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2022年10月20日

旅行相談はアバターにお任せーー近畿日本ツーリストが全国展開した「アバターコンシェルジュ」共創の裏側を聞く

近畿日本ツーリスト株式会社
山崎 里江(写真左)
1990年 近畿日本ツーリスト株式会社入社。海外パッケージ旅行企画、個人旅行販売促進、ウエブ販売促進等の業務を担当。海外パッケージ旅行企画を担当中に2回の育児休暇を取得。現在は電話予約やオンライン相談でサービスを提供する統合コンタクトセンター副支店長。
株式会社kiwami
三鴨 千早(写真右)
東芝在籍中に社内プロジェクトとして始まった「駅探」の立ち上げに参画、その後、駅探は独立会社としてIPOを果たす。株式会社ビーマップでDENSOとのJVを立ち上げ、コンシューマ向けサービス「今昔散歩」をリリース。ポケラボ(のちにグリーに買収)でプラットフォーム・ゲーム事業を担当。2019年2月にkiwamiを設立した。

VR店員ソリューションを展開するkiwamiは7月、同社が提供するオンライン接客サービス「旅のアバターコンシェルジュ」が全国の近畿日本ツーリストで導入を開始したことを伝えています。昨年末からの両社の取り組みが全国展開したもので、今後、順次設置店舗を拡大する予定としています。


旅のアバターコンシェルジュは、旅行会社が店頭で実施していた対面での旅行相談を、来店せずにパソコンやスマホから受けられるサービスです。オンライン越しに対応してくれるのは二次元のキャラクターですが、その裏側では旅行の専門知識をもった「プロ」がアバターを通じて接客案内をしてくれます。

ベースになっている技術はkiwamiが開発したオンライン接客サービス「xRCastHoloPhone」で、接客サービスが必要な店舗にはタブレット、対応するオペレーターはPCがあれば遠隔地からの接客対応が可能になります。アバターと実写が選択可能で、同社によれば、最短で1週間程度で導入できる手軽さが特徴だとのことです。

利用している事業者も小売からテーマパークまで幅広く、今後の人材不足問題を解決する鍵として期待されています。本稿ではこの共創の取り組みの経緯や裏側を近畿日本ツーリストの山崎里江さん、kiwami代表取締役の三鴨千早さんにお聞きしました。(太字の質問はMUGENLABO Magazine編集部、文中敬称は略させていただきました)


店舗でのアバター接客の様子

今回の共創はどのように始まったのでしょうか

三鴨:元々は∞Laboのピッチイベントに登壇させていただいた時に、近畿日本ツーリストさんとご一緒したいとラブコールを送らせていただき、お応えいただいたのが経緯です。昨年の11月からサービスを開始させていただき、先月から店頭での接客に全店舗導入していただく形で展開しています。

山崎:弊社ではDX化に取り組んでいます。また、弊社は以前に比べてかなりの店舗数を減らしたので、アバターを第3の販売チャネルとして確立していこうという取り組みに繋がりました。店舗では接客数が限られてしまうので、ツールを使ってお客様をお待たせしない取り組みとして始めたのがきっかけです。

店舗に来たお客さんの対応を現場スタッフではなく、アバターの向こう側にいるスタッフが対応しているという認識で間違いないですか?

山崎:アバターと言うとAIのイメージが付いているかと思いますが、実際は旅行の専門知識を持ったスタッフが対応しています。ただ単に質問に答えるだけでなく、ご相談という形でお客様が求めている情報や商品の案内をするサービスです。

対応するスタッフをカメラでフェイストラッキングして、表情や仕草を再現しているのですか?

三鴨:フェイストラッキングはしておらず、ボタン操作で笑うとかお辞儀するとかの動作をさせています。リアルタイムに連携もできますが使い道が意外と少なく、オペレータが何かを調べたりする時の動きに連動してしまうとよくないですし、データとしても軽い運用にするために最適化をしました。

近畿日本ツーリストさん向けに個別にカスタマイズしたものはありますか?

三鴨:僕らはSaaSのサービスとして提供して色んな会社に提供しています。ただ、近畿日本ツーリストさんは結構すごくて、全国で14人ぐらいのアバターを作りました。それぞれにテーマを持って、沖縄と北海道と各地のキャラクターの個性が一目でわかるアバターを個別に作成しました。

店頭のスタッフから声が上がってきた具体的な困りごとはどのようなものでしたか

山崎:どうしても電話窓口では対応しきれない部分がありました。伝わりにくいものを画面上で案内できるのは非常に魅力があると思います。店舗がない地域からでも弊社のサービスを提供できる点が一番大きなポイントになるかと思います。

近畿日本ツーリストさんは元々、遠隔接客としてカメラでオペレータの顔を映しながらの対応はしていたと思います。アバターにリプレイスした意思決定のプロセスや理由を教えてください

山崎:従来より、専門性を持ったスタッフが限られているという点を課題にしていました。例えば南米に行ったことがある社員はそんなにいないので、店舗に知識がない商品の補完をするために以前よりリモート接客という目的で実施していました。今回は目的が変わっていて、店舗がない地域からでも接客ができる、販売の販路を広げる新たな販売チャネルとしてのアバター導入になっています。

昨年の11月から段階的にPoCを重ねながら全国展開に至ったと思いますが、どういった点で結果が出ましたか?

三鴨:リアルな人ではなく、アバターならではの話しやすさとか近づきやすさがあります。kiwamiではこれまでにも、いろんな企業様と実証実験していたので、コンバージョンレートは高くなるだろうと思っていました。お客様も、(人相手より)アバターの方が自分のことをより話してしまうという研究成果があるんです。実際、近畿日本ツーリストさんから伺っている話でもコンバージョンレートが上振れしていて、ビデオ接客や電話の接客と比べると1.5倍から2倍ぐらいのコンバージョンレートが出ています。

アバター接客への導線はどのようになっていますか?

山崎:いくつか導線はありまして、店舗でのポスター経由や販売店からのご案内です。あと弊社ホームページのトップページにある「電話でのご相談」というアイコンのすぐ下に、「電話と一緒にオンライン相談も承っています」と案内しています。それからお電話いただいたお客様に対し、オンライン接客をお勧めをするやり方と、弊社メールマガジンでの発信です。お客様が電話だと不便だと思った時にオンラインに繋げることが一番ポイントかなと感じています。

苦労話もあれば、お伺いしたいのですが

三鴨:クリエイティブが尖ってはいるので、僕らの世界観を分かっていただくまでに、結構長い道のりがありました。僕がもともとゲーム業界というのもあって、コンシューマー寄りのデザインをするので、ビジネスサイドにいる人たちからすると、ふざけてるとか遊んでるように見えるらしいのです(笑。

今後の展開はどのように考えていますか?

三鴨:元々、米田社長(近畿日本ツーリストの親会社 KNT-CTホールディングス代表取締役社長の米田昭正氏)の目指しているアバターのタレント化を目指します。アバター自体にファンが付いて、北海道のことにめちゃめちゃ詳しいアバターが観光地を紹介してくれたり、そのアバターにお客様が旅行の相談に来るみたいな世界観です。

今プロモーションのネタをどんどん仕込んでいて、アニメーションを作りましょうと提案したのも一例です。アバターの女の子が北海道を紹介するアニメーションであれば全国版できますし。アバターコンシェルジュが認知されていて、ファンがつくような世界観がやってくると近畿日本ツーリストさんのお客様が離れにくくなるでしょうね。

IPとして育てて、IPを理由に他社ではなくて近畿日本ツーリストさんにまた相談をして旅行を決めていく循環を作っていく

三鴨:芸能人を使ったり有名なアニメーションのIPを使うより自社IPをタダで使った方がコストパフォーマンスが出る気がします。

今回の取り組みから学んだ大企業とスタートアップの提携・協業をうまく進めるコツがあれば教えてください

三鴨:協業するにあたっては両社が対等な関係であることはブラさずに、対等な立場でやりたいこと、あるべき姿をご説明することが結構重要な観点かなと感じました。

山崎:kiwamiさんとは週1回ミーティングをしていますが、弊社のやりたいこと、三鴨社長の方から提案してもらうことをどうやってWIN-WINな状態に持ち込めるかだと思います。目指してるところは同じだという共通認識が必要かなと思います。

ありがとうございました。

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