- イベント
2025年06月27日
2024年度成果報告&JAXA特別基調講演&宇宙戦略基金採択企業パネルディスカッションを実施!~MUGENLABO UNIVERSE1周年イベントレポート~

2025年6月10日、宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」設立1周年を記念して、アニバーサリーイベントを開催しました。
イベント当日は、東京都協定事業「 TIB CATAPULT(※1)」における2024年度の成果報告、JAXA 石井 康夫 氏による宇宙戦略基金に関する講演、さらには宇宙戦略基金採択企業である日本低軌道社中 井上 実沙規 氏を招いたパネルディスカッションなど、宇宙ビジネスの“今”を体感できるコンテンツを実施しました。本記事では、その内容を抜粋してお届けします。
会場の様子
24年度TIB CATAPULT成果報告会
成果報告会の様子
2024年度に本プログラムにて採択した取り組みを行うスタートアップの皆様にご登壇いただき、各社の会社概要と取組内容をご紹介いただきました。
今回ご登壇いただいたスタートアップはこちらの4社です!
- 株式会社スペースデータ
- SkySense合同会社
- 株式会社ロジック・アンド・デザイン
- 株式会社IDDK
企業概要:デジタル技術で宇宙をインターネットのように身近にすることで、誰もが宇宙開発に参加できる未来を目指し、実際のISS船内の環境をデジタル上に再現した「バーチャル国際宇宙ステーション(ISS)」などを開発。
案件概要:バーチャルISSにて水の挙動などの物理現象を、デジタルツイン上に再現する・技術開発・サービス化検討。
参考:宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」第一弾支援、宇宙物理現象をデジタル上に再現する技術開発を採択
企業概要:飛行船型HAPS(※2)を日本全土に展開し、広範囲・リアルタイムで取得する高解像度の地球観測データの提供を目指す。
案件概要:ロケット打ち上げ時の周辺監視ソリューションの事業検討。
参考:宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を通じて支援、ロケット打ち上げ時の海域監視実験を採択
企業概要:「“より視える化”で、世界を変える。」をコンセプトに画像の鮮明化技術や復元高解像度化技術を用いた製品を多数展開。
案件概要:衛星画像の高精度化・テレビ局への導入。
参考:宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を通じて支援、衛星画像の活用を拡げる画像処理ソフトウエア開発の取り組みを採択
企業概要:半導体センサーベースの顕微観察技術を活用した宇宙バイオ実験サービスの展開を目指す。
案件概要:宇宙でのバイオ実験に用いる機器の開発・事業化検討。
参考:宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を通じて支援、宇宙バイオ実験プラットフォームおよびその周辺技術の開発を採択
めぇ〜ちゃん
- 幅広い領域での宇宙の活用事例が紹介され、参加者の皆様からも大変好評をいただきました!
特別基調講演~宇宙戦略基金振り返りと第二期の全貌~
特別基調講演の様子
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙戦略基金事業部ゼネラルプロデューサーの石井 康夫 氏をお招きし、2024年に開始した宇宙戦略基金の振り返りに加え、今年度スタートした第二期の概要やポイントについてお話いただきました。
JAXA活動概要
JAXAは、日本の宇宙・航空分野を担う中核機関として、宇宙基本計画に基づく多様な研究開発を推進しています。近年では、H3ロケット3号機の打ち上げ成功が注目され、宇宙輸送の信頼性向上につながっています。地球観測衛星や温室効果ガス観測衛星の開発を通じ、環境課題の解決にも寄与しています。
有人宇宙活動では、ISSへの継続的な貢献に加え、月探査に向けた国際プロジェクト「Gateway」にも参画も進行中です。日本人宇宙飛行士の月面着陸の機会創出や、民間との連携にも期待が高まっています。また、月・火星探査やサンプルリターンなど、宇宙科学分野での先端的な取り組みも進めています。
第一期宇宙戦略基金の振り返り
2023年のJAXA法改正により、JAXAに資金供給機能が追加され、2024年に第一期「宇宙戦略基金」が本格始動しました。NASAやESAと同様に、研究開発を支援するファンディングの機能強化が図られています。
政府は宇宙基本計画に基づき、今後10年間で総額1兆円規模の支援を目指しています。
第一期では、補正予算で約3,000億円を計上し、採択事業者の約63%が民間企業、うち約3分の1がスタートアップでした。日本の宇宙関連市場を現在の4兆円から将来的に8兆円へと倍増させることを目標に据え、世界の宇宙市場が今後十数年で約3倍の150兆円規模に成長すると見込まれる動きに歩調を合わせたものとなっています。
第二期の概要・ポイント
2025年度の第二期宇宙戦略基金では、新たに3,000億円が措置され、5月から公募が開始されました。「輸送」「衛星等」「探査等」「分野共通」の4つのカテゴリーに分かれ、全24テーマが設定されています。
注目は分野共通テーマの「宇宙転用・新産業シーズ創出拠点」(SX-CRANE)と「SX中核領域発展研究」(SX-ARK)です。前者は革新的な研究開発を中長期的に支援し、国際競争力ある拠点の形成を目指すもので、1件あたり22億円程度を上限とし、5件程度を採択予定です。後者は初期段階の開発・実証の短期的な支援と、領域内のネットワーキングを推進するもので、1件あたり2億円程度を上限とし、20~40件程度を採択予定です。いずれも非宇宙分野のプレイヤーや地域産業の参画を重視し、地方創生や新規事業の創出を後押しするもので、非宇宙分野にとっても宇宙領域への参入の好機となります。
パネルディスカッション~採択の道筋と異業種連携の可能性~
パネルディスカッションの様子
第一期宇宙戦略基金に採択をされた日本低軌道社中 利用開発部長 井上 実沙規 氏をお招きし、基金採択の裏話や今後の連携についてお話いただきました!
テーマ①:日本低軌道社中の概要と採択案件について
日本低軌道社中は三井物産100%子会社として2024年に設立されました。民間宇宙ステーション向けに日本独自モジュールの開発と物資補給の商業化を目指しています。
宇宙戦略基金では、ポストISS時代を見据え、自律飛行や他ステーションとの連携が可能な低軌道拠点モジュール開発を目指す「低軌道自律飛行型モジュールシステム技術」・複数ステーションへの柔軟な接近や高精度な自動ドッキングを可能にする技術で、日本独自の物資補給システムの実現を目指す「国際競争力と自立・自在性を有する物資補給システムに係る技術」の2テーマで採択されています。いずれも民間ステーションへの展開を想定し、ISSでの実証も進行中です。また、「きぼう」有償利用制度(非定型サービス)に係る民間事業者にも選定されています。
テーマ②:宇宙戦略基金への採択の背景
宇宙戦略基金へのエントリーでは、準備期間の短さが大きな課題でした。テーマ発表から予算化・公募開始までのスピードが速く、限られた時間での戦略立案と資料整備が求められました。 公募要領に加え政府が掲げる宇宙技術戦略を徹底的に読み込み、政策との整合性を重視しながら申請書を仕上げました。
また、当社は製造機能を持たないため、外部パートナーやJAXAの知見を活用し、日本低軌道社中がシステムインテグレーションとプロジェクトマネジメントを担う体制を構築することで、役割分担と実行力を明確にしました。
ISS退役後を見据えた日本モジュール構想を立ち上げ、米国商業ステーション企業との連携などと連動させた戦略性とスピード感が採択の鍵となりました。
テーマ③:将来に向けた連携可能性
宇宙空間での新たなビジネス創出を模索しており、異業種スタートアップや大手企業との対話を重ねています。宇宙ステーションはあらゆる地上ビジネスとの掛け算が可能な場と捉えており、エンタメやバイオメディカル領域に限定せず「何でもウェルカム」な有人拠点にしたいと思っています。
また、宇宙飛行士支援や宇宙探査に向けた技術実証など、宇宙の価値を最大化する取り組みも推進しています。 こうした開かれた姿勢を通じて、非宇宙企業との協業を広げ、持続可能な宇宙ビジネスモデルの構築を目指しています。
おわりに
本イベントでは、宇宙業界のみならず多様な業種・分野から多くの皆様にご参加いただき、「領域を超えた共創」の可能性を探求しました。
MUGENLABO UNIVERSEは、こうした異なる視点や知見が交わる場をこれからも創出し続け、未来の宇宙ビジネスを皆様とともに切り拓いていきたいと考えています!
(※1)TIB CATAPULT

グローバルに成長するスタートアップを生み出すため、事業会社などが協働してスタートアップを強力に支援する「イノベーションクラスター」の取り組みをサポートする事業です。スタートアップと大企業による商用化を目指した実証実験に関する費用支援、他参画事業者との連携支援、東京都のイノベーションプラットフォーム「Tokyo Innovation Base」をベースにした支援などを通じて、大企業とスタートアップの連携を支援します。2024年9月、KDDIは「MUGENLABO UNIVERSE」に参画する企業を代表して、参画事業者に採択されました。
(※2)HAPS
High-Altitude Platform Station の略称。地上約20km上空の成層圏を数日から数カ月の長期間に渡って無着陸で飛行できる無人飛行体を指します。
めぇ〜ちゃん
- 次回は「食農×宇宙」をテーマにイベントを企画中です!ぜひご参加ください!