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2023年10月26日

今月は東大出張版で学生も参加、登壇したディープテック系4社登壇ご紹介/KDDI ∞ Labo10月全体会レポート

KDDI ∞ Laboでは毎月、オープンイノベーションに関わる∞Laboパートナーとスタートアップの共創をサポートする全体会を開催しています。10月に開催した会では、パートナーとして参加いただいている84社の方々と、スタートアップ4社が協業や出資などのきっかけを求めて東京大学 情報学環・福武ホールの会場に集まりました。


今回は東大出張版ということもあり、登壇スタートアップはディープテック分野に絞られ、東京大学の学生も多数参加しました。将来、起業を目指す学生からスタートアップ、パートナーの方々にも多くの質問が寄せられていたのが印象的でした。本稿では登壇した4社のピッチステージの内容をお送りいたします。


めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
今月は、東京大学本郷キャンパスで開催されました。登壇していただいたスタートアップをご紹介します。

世界初の定常核融合炉の稼働を目指すHelical Fusion

後藤拓也さん

Helical Fusionは、2034年を最速目標に、世界初の定常核融合炉を稼働させることに取り組むスタートアップです。なぜ核融合に注目しているかというと、今後ますます人口が増加していくにつれて必要となるエネルギー量が増えていく一方で、環境保護の観点から二酸化炭素の削減も急ピッチで進めなければならない課題があるためです。

現在、火力発電や原子力発電のほかにも再生可能エネルギーの活用などが注目を集めていますが、持続可能なエネルギーという観点で確立された技術はありません。Helical Fusionは、これらに次ぐ新しい選択肢として、核融合によるエネルギー生産を加えることを目指しています。

核融合とは、水素の原子核どうしの衝突・合体により莫大なエネルギーを生む反応です。太陽をはじめとする宇宙で輝いている恒星は、全て核融合でエネルギーを発生させています。核融合は、反応時に二酸化炭素を排出しないことや、燃料を海水から取れるため事実上無尽蔵であること、高レベル放射性廃棄物の排出や暴走の心配がないことなどのメリットから、安全性の高い持続可能なエネルギーとして注目されて注目されてます。

Image credit: Helical Fusion

地上で核融合を起こすには強力な電磁石を用いた2つの方式があります。1つめは「トカマク方式」で、構造は簡単だが連続運転の見通しが立っていないという問題点があります。一方の「ヘリカル方式」は、構造は複雑だが連続運転に適しており、メンテナンスも容易なため、発電インフラに適しており、同社は「ヘリカル方式」を採用しています。

今後の展望としては、個別技術の実証を進めた後に、小型の実験装置を作り核融合炉の全ての機能を統合実証するそうです。その後、本格的な核融合炉を建設して最短で2034年に発電を開始する想定をしています。

「人類は核融合で進化すると信じている。ヘリカル核融合炉で安全かつ持続可能なエネルギーを創造し、地球と人類の共存を可能にする」

代表 後藤氏

植物由来のプラスチック「modo-cellⓇ」を開発するアミカテラ

増田厚司さん

アミカテラは石油系プラスチックに代わる、植物由来のプラスチック「modo-cellⓇ」を開発しているスタートアップです。「modo-cellⓇ」の特徴は、植物由来であることから、落ち葉と同様に、微生物による分解で土に還れる生分解性がある点です。

また「modo-cellⓇ」は、本来コストをかけて廃棄される植物が原料として使われている強みもあります。主原料はセルロースで、現在は放置竹林の竹を原料としています。もみがらなどの農業廃棄物も原料として活用可能です。

Image credit: Amica Terra

さらに製造過程で主原料の物性が壊れないため、たとえば竹の抗菌効果やヒノキの防虫効果などが、素材の機能としてそのまま生かされます。主な導入事例としては、アメニティが多いホテルや、プラスチック容器やストローが必要な食品・飲料メーカーなどがあります。また植物性廃棄物が多い企業との連携も可能です。

「modo-cellⓇ」の優位性は、大きく2つあります。1つめは、原料の調達コストや枯渇リスクが低いことです。たとえば植物由来の素材でも、原料に米やトウモロコシが必要な場合、それらが廃棄物でも栽培や収穫が必要です。そのため地政学的リスクの観点から、トウモロコシが収穫できなくなった場合には、その調達コストが跳ね上がります。しかし、「modo-cellⓇ」の場合は企業や自治体が出す廃棄物や残渣を活用するため、調達コストが大きく変動する可能性は低いと言えます。

2つめの優位性は、ドイツの工業規格「DIN規格」において、一般土壌で分解可能という認証を取得している唯一の企業であることです。EU域内ではプラスチック製品が制限される、つまりプラスチックの梱包材に対する規制が強化される流れがあります。そうなった場合に、EU域内の公的な「DIN規格」で生分解性が認められている「modo-cellⓇ」を素材とした梱包材が広く使われる可能性は高いと言えます。

レアメタルの資源循環によりカーボンニュートラルを実現するエマルションフローテクノロジーズ

鈴木裕士さん

エマルションフローテクノロジーズは「限りあるレアメタル資源を未来につなぐ」をビジョンに掲げる、日本原子力研究開発機構発のベンチャー企業です。同機構における約30年間にわたる原子力研究から生まれた新規溶媒技術「エマルションフロー」をコア技術に、レアメタルの資源循環に取り組んでいます。

レアメタルは電子・磁石材料や機能性材料の性能確保に不可欠で、あらゆるものが電化される未来の社会を支える重要な元素です。一方現在、電気自動車のリチウムイオン電池に多くのレアメタルが使用されており、電気自動車の普及に伴い2025年頃から供給不足が顕在化すると予測されています。また、レアメタルの需要拡大による、さまざまな地政学的リスクの増大や供給不安も懸念されており、レアメタルのリサイクルによるサプライチェーンの強化が必須の状況です。

エマルションフローテクノロジーズは、新規溶媒技術「エマルションフロー」をコア技術として主に2つの事業を展開しています。1つめは資源循環事業です。回収したレアメタルを再度、リチウムイオン電池を中心としたハイテク産業で利用する水平リサイクルに取り組んでいます。

2つめがトータルサポート事業です。顧客の課題を解決するため、エマルションフローを利用した抽出プロセスの提案からプラントの導入・運転までをトータルサポートしています。

Image credit: Emulsion Flow Technologies

従来の溶媒抽出技術の課題としては、大規模なプラント設備を必要とすることや環境負荷が高いこと、さらに処理コストも高いことが挙げられ、水平リサイクルの事業化は難しいとされています。この問題を解決するのが新規溶媒技術「エマルションフロー」です。「エマルションフロー」は使用済み核燃料に対する高度な金属元素分離のために開発された技術で、従来の技術よりも高効率な特徴があります。

「エマルションフロー」は、従来技術と比較して、生産性の4から10倍の向上や、それに伴うコンパクト化及びコスト削減を実現しています。また、分離性能の点でも抽出率90%と非常に優れた性能を示しており、設計の自由度や拡張性も高い優れた技術です。

「レアメタルを未来永劫使い続けられる完全循環社会を達成することで、2050年のカーボンニュートラルを実現することが我々のミッションです」

代表 鈴木氏

微生物による分解技術で資源循環加速するフレンドマイクローブ

蟹江純一さん

フレンドマイクローブは名古屋大学発ベンチャーで、取締役会長として名古屋大学院工学研究科の堀克敏教授が在籍しています。フレンドマイクローブのビジョンは、微生物がもつ可能性を示し、微生物と共に持続可能な社会を実現することです。微生物はヒトの体内や深海、ISS(国際宇宙ステーション)など、さまざまな場所で生息可能であり、微生物自体のポテンシャルから広く活用の可能性が模索されています。

古くから微生物は資源循環に貢献しています。地球上の廃棄物を分解して、資源循環のサイクルに戻すことが微生物の大きな役割です。しかし、ヒトによる消費活動が活発化したことで分解が追いつかなくなり、その分を石油燃料で焼却処分しているのが現状です。

Image credit: Friend Microbe

フレンドマイクローブは、微生物のポテンシャルを引き出すことで、分解のスピードを加速させ、産業廃棄物の削減や資源循環の強化を実現します。具体的には、資源循環に課題を抱える現場で、微生物をどのように活用するかを研究しています。

食品関連では、動植物油を効率的に分解する微生物を研究開発し、社会実装しています。フレンドマイクローブがターゲットにするのは、分離・精製が難しい廃棄油で、現在では凝集剤や化学薬品で物理的に分離し、産業廃棄物として石油燃料で焼却処分しているものです。これを微生物で分解できれば、産業廃棄物がなくなるため、トータルでGHGの削減にもつながります。ほかにも現在は、機械油の分解についても研究開発しています。

市場としては、人口増加に比例して増える動植物油だけでも大きいそうです。また、もともと動植物油よりも排出量が多い機械油の市場も大きく、さらにロボット産業の発展に伴い拡大していくといいます。今後の展望としては、産業廃棄物を微生物で単に分解するのではなく、有用な物質に転換することも目指して研究開発を進めていくそうです。

めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
各社のインタビュー記事もお楽しみに!

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