

大木氏

Amazonとのスキル連携は、Alexa Startupから直接サポートを受け、「muiボード」と「Alexa」の相互連携における「Works with Alexa」の認証を取得しました。Alexa Startupは生活や仕事の環境の中で、必要なときにそこに在って、必要でないときは背景に消えていく「アンビエント・インテリジェンス(環境知能)」を推進しており、「muiボード」との連携もその一環だったといいます。

サービス概要

またmui LabがBtoBで、不動産や賃貸管理事業者などに提供しているのが、スマートホーム賃貸管理「mui Smart Living」です。muiならではの心地よいスマートホーム体験により、生活者と事業者の穏やかな接点を生み出します。

事業者は入居者に、暮らしに便利な機能を備えたモバイルアプリ「mui Kurashiアプリ」やコミュニケーションデバイス「muiボード」、温湿度などが検知できる「muiセンサー」などを一括で提供できます。入居者はスマートに家電やIoT機器をコントロールしながら、事業者とダイレクトにコミュニケーションをとることも可能です。

さらに事業者は入居者情報を管理できる「mui Kurashiダッシュボード」を利用できます。入居者情報やアプリなどから収集した入居者の生活情報をもとに、カスタマイズした情報やコンテンツ、メッセージを送付することにより、入居者との心地よいコミュニケーションを可能とします。

mui Labでは、スマートホーム市場の成長に合わせて、段階的な事業展開を計画しています。まず市場形成期にプラットフォーム支援を行い、ニーズが固まってきた段階で継続的な価値提供により長期的な収益を得るリカーリングモデルへ移行。最終的には顧客体験の差別化を図るデバイス提供へと展開していく方針です。グローバル展開も見据えて、技術やサービスの開発に取り組んでいきます。

大木氏

製造・建築・インフラ産業特化型AIで、省人化と労働環境改善を両立するHACARUS

株式会社HACARUS 代表取締役CEO 染田 貴志氏

HACARUSの染田代表は、製造業、建築・土木、インフラの3つの事業領域でAIを活用した現場DXを推進する取り組みについて発表しました。これらの産業は日本のGDPの20〜30%を占める基幹産業ですが、過去20年間で労働人口が大幅に減少しており、省人化や無人化への要望が高まっています。

一方で、現場から人が完全にいなくなることは考えられず、ESGの観点からも労働環境の改善が重要な課題となっています。HACARUSは、外観検査、設備管理AI、労働安全支援などを通じて、省人化と労働環境の改善を同時に実現することを目指しています。

同社の特徴は、大量のデータや高性能なコンピューティングリソースを必要としない、効率的なAI開発です。昨今注目を集めているLLMや生成AIとは異なり、創業以来10年間、少ないデータと限られたコンピューティングリソースで効果的に機能するAIの開発に取り組んできました。

HACARUSは、効率的なAI技術と現場のニーズを融合させた実用的なアプローチにより、人手不足に悩む製造業や建設業の課題を解決しています。HACARUSの強みは、大規模なデータやリソースを必要としないため、中小企業を含む幅広い顧客層にとって、導入ハードルが低いことです。

染田氏

サービス概要

染田氏は、具体的な事例として3つのソリューションを紹介しました。1つ目は製造業向けの外観検査AI「HACARUS Checkシリーズ」です。例えば、複雑な形状の自動車部品などに対応可能なロボットアームやカメラ、照明とAIを組み合わせた省人化システムを開発しました。従来の画像処理技術では外観検査が困難だった複雑な形状の部品でも、このシステムにより自動化が可能になりました。

2つ目のソリューションは、建設業界などで行われているKY(危険予知)活動を支援するアプリ「HACARUS KY」です。作業内容を入力すると、労働災害事例や危険ポイントが提示され、スマートフォン・タブレット・PCでKY活動をすることができます。建設や土木系の顧客を中心に導入が進んでおり、作業員の安全意識向上に貢献しています。

3つ目は、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンと半導体製造工場の労災防止を目的として共同開発を行っている「HACARUS Workplace Safety」です。作業者の防護服や眼鏡の装着状況をチェックし、危険な状況をアラートで知らせます。

半導体製造現場特有の要望に応えるため、データセキュリティを考慮した完全オンプレミス型かつエッジ型のソリューションとなっています。即時に結果を出力できることで、リアルタイムの安全管理が実現可能です。

HACARUSは、各分野のニーズに合わせてカスタマイズする形で、現場作業の効率化や安全性の向上を支援しています。さまざまな企業との協業や共同開発にも積極的に取り組んでいます。個別の企業課題に応じたカスタマイズや新規開発にも、AIを活用した現場DXでサポート可能です。HACARUSは、テクノロジーの進化と人間の労働環境の改善を両立するテクノロジーで社会を変革していきます。

染田氏

ユニークなイラストデジタルマップでイベント運営や地域開発、インバウンド戦略などに貢献するStroly

株式会社Stroly 取締役COO 難波 宏太氏

Strolyの難波COOは、同社が提供するユニークなイラストデジタルマッププラットフォーム「Stroly」を紹介しました。Strolyは既に1万以上のマップを登録しており、独自の特許技術により、個性的なイラストマップに正確な位置情報を付与できます。

Strolyのサービスは、当初想定していた観光事業者、自治体などの顧客層を超えて、幅広い分野で活用されています。特筆すべきは、最近増加しているBtoBでの利用です。

Strolyのマップの特徴は、単なる地図ではなく、ユーザーの行動を変え、新たな価値を創造するプラットフォームとして機能している点です。GoogleやAppleのマップでは表現できない地域の雰囲気や感情に訴えかける情報を提供できます。さらに、ユーザーの行動データ分析が可能な点も導入企業から高い評価を得ています。

難波氏

具体的なBtoB事業者における導入事例としては、ホテル事業者向けのセルフガイド促進による案内業務削減や、不動産開発業者向けのエリア価値向上なども可能で、マップの固定概念を覆す利用方法が増加しています。ユニークな活用事例としては、工事現場で日々変化する搬入口やトイレ、弁当配布場所などの情報共有目的での活用事例なども挙げられました。これらはビジネス面での活用事例は、貢献度も大きいと考えられています。

サービス概要

さらに具体的な活用例として、ベトナム ビンズン省での未来の街並み表現が紹介されました。この事例では、未来の街の姿を描くことで、マンションや商業施設の早期販売促進、テナント誘致に役立てています。

また、人気アーティストとのコラボレーションによる広島の観光促進キャンペーンでは、Strolyのマップ上でスタンプラリーを実施し、限定ボイスを聞ける仕掛けを作りました。これにより、従来のGoogleマップでは実現できなかった世界観の表現と、ファンの回遊促進を同時に達成しています。

ユーザーの行動データを詳細に分析した活用事例としては、祇園祭での来場者の動きを時間帯別に把握し、警備配置の最適化や観光案内所の効率化に繋げているといいます。イベント運営の効率化や経費削減、言語別の利用状況も分析できるため、インバウンド戦略の立案にも貢献しているそうです。

Strolyのマップは、スマートフォンのブラウザで利用可能で、QRコードを読み取るだけで簡単にアクセスできます。また、iframeを使用してウェブサイトに埋め込むこともでき、顧客の既存システムとの連携が容易です。これらの特徴を活かし、今後はインバウンド対応や不動産開発分野での活用に注力していくことで、デジタル時代における地図の新たな可能性を切り開いていきたいと思います。

難波氏

風況可視化技術で防衛やSDGs領域を新たな角度から変革するメトロウェザー

メトロウェザー株式会社 代表取締役CEO 古本 淳一氏

メトロウェザー古本氏は、空の風を計測する革新的な技術について発表しました。2015年に京都大学発ベンチャーとして設立された同社は、赤外線レーザーを用いて空気中の塵の動きを捉え、風を可視化する装置「ドップラー・ライダー」を開発しています。この技術は、人間の目には見えない風の動きを精密に計測することを可能にしました。

メトロウェザーの事業領域は、防衛分野におけるディフェンステック、環境SDGsに関連するエコシップを含むグリーンテック、そしてドローンや空飛ぶクルマの安全運航の3つです。特に注目を集めているのは、商船三井との共同プロジェクトです。世界で初めて「船上風況計測装置」の開発を始動し、帆船に風計測技術を導入することで現在8%の燃料削減を達成しており、今後は20%の削減を目指しています。この取り組みは、海運業界のCO₂排出量削減に大きく貢献することが期待されています。

同社の技術は、国内外で高い評価を受けています。特に米国市場に注力しており、NASAのラングレー空軍基地周辺に2台のライダーが設置され試験観測が行われています。これは、ドローンや空飛ぶクルマの分野で先進的な米国市場での活躍を目指すメトロウェザーの戦略を反映した取り組みです。

メトロウェザーの技術は、目に見えない風を可視化しその情報をさまざまな産業に活用することで、従来にない価値を創造しています。国内では、2025年の大阪・関西万博に向けて、大阪市内に3台のライダーネットワークを提供中です。これにより、長期的にリアルタイムの風向・風速の観測情報を提供し、万博期間中の安心・安全な運営に貢献することを目指しています。

古本氏

メトロウェザーは現在、航空機搭載型ライダーの開発に取り組んでおり、近年多発している乱気流による航空機事故の防止に貢献することを目指しています。古本氏は、最近のシンガポール航空の事故を例に挙げ、乱気流による深刻な被害を防ぐためのリアルタイムな風況観測情報の重要性を強調しました。

また、ドローン検知技術の開発も進めており、防衛分野での需要の高まりに応えようとしています。特に、重要施設周辺でのドローン飛行検知のニーズが高まっていることを指摘し、同社の技術がこの課題解決に貢献できる可能性を示しました。

協業ニーズとしては、無人機の安全運行に向けた風況情報活用の推進や、風力発電におけるSDGsの共同推進などとの事業連携を進めていきたいと考えています。また、2025年頃にシリーズBラウンドでの資金調達も検討中しているので、ぜひIVSの期間中に連携のお話しができれば幸いです。

古本氏

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