- インタビュー
2021年05月26日
DNA・RNA編集技術で、新しい未来を。- EditForce
- エディットフォース
小野 高 - 代表取締役社長 CEO
KDDIは独自のDNA/RNA編集技術を有するベンチャー企業 エディットフォースに出資したことを公表しました。「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じたもので、出資額や評価額などの詳細は非公開。
今回はエディットフォース CEO 小野 高氏にお話を伺いました。
CEOの小野高氏に伺いました
何をしている会社ですか?
小野:当社は、生物の塩基情報(ゲノムDNAやRNA)を自由自在に編集できる、独自のPPR(pentatricopeptide repeat)技術を有する九州大学発ベンチャー企業です。
60億文字からなる暗号(遺伝情報)として刻まれているDNAから、遺伝情報の仲介役であるRNAが作られ、そのRNAから生物が活動する上で必要なタンパク質が作られます。その中のたった1つの文字(塩基)の変化で、病気が発症することが知られていましたが、これまでの技術ではその変化した文字だけを修正することが出来ませんでした。私達の技術は、その暗号文の中の文字を狙って消去、置換といった"編集"ができます。
当社は、この技術を用いて、特定の疾患に対する革新的な創薬開発(パイプライン開発)や、PPR技術でしかできない編集技術開発(プラットフォーム開発)を進めています。当社の技術を活用した創薬開発を希望する企業から、技術のライセンス費用や共同研究費をいただき、それら企業が持つ専門性と組み合わせた革新的な創薬開発を進めています。
本技術は、ヒトのみならず、全ての生物に対して応用可能な技術です。将来的には、農業、化学などその他領域における新たな市場創出を行いたいと考えています。
会社のビジョンはなんですか?
小野:私達は最初、植物細胞内では、RNA塩基上の文字が器用に編集(文字の置換)されていることを知り、それを制御しているのがPPRタンパク質であることと、そのメカニズムを解明しました。当時は、ゲノム(DNA)編集技術が注目されはじめた頃でしたが、PPR技術のようなRNAを書き換える技術は、ほとんどありませんでした。また、ヒトゲノム解析以降、RNA上には生命の根幹に関わる重要な情報がたくさん隠されていることが分かってきた頃でもあったことから、RNA編集技術が、今後必ず必要になると確信し、応用開発を開始しました。
九州大学での研究を経て、現在のPPR技術の基礎が出来上がってきた2015年に、もっとPPR技術を世の中で活用し、役立てるためにエディットフォースを設立しました。当社のビジョンである「New Tools Lead to a New World」は、革新的なバイオ技術を通じて新しく世界を拡張したいという思いを込めており、PPR技術を新たな世界標準のツールとすべく、日々研究開発を行っています。
これからの目標はありますか?
小野:今回の資金調達において、「KDDI Open Innovation Fund 3 号」からも出資いただくこととなりました。この場を通じて、改めて感謝申し上げます。今後は、出資いただいた各社の有する幅広いコネクションや専門知識を最大限に活用し、パイプラインの推進、強化、並びに基盤技術のさらなる充実にまい進してまいります。日本発の技術として、国内のみならず、海外の企業との協業等を通じ、まずは早期の医薬品としての開発を強力に進めてまいります。
資金調達を通して期待していることはありますか?
小野:5G・デジタルの活用によりPPR技術の応用範囲を広げられると期待しています。PPRはDNA/RNAの編集が可能であり、医療品開発分野だけでなく、農業、化学分野での応用も可能と考えています。自然界には膨大なデータが存在しており、それらを収集・分析することで、例えばPPRの最適な編集アプローチなどを見極め、ニーズにマッチした医療・農業・化学品を創出することが可能だと考えています。
最後に一言お願いします
小野:私達の技術は、細胞内の塩基情報を様々な角度で編集することができます。これまで病気の原因遺伝子は判明しているものの、アプローチ方法がなく開発を断念しているケースがあるかと思います。私達のPPR技術プラットフォームを使えば、その期待する編集方法が可能かもしれません。また、私たちの技術の適用領域は、医薬だけにとどまりません。例えば農業や化学分野など、遺伝子編集をすればこんなことができるのでは、というアイデアを是非ご一緒に広げていけたらと思います。まずは、サイエンスの議論から。是非、当社技術に興味を持たれた方はご連絡ください。