- インタビュー
2023年05月19日
Z世代を巻き込み成功させたイベントの仕掛けとは?「αU spring week 2023」の裏側ーKDDI三浦氏【αUインタビューVol.5】
KDDIは3月7日、新たなメタバース・Web3サービス「αU(アルファユー)」を発表しました。そして、ローンチを記念するとともに「αU」の世界観を体験してもらうことを目的に、3月8日から12日にかけて「αU spring week 2023」(以下、αU spring week)を開催しました。
αU spring weekでは、今注目のアーティスト、クリエイター、インフルエンサーとコラボし、Z世代を巻き込みながら5日間連続でトークや音楽ライブ、ミート&グリートなどを実施し、連日大盛況に終わりました。
どのような狙いでαU spring weekを実施したのでしょうか?αUの中の人にインタビューするシリーズ、今回はαU spring weekの企画・運営を担当した総合プロデューサー、KDDI株式会社 事業創造本部 担当部長の三浦伊知郎氏にお話を伺ってきました。
αU spring weekが始まった経緯を教えてください
三浦:KDDIには「au発表会」が定期的にありますが、Web3、メタバースの時代に適した発表方法が他にもあるはずとの指摘を受けました。Web3やメタバースといった新しい時代にチャレンジ、またZ世代に直接メッセージを伝える手法を考える必要がありました。
WPPとの提携など会社としての発表でもあったので、メディアに伝えないといけないことは記者会見のフォーマットで実施しつつも、会場の選定や演出など、αUの世界観を出すために相当こだわり実施しました。
同時に、ターゲットであるZ世代に共感してもらうコンテンツを企画するために、実際に直接Z世代の意見を聞きながら立案していきました。具体的には記者会見でも発表した「ANNIN」を運営するアソビシステムさんに協力してもらい、市場調査やインフルエンサーへのインタビューを実施しインサイトを探る作業を行いました。
担当部長 三浦氏
よって、コーポレート的な発表は“いわゆる“記者会見で実施、同時にZ世代に向けたメッセージの発信はKICK OFF PARTYを実施しインフルエンサーに来場頂き世界観を体感してもらい、そして5日間に渡り「リアルxバーチャル」で企画を仕掛けることによりSNS拡散などでメッセージを伝える手法の2つでのアプローチを設計し実施しました。
基本的にauの発表会は、通信会社の担当メディア記者が料金に関する質問をするという形式が一般的だと思います。特にメタバース、Web3時代においては、常に新しいことを追求すべきだと考えており、競合各社の発表がある中でKDDIは常に新しいことに挑戦していかなければなりません。
記者会見の翌日から行われた「αU spring week 2023」では、リアルxバーチャルを同時並行で実施し、Z世代の方々にも自分ごと化し、共感を得ることを第一に考えました。
イベント会場
αU spring weekの発表は渋谷のいくつかの場所で行われましたが、Z世代を回遊させることが目的だったのでしょうか
三浦:回遊ももちろんですが、メタバースは基本的には仮想空間です。KDDIが仕掛けるメタバースは街とどれだけ連携するか、リアルとバーチャルの垣根を超えていくためにはリアルとの融合が必要です。そのためにSHIBUYA Hzのようなリアルな会場を使って、メタバース内のイベントや展示を実際のフィジカルの場所に作ることで、リアルとバーチャルの垣根をなくした施策を仕掛けました。
マーケター目線の話をすると、メタバースだけでイベントをやっていても現時点ではなかなか伝わりにくいのが現状で、バズらせることは至難の技。特にZ世代となるとさらにです。リアルで本物を見たり、イベントに参加することでメタバースのイベントを知るきっかけになり、メタバースを体験しに来ることが今はまだ圧倒的に多いです。
コラボしたクリエイターやインフルエンサーのマイルーム
メディアの観点から言うと、分かりやすい絵作りがとても重要です。特にテレビは分かりやすい動画素材を求めてきます。メタバース内でも動画を撮ることはできますが、リアルな背景があった方がテレビ映えすると共に、コンセプトである「リアルxバーチャル」の絵を撮らせるために「リアルな会場」は有効的です。Z世代にメッセージを届けつつも、ブランドのローンチを広く一般にも知ってもらうことが今回の目的でした。
そしてZ世代のインフルエンサーがInstagramなどのSNSにアップしたくなるような場を作ることも必要だったので、リアルの会場を作り企画を実施しました。
メディアにも映えるし、人の目も引くという両軸だったのですね
三浦:まさに。体験をした人が勝手にSNSに投稿してくれることを狙ったわけです。正直 SHIBUYA Hz(リアル会場)のような場所に人を呼び込むのは結構大変です。企業のブランドのポップアップストアは面白くもなんともない。
今、αU metaverseは自然に人が集まる空間を目指しています。リアル会場でのイベントにも作戦を練りました。αU metaverseには「マイルーム」機能があるのですが、それを模して、リアルイベントに登場してもらうZ世代に支持されている方々(とうあさん、ロイくん、BALA、吉田凛音さん、MIYUさん)全員に「会場=マイルーム」という設定で、マイルームで何を行うのか、誰をどう呼ぶのか、全て好きにしていいと皆さんにお願いしました。
ロイさんのイベント「ロイPresents 春のロイ祭り」
その結果、良い意味で、集客は彼らがやってくれます。要は彼らの主戦場であるSNSで勝手に宣伝してくれるという手法を生み出しました。これが本来やるべき姿でした。あくまで、我々は彼らがやりたいことを実現するのはサポートします。
つまり、大人が戦略的にお客を呼ぶのではなく、自分で客を呼んでくださいという点がポイントです。Z世代的な人たちが自分の場所に友達なりファンなりを呼び込むことになり、自然に彼らのリアルな交流が生まれ、SNSで拡散されていったという流れです。作戦通りでした。
αU metaverseはそれを目指しているし、リアルでもその形をとったのは、無理やり人をそこに呼ぶのはすごくプロモーションにお金かけたりするけど、演者が勝手に呼んでくれるならそれが一番良いからです。今回のイベントを1週間かけてやった中で、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略上は大成功と言えると思っています。
反響はいかがでしたか
三浦:少なくとも私の周りやサポートしてくれた方々、参加してくれたインフルエンサーの方々からは高評価でした。それなりに、通信会社として、いい意味で「ぶっ飛んだ」企画ができてインパクトを残せたと思います。
吉田凜音さんのイベント「RINNEEE presents BOOOOO!!! x World」
パートナ企業との共創があれば教えてください
三浦:Web3やメタバースの事業をやっている割には、裏で何が起きているかというと、めちゃくちゃ人と人との信頼関係でドライブさせていくことが超重要で、今の時代は特に「人」が重要になってきている気がします。
これはスコープ外、担当ではありません、とかはナンセンスです。成功の鍵は関わったみんなが真面目にみんな成功させたいと思うことです。実際は最後は「人」なんだなと社会人30年ぐらいの中で、一番今回感じたことです。
企画を進めていく中で苦労したポイントはありますか
三浦:今回の難しいところは枠組み(企画、コンセプト等)を1から設計しないといけなかった点です。企画を考える時には「何のために、誰に、何を」を考える必要があります。例えば、αUの場合はブランドを立ち上げ、Z世代を中心に認知してもらうことを目標にしています。そのために、プロダクトを立ち上げ、お披露目することになります。
そこにたどり着くための手法はいくつか考えられますが、今回は記者会見や、担当者からの発表、5日間にわたるイベントなどを実施しました。その結果、広告換算で見ると目標数値を達成することができました。テレビなどでも話題になり、たくさんの人々に注目されました。
特に難しかったのは、発表当日の時点では、メタバースやNFTといったプロダクトがサイレントローンチ状態みたいなステータスだったこともあって、企画立案自体がそれなりの難易度でした。メタバースは「リアル」に存在しているわけではないので、企画自体の立案において、その進行状態を把握するのが非常に難しいです。これらの課題を解決するには、各プロジェクトの責任者に信頼を置く必要があります。
結果、大成功できたのは、いい意味で垣根を超えてパッションを持った社員が一丸となれたこと、最後には誰が何の担当か分からなくなるくらい総動員体制で乗り切れたこと。これが結果をもたらしたと思っていますし、KDDIの強みだと改めて再認識しました。もうしばらくは、こんなに働きたくないって思いましたが。(笑)
ありがとうございました
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